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第8章 南部動乱編
テポレン山の戦い 37
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<イリアル視点>
ドン!
ドガン!
ドガーーン!
「「「「「「「ぎゃぁぁ!!」」」」」」」
「「「「「「「うわぁぁ!!」」」」」」」
トゥオヴィと話している間にも状況は悪化の一途をたどっている。
「また、魔法の矢!」
「……」
「敵の新兵器は無尽蔵なのか?」
それについては。
「……申し訳ありません。読み誤りました」
「いや、あの兵器ばかりは仕方なかろう。そうそう読めるものではないのだからな」
違う、俺の見る目がなかったんだ。
あいつを過小評価した俺のミスだよ。
「しかし……ふむ……。このまま戦局が変わらぬようだと、撤退も視野に入れねばならぬ、か?」
「ええ、考えた方がいいでしょうね」
通常の戦いなら、撤退を選択してもいい頃合。
そんな被害状況だと考えられる。
「あとは、そう。指揮官殿がどのような判断を下すかだが」
まさに、そこが問題なんだ。
兵の命を選ぶか?
それとも……。
今回の指揮官はどう考える?
王家の意向は?
「退くな! 退くんじゃない!」
「敵は僅かな兵数。誉れ高き我が軍が怯む相手ではないのだぞ」
「「「「「「「……」」」」」」」
「「「「「「「……」」」」」」」
やはり、まだ戦うつもりか?
「……」
まあ確かに、続戦も1つの軍略だよなぁ。
今のような劣勢であっても、このまま半刻以上進攻を続ければ数の力で挽回できるかもしれないんだからよ。
実際、成功の可能性も低くないと思うしな。
ただし、その頃には損害がとんでもないことになってんぞ。
それにだ。
ワディン側には超常のバケモンがいるんだぜ。
戦いに勝利したからといって、狙いのモノが手に入るとは限らないってな。
だからよぉ。
そろそろ退いてくれねえか。
じゃないと、また俺の仕事が増えちまう。
「……イリアルのおかげだな」
うん?
「何がです?」
「ローンドルヌ河での失態、その汚名返上をと期していたトゥレイズ攻城戦でも功績を上げること叶わなかった」
そうだったな。
「だからこそ、今回の神娘捜索、是が非でも結果を残したいと意気込んでおった」
「……」
「我が隊のためだけにそう思っているのではない。エリシティア様のためにも、ここで結果を残しておきたかったのだ」
ああ、分かってる。
トゥオヴィをつき動かすのは王女エリシティア。
こいつの思考、行動はエリシティアあってのものだとな。
「……イリアルの忠告を聞いておらねば、我が隊も前線で大きな損害を被っていたであろう。いや、場合によっては私の命もなかったかもしれぬ」
その可能性は、確かに否定できねえ。
まあ、俺が護ってやったとは思うけどよ。
おまえはここで捨てるには惜しいからなぁ。
「生きていてこそ、エリシティア様のために働けるというもの。このような場所で私は死ぬわけにはいかぬのだ」
「……」
「我が命はエリシティア様のためだけに使う。そう決めているのだからな」
こいつのエリシティアに対する忠誠心が半端ないのは理解している。
が、ここまでのもんだったか。
ちっと驚いたぜ。
「イリアルには感謝しておる」
「……部下として当然のこと。普通のことをしたまでですよ」
「いや、違うぞ。数刻前までは、王軍が劣勢に立たされるなど誰ひとりとして想像もしていなかった。前線が崩壊するなど考えてもいなかった。イリアル以外は」
まっ、そうかもしれねえな。
「イリアルの賢眼あってこそ、今私はここにいることができるのだ」
「……」
「運がいい」
運がいい、か……。
「良い部下を持てて、私は幸運だな」
「……」
「……」
はあ~。
ホント、可愛いこと言ってくれるぜ。
これだからよぉ、トゥオヴィにはまいっちまう。
けど、ここまで言われちゃ、簡単には見捨てらんねえよな。
仕方ねえ。
仕事に支障が出ねえ限り、付き合ってやるよ。
ただなぁ、俺は賢眼なんて持ってねえぞ。
持ってんのは、魔眼だけだ!
