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第5章 王都編
エリシティア 2
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「して、コーキは本当に冒険者なのか? キュベリッツに仕えておるのではないのか?」
「……いえ、ただの冒険者です」
「ふむ、冒険者であるか……。冒険者は粗野なものが多いと聞くが、コーキは礼節もわきまえておるようだな」
「まことに」
冒険者が粗野?
確かに、そうとも言えるが。
それでも、オルドウの冒険者は基本的な礼儀くらいは知っている。
レザンジュの冒険者はそうじゃないのか?
「どこか品もある。もしや、貴族の生まれなのか?」
「滅相もないことです。私は平民の冒険者ですので」
「であるか」
「……」
「あのような魔法の腕を持つ者が一般市民で冒険者。信じがたいな」
「私もそう思います。あの魔法ひとつとって見れば、シャリエルンどころかエヴドキヤーナ様の御業にも近いかと」
「ほう、シャリエルンを越えてあの宮廷魔導士殿にか」
「はい」
シャリエルンという名に聞き覚えはないが、エヴドキヤーナという名はどこかで耳にしたような気が……。
たしか、高名な魔法使いだったかな?
「ふむ、身のこなしも素晴らしく魔法もとなると」
「……」
「どうだ、そなた私に仕える気はないか?」
それは!
「まことにありがたい話ではありますが……。申し訳ございません」
光栄な話だとは思う。
ただ、俺は誰にも仕えるつもりはないんだ。
特にレザンジュには。
「受けてはくれぬか」
「……はい、こればかりは」
「冒険者は自由を好むという。シャリエルンもそうであった」
「そうでございますな」
「仕方ない。ここは、ひくとしよう」
「……」
「が、気が変わったら訪ねてくると良い。コーキなら、いつでも喜んで召し抱えようぞ」
仕官する気はないとはいえ。
そこまで言ってもらえるとは、本当にありがたいことだ。
しかも、王女様からの話なのだから。
「私などに、もったいないお言葉です」
「ふむ、しかと覚えておくように」
「はい」
「それと、この場は公の場ではないのだ、あまり畏まるな。コーキはこの私の命の恩人なのだからな。多少の無礼は構わん。よいな、ウォーライル」
「エリシティア様の仰せのままに」
「……ありがとうございます」
さあ、これで話も終わりか?
と。
ひとりの騎士がウォーライルさんに近づいて来る。
「隊長、準備完了しました」
「そうか」
おっ、そろそろ出発だな。
なら、俺も去ることができる。
「出発まで、奴らの様子を見ているように」
「了解です」
しかし、騎士の数が少ないよな。
これが王女様の護衛の数なのか?
それに、今さらではあるが、隣国の王女様がどうしてこんな所で野盗に襲われているんだ?
「……」
野盗の統率された動き。
リーダーの風魔法。
隣国の王女様。
やはり、これは……。
よそう。
俺が考えることじゃない。
「この後のことですが、ジンク殿が戻って来られたらキュベルリアに向けて出発しようと思っております」
「はい」
「問題はありませんか?」
「こちらに問題はありませんが……。もし出発の準備ができているようでしたら、先に出発してください。私も馬車に戻って王都に向かいますので」
「ですが、ジンク殿は戻って来られるのですよね?」
「私が街道を戻れば問題ありません。ジンクさんにも伝えておきます」
「それでは、この地で合流して共にキュベルリアに向かいませんか?」
再び賊が出る可能性もあるのだから、一緒に王都キュベルリアに向かう方が安全。
そういう提案だな。
断る理由も見つからないが……。
「エリシティア様、いかがでしょう?」
「ふむ。キュベルリアには共に向かうとしよう」
王女様にそう言われると、これはもう決定か。
「……分かりました。では、私は馬車に戻ることにします。申し訳ないですが、しばらくここでお待ちください」
*****************************
<エリシティア視点>
「やられたな」
「……申し訳ございませぬ」
「そなただけのせいではない。が、あやつらを亡くしてしまった」
街道を移動中に賊に襲撃される。
これはまあ、あり得ないことではないだろう。
だが、備えを怠ったことは……。
私の油断に他ならない。
「……」
今回のこと。
予測が不可能だったわけじゃない。
ここまでの経緯を鑑みれば、その可能性は充分に予測できたはず。
しっかりと備えておれば……。
信頼できる騎士を幾人も亡くすことはなかった。
痛恨この上ない。
己の不明を恥じるばかりだ。
「ですが、エリシティア様が生きておられます」
「……ああ、そうだな」
「それで十分にございます」
「……」
ウォーライルの言う通り、私はこうして生きている。
明らかに不利な状況を覆し、死の淵から生還した。
諦めかけていたあの状況から……。
私は生き残ったのだ。
あの者たちのおかげで。
「惜しい者たちを亡くしましたが、それでも姫様が生きてさえいれば」
「分かっておる!」
私が生き残ること。
それが何より大切なのだと。
ただ、この胸の奥底に沈殿する忸怩たる思いは如何ともしがたい。
「……」
拭い切れない思い。
慚愧。
そんな思いを抱きながら。
それでも、やはり……。
思ってしまう。
私は思ってしまうのだ。
「天は姫様に味方したのです」
そう。
天命は我にあり、と!!
