30年待たされた異世界転移

明之 想

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第10章 位相編

奇妙

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 位相空間に皆を閉じ込めたのは、あの空間異能者。
 俺を過去へと送ったのも彼だ。

 だというのに、どういうわけか彼を軽視していた。
 吾妻だけにかかりっきりになっていた。
 俺だけじゃない、武上も古野白さんもだ。
 
 既に吾妻とは戦闘状態に陥っていたのだから、やむを得ない部分は確かにあるだろう。が、それでも空間異能者をここまで放置するのは?

 どう考えても、普通じゃない。
 何かがおかしいぞ。

「有馬君?」

「どうした?」

「……奇妙だと思わないか?」

「何がだ?」

「それは……」

 この違和感、2人が空間異能者を軽視していた異常さを、ここで話して伝わるものなのか?

「有馬君、どうしたの? 何か問題でもあるの?」

 悩んでいても仕方ない。
 とりあえず、話さないと始まらないな。

「空間異能者を皆が軽視していた理由を考えていた」

「あいつのことを?」

「軽視?」

 2人とも不思議そうな表情をしている。

「空間異能者については、吾妻の後に倒そうと考えていたのだけれど」

「おう、軽視していたわけじゃねえぞ」

 やっぱり、こういう反応になるよな。
 なら、どう話すべきか?

 ん?
 これは?

 間違いない。
 空間異能者が現れようとしている。

「有馬?」

「くるぞ!」

「また現れんのか?」

「ああ」

 次は……そっちか。

 駆け出した俺の後ろからついて来る武上。

「あそこだ」

 俺の指さした前方に、吾妻を背負った空間異能者が現れた。

「ちっ、遠いじゃねえか」

 今回はこれまでと異なり、50メートル以上は離れているだろう。
 かなり距離がある。

「あんなとこに現れて、あいつ、どうする気だ?」

 分からない。
 が、何か企んでいるのなら、その前に叩きつぶすだけ。

「先に行くぞ」

 並走する武上の走力は大したもの。
 ただ、ここはもう一段上げさせてもらおう。

「おまっ、ちょっと待てって」

 一気に加速して、空間異能者のもとへ。
 残る距離は20メートル。
 空間異能者は動かない。

 あと10メートル。
 まだ動かない。

 あいつ、何を考えている?
 また消えるつもりか?

 なら、その前に一撃を!

 5メートル。
 次の一歩で間合いだ。

 よし!

「!?」

 気が変わった?
 冴え冴えと重みを増した大気が俺の前に立ち塞がっている。

 そして……。

 質感を持った空気が体に纏わりつき。

「……」

 動きを止められてしまった。

「有馬!?」

 何がどうなっているのか理解できない。
 ただ、それでも、前に進めないことだけは確か。
 すぐ目の前にあいつがいるのに、近づくことができないんだ。

 障壁?
 結界?

 俺の知るそれらとも違う。

 物理的な壁があるわけじゃない。
 透明な結界でもない。
 精神的な障壁でもない。

 腕は前に出せるし、脚も前方に運べる。
 それなのに、体全体では前に進めない。
 纏わりつく空気が弾力をもって体を押し留めてくる。


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