ドン!
ドガン!
ドガーーン!
「「「「「「「ぎゃぁぁ!!」」」」」」」
「「「「「「「うわぁぁ!!」」」」」」」
トゥオヴィと話している間にも状況は悪化の一途をたどっている。
「また、魔法の矢!」
「……」
「敵の新兵器は無尽蔵なのか?」
それについては。
「……申し訳ありません。読み誤りました」
「いや、あの兵器ばかりは仕方なかろう。そうそう読めるものではないのだからな」
違う、俺の見る目がなかったんだ。
あいつを過小評価した俺のミスだよ。
「しかし……ふむ……。このまま戦局が変わらぬようだと、撤退も視野に入れねばならぬ、か?」
「ええ、考えた方がいいでしょうね」
通常の戦いなら、撤退を選択してもいい頃合。
そんな被害状況だと考えられる。
「あとは、そう。指揮官殿がどのような判断を下すかだが」
まさに、そこが問題なんだ。
兵の命を選ぶか?
それとも……。
今回の指揮官はどう考える?
王家の意向は?
「退くな! 退くんじゃない!」
「敵は僅かな兵数。誉れ高き我が軍が怯む相手ではないのだぞ」
「「「「「「「……」」」」」」」
「「「「「「「……」」」」」」」
やはり、まだ戦うつもりか?
「……」
まあ確かに、続戦も1つの軍略だよなぁ。
今のような劣勢であっても、このまま半刻以上進攻を続ければ数の力で挽回できるかもしれないんだからよ。
実際、成功の可能性も低くないと思うしな。
ただし、その頃には損害がとんでもないことになってんぞ。
それにだ。
ワディン側には超常のバケモンがいるんだぜ。
戦いに勝利したからといって、狙いのモノが手に入るとは限らないってな。
だからよぉ。
そろそろ退いてくれねえか。
じゃないと、また俺の仕事が増えちまう。
「……イリアルのおかげだな」
うん?
「何がです?」
「ローンドルヌ河での失態、その汚名返上をと期していたトゥレイズ攻城戦でも功績を上げること叶わなかった」
そうだったな。
「だからこそ、今回の神娘捜索、是が非でも結果を残したいと意気込んでおった」
「……」
「我が隊のためだけにそう思っているのではない。エリシティア様のためにも、ここで結果を残しておきたかったのだ」
ああ、分かってる。
トゥオヴィをつき動かすのは王女エリシティア。
こいつの思考、行動はエリシティアあってのものだとな。
「……イリアルの忠告を聞いておらねば、我が隊も前線で大きな損害を被っていたであろう。いや、場合によっては私の命もなかったかもしれぬ」
その可能性は、確かに否定できねえ。
まあ、俺が護ってやったとは思うけどよ。
おまえはここで捨てるには惜しいからなぁ。
「生きていてこそ、エリシティア様のために働けるというもの。このような場所で私は死ぬわけにはいかぬのだ」
「……」
「我が命はエリシティア様のためだけに使う。そう決めているのだからな」
こいつのエリシティアに対する忠誠心が半端ないのは理解している。
が、ここまでのもんだったか。
ちっと驚いたぜ。
「イリアルには感謝しておる」
「……部下として当然のこと。普通のことをしたまでですよ」
「いや、違うぞ。数刻前までは、王軍が劣勢に立たされるなど誰ひとりとして想像もしていなかった。前線が崩壊するなど考えてもいなかった。イリアル以外は」
まっ、そうかもしれねえな。
「イリアルの賢眼あってこそ、今私はここにいることができるのだ」
「……」
「運がいい」
運がいい、か……。
「良い部下を持てて、私は幸運だな」
「……」
「……」
はあ~。
ホント、可愛いこと言ってくれるぜ。
これだからよぉ、トゥオヴィにはまいっちまう。
けど、ここまで言われちゃ、簡単には見捨てらんねえよな。
仕方ねえ。
仕事に支障が出ねえ限り、付き合ってやるよ。
ただなぁ、俺は賢眼なんて持ってねえぞ。
持ってんのは、魔眼だけだ!
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