「……いえ、ただの冒険者です」
「ふむ、冒険者であるか……。冒険者は粗野なものが多いと聞くが、コーキは礼節もわきまえておるようだな」
「まことに」
冒険者が粗野?
確かに、そうとも言えるが。
それでも、オルドウの冒険者は基本的な礼儀くらいは知っている。
レザンジュの冒険者はそうじゃないのか?
「どこか品もある。もしや、貴族の生まれなのか?」
「滅相もないことです。私は平民の冒険者ですので」
「であるか」
「……」
「あのような魔法の腕を持つ者が一般市民で冒険者。信じがたいな」
「私もそう思います。あの魔法ひとつとって見れば、シャリエルンどころかエヴドキヤーナ様の御業にも近いかと」
「ほう、シャリエルンを越えてあの宮廷魔導士殿にか」
「はい」
シャリエルンという名に聞き覚えはないが、エヴドキヤーナという名はどこかで耳にしたような気が……。
たしか、高名な魔法使いだったかな?
「ふむ、身のこなしも素晴らしく魔法もとなると」
「……」
「どうだ、そなた私に仕える気はないか?」
それは!
「まことにありがたい話ではありますが……。申し訳ございません」
光栄な話だとは思う。
ただ、俺は誰にも仕えるつもりはないんだ。
特にレザンジュには。
「受けてはくれぬか」
「……はい、こればかりは」
「冒険者は自由を好むという。シャリエルンもそうであった」
「そうでございますな」
「仕方ない。ここは、ひくとしよう」
「……」
「が、気が変わったら訪ねてくると良い。コーキなら、いつでも喜んで召し抱えようぞ」
仕官する気はないとはいえ。
そこまで言ってもらえるとは、本当にありがたいことだ。
しかも、王女様からの話なのだから。
「私などに、もったいないお言葉です」
「ふむ、しかと覚えておくように」
「はい」
「それと、この場は公の場ではないのだ、あまり畏まるな。コーキはこの私の命の恩人なのだからな。多少の無礼は構わん。よいな、ウォーライル」
「エリシティア様の仰せのままに」
「……ありがとうございます」
さあ、これで話も終わりか?
と。
ひとりの騎士がウォーライルさんに近づいて来る。
「隊長、準備完了しました」
「そうか」
おっ、そろそろ出発だな。
なら、俺も去ることができる。
「出発まで、奴らの様子を見ているように」
「了解です」
しかし、騎士の数が少ないよな。
これが王女様の護衛の数なのか?
それに、今さらではあるが、隣国の王女様がどうしてこんな所で野盗に襲われているんだ?
「……」
野盗の統率された動き。
リーダーの風魔法。
隣国の王女様。
やはり、これは……。
よそう。
俺が考えることじゃない。
「この後のことですが、ジンク殿が戻って来られたらキュベルリアに向けて出発しようと思っております」
「はい」
「問題はありませんか?」
「こちらに問題はありませんが……。もし出発の準備ができているようでしたら、先に出発してください。私も馬車に戻って王都に向かいますので」
「ですが、ジンク殿は戻って来られるのですよね?」
「私が街道を戻れば問題ありません。ジンクさんにも伝えておきます」
「それでは、この地で合流して共にキュベルリアに向かいませんか?」
再び賊が出る可能性もあるのだから、一緒に王都キュベルリアに向かう方が安全。
そういう提案だな。
断る理由も見つからないが……。
「エリシティア様、いかがでしょう?」
「ふむ。キュベルリアには共に向かうとしよう」
王女様にそう言われると、これはもう決定か。
「……分かりました。では、私は馬車に戻ることにします。申し訳ないですが、しばらくここでお待ちください」
*****************************
<エリシティア視点>
「やられたな」
「……申し訳ございませぬ」
「そなただけのせいではない。が、あやつらを亡くしてしまった」
街道を移動中に賊に襲撃される。
これはまあ、あり得ないことではないだろう。
だが、備えを怠ったことは……。
私の油断に他ならない。
「……」
今回のこと。
予測が不可能だったわけじゃない。
ここまでの経緯を鑑みれば、その可能性は充分に予測できたはず。
しっかりと備えておれば……。
信頼できる騎士を幾人も亡くすことはなかった。
痛恨この上ない。
己の不明を恥じるばかりだ。
「ですが、エリシティア様が生きておられます」
「……ああ、そうだな」
「それで十分にございます」
「……」
ウォーライルの言う通り、私はこうして生きている。
明らかに不利な状況を覆し、死の淵から生還した。
諦めかけていたあの状況から……。
私は生き残ったのだ。
あの者たちのおかげで。
「惜しい者たちを亡くしましたが、それでも姫様が生きてさえいれば」
「分かっておる!」
私が生き残ること。
それが何より大切なのだと。
ただ、この胸の奥底に沈殿する忸怩たる思いは如何ともしがたい。
「……」
拭い切れない思い。
慚愧。
そんな思いを抱きながら。
それでも、やはり……。
思ってしまう。
私は思ってしまうのだ。
「天は姫様に味方したのです」
そう。
天命は我にあり、と!!
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