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第1章 オルドウ編
まほう? 1
しおりを挟む「ふぁぁ~」
まどろみから徐々に意識が戻ってくる。
今日は……。
そうか、自分の部屋だった。
「んっっ、あ~」
久しぶりにしっかりと眠ったような気がする。
思えば、何の心配もなく睡眠をとれたのは何日ぶりだろう。
とにかく、数日ぶりであることは確かだ。
しかし、こちらとあちらを行ったり来たりしている日々では、時間の感覚がおかしくなってしまうな。時間の流れも異なるし、混乱してしまうんだよ。
で、今はもう夕方近い。
さすがに、これは眠り過ぎたか。
大学に行くには遅すぎるし……。
ジムだけでも行っとくか。
20歳に戻ってからというもの、怒涛のように日々が過ぎたため、鍛錬不足は否めない。
それもやむを得ないと思えるような毎日だったとはいえ、鍛錬は続けないと意味がない。
これからは、なるべく日々の鍛錬を怠らずに過ごしていかなきゃな。
「有馬、久しぶりだな」
タンクトップからのぞく盛り上がった筋肉がいかにも鍛えていますという雰囲気を醸し出す短髪の男。数少ない大学の友人のひとり、武上だ。
「ああ、久しぶり」
「最近ジムで顔を見かけなかったけど、どうしてたんだ?」
「ジムには来てたぞ。来る時間が違うから、会わなかっただけだろ」
武上は夕方から夜にかけてジムに通っている。
もっぱら早い時間に通っている俺と時間が合わないのも当然だ。
まっ、ここ数日は別だけど。
「なるほど、昼に来てたのかよ」
「朝か昼だな」
「さすが、優雅な学生さんは違うぜ」
「武上も学生だろうが」
「おう、そうだった!」
俺が通うこのジムには大学の知人が何人か在籍している。
とはいえ、その中で友人と呼べるのは武上ひとりだけ。
「そんで、有馬はベンチ何キロまで上げてんだ?」
「ん、120キロ程度かな?」
無理すれば、もう少し上げることもできる。
それでも、40歳の頃の俺には到底敵わない。
「そんなもんか」
「ああ。武上はベンチばかりやり過ぎだろ」
武上の傍らには150キロのバーベルが掛かっている。
「そうかぁ?」
「まっ、好きにすればいけどな」
「なら、ベンチ一筋でいくわ」
「……頑張ってくれ」
「そうそう、有馬も今度の飲み会来るだろ?」
「いや、やめとく」
「なんだぁ。ちっと付き合いが良くなったと思ったら、それかよ」
「まあな」
前回の人生では、大学時代のこういった付き合いはほとんど全て断っていたんだよな。
それでも、武上は俺を気にかけてよく誘ってくれたっけ。
そんなやつは武上と里村くらいか。
当時は酔狂なやつもいるもんだと思っていたが、今考えればありがたいことだよな。
「なあ、たまには一緒に飲もうぜ」
前回と違い今回の大学生活では、もう焦る必要もない。
異世界には何時でも行けるのだから。
「いいだろ?」
となると、まあ。
神様からも助言されたことだし。
「……分かった。なるべく参加するよ」
「おお、いいねぇ」
そう言って、肩を叩いてくる。
「……」
お前、馬鹿力なんだからさ、やめろよ。
「でもな、なるべくじゃなく、絶対だぜ!」
肩を組むなって。
相変わらず暑苦しいやつだ。
でも……。
今はそれほど嫌じゃない、かな。
「善処する」
武上と会話する以外はひたすらトレーニングに励み、ふと時計を見ると2時間が過ぎていたので帰宅することにした。
ジムからの帰り道、いつものように自転車を走らせていると。
道路に赤いランプ。夜間工事のため通行止めのようだ。
仕方ないので、普段はあまり使わない道を通ることに。
……。
ああ、やっぱり。
昼間はまだしも夜にここは通りたくないんだよ。
20年前の記憶通りだわ。
というのも、こっちの道沿いには街灯が非常に少ないためとても暗い。車もあまり通らないから、なおのこと暗い。せめて月明かりがあればいいけど、今日はそれも望めない。
結構、危険なんだよなぁ。
急ぐ必要もないし、ゆっくり帰るとしようか。
暗路を進んでいると、右手に公園が見えてきた。といっても、暗い空地にしか見えないが。
と、大きくはないのだが、やけに耳に通る甲高い音が響いてきた。
キィーーン!
思わず自転車を止めてしまう。
これは?
公園の奥の方から?
聞き覚えのないような種類の高音が断続的に聞こえてくる。
周りにも誰もいないが、公園の奥には誰かいるのか?
公園と道路の境目には背の高い木が密集しているため、奥を覗き見ることはできない。
もちろん、この暗がりの中では覗けたとしても、ほとんど何も見えないだろうが。
普段なら、いや、20年前の俺なら無視して帰るところ。
「……」
高音に混じって違う音も聞こえてくる。
何かがぶつかる音?
不穏な雰囲気だぞ。
うーん……。
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