俺は魔法使いの息子らしい。

高穂もか

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第一部 決闘大会編

三十一話

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 うどんもパンも食いつくし、ほっと一息ついた。
 俺は、空のアルミ鍋と割り箸を、パンの袋に詰め込んだ。ゴミ箱はあるけど、なんとなくゴミは持ち帰ってしまう。
 窓を閉めながら、イノリが言う。

「トキちゃん、朝走ってたね」
「おう。なんで知ってんの?」
「生徒会室から見えるんだ、あのグラウンド。遠目に小っさくだけどね、トキちゃんの走り方だなぁって」
「そっかあ。見たか、俺の勇姿を!」
「あはは。がんばれーって見てた」

 何を思い出したのか、イノリはくすくす笑う。
 俺は、ふと気づく。

「イノリ、生徒会ってそんな早くから、やってんの?」
「普段はそうでもないよ? でも、もうじき決闘大会だからー、その打ち合わせで、ちょっと早いんだ」
「マジで。大変じゃね」
「大丈夫ー。俺、朝強いから」

 俺の対面に腰かけて、イノリがじっと見つめてくる。

「俺より、トキちゃんはどう? 体調とか……」
「えっ、何でよ?」
「ほら。昨日、俺が触ったから。ほんとに、おかしいとこない?」
「あっ、それか! 全然、絶好調だぞ」

 昨日も大丈夫だって言ったのに、イノリは心配性だなあ。
 俺は、手をブンブン振って、元気だってことを示す。

「それどころか、アレのおかげで俺、発見しちゃったかもしんねえし」
「発見?」
「おう。それがな――」

 きょとんと目を丸くしたイノリに、俺は昨晩気づいた「ふわふわ」について話した。
 その時の感覚を、再現しようとしてみてることも。

「お前の魔力の感じ、思い出しながら走ってんだけど。なかなか難しくてさぁ。でも、狙い自体は間違ってねえ気が――って、どうした?」
「な、何でもないよ」
「でも、なんか顔赤いぞ。もっぺん窓開けるか?」
「大丈夫。ちょっと不意をつかれただけ」
「?」

 イノリは、何度か深呼吸すると俺に向き直った。

「えっとね。トキちゃん、その「ふわふわ」についてなんだけど。俺も、トキちゃんの直感は、あたってると思う。俺は風の元素が多いから、自然とトキちゃんの風の部分を刺激したのかも」
「マジで!」
「実際にね、そういう方法があるんだ。特定の元素が感じ辛いときに、誰かにその系統の魔力を流してもらって、自分の元素を触発してもらうんだって」
「ああ、「触って刺激して♡」って奴か……」
「えっ?」
「いや、なんでもない」

 やべーやべー。ほら見ろよ須々木先輩、あのイノリの怪訝そうな顔を。
 俺は、慌てて話をそらした。

「つまり、「ふわふわ」を摑まえることが出来れば、俺は風の元素がわかるようになるってことだよな?」
「うん、そうだと思う。やったねトキちゃん、大発見ー」
「イエーイ」

 イノリが上げた手に、俺はパーン、とハイタッチする。
 見当違いじゃなくて嬉しい。ニコニコしてるイノリに、俺もへらへら笑い返す。

「あとは、あの「ふわふわ」をどうにか摑まえるってわけだなー」

 それが、一筋縄じゃいかないわけだが。どうも俺、よっぽど鈍いみてえだし。
 言うと、イノリは目を丸くした。

「違うよー。それは、トキちゃんが鈍いんじゃないんだよ。そうだ、昨日の話の続き、まだしてなかったね」

 イノリは、俺の手を取ると昨日みたいに指を絡めた。真面目な顔で、「真ん中に触って、わかったんだけど」と前置きする。

「トキちゃんはね。魔力が少ないんでも、極端に四元素に鈍いんでもないよ。トキちゃんは、四元素拮抗型なんだよ」

   四元素拮抗型?
 耳慣れねえ言葉に首を傾げると、イノリは頷いた。
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