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第五章 破滅を招くもの
424 現場でわかること
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この国の守護神の一柱である幻島姫との顔合わせから数日、いよいよルート確認のための潜入作戦の日がやって来た。
「実際に上陸はしないんだけどな」
「ついて行きます」
メルリルが妙に頑固に主張する。
「当然俺も行くから」
勇者が当たり前のように言う。
「魔物のなかに入るなんてめったに出来ない体験ですからね」
「おっきい亀さんですね」
「あ、ミュリア、あまり前に行くと濡れるから」
残りは物見遊山かな?
「ピュイ!」
「うむ。今回は珍しくお前の主張が正しいな。確かに今回の主役はお前だ」
フォルテが肩の上で胸を張って偉ぶっているが、今回ルート確保の要はフォルテなので好きに言わせておく。
とりあえずミュリアとメルリルのためにハシゴをかけてもらい、幻島姫の頭の上に出た。
つぶらな目をした幻島姫は、この騒がしい面々を優しい目で見つめている。
「みなさんとても彼女に気に入られたようですね。珍しいんですよ」
巫女のェミュナが微笑ましいものを見るような表情をする。
幻島姫と巫女の感情は共鳴しているようで、幻の館の女主人であるテア・アンリカは、巫女の機嫌がいい内は危険はないと言っていた。
ということは巫女の態度が変わったら危ないということだな。
「いろいろありがとうございます。幻島姫様、ェミュナさん、よろしくお願いします」
「はい。どうぞ安心して館でお待ちください」
作戦の細かいところは巫女であるェミュナが幻島姫に伝えるのだそうだ。
巫女の役割は大事だな。
俺たちは館に乗り込んで到着を待つだけとなった。
幻島姫の体内の島には食べられる実のなる植物もあり、魚や貝も採れる。
魔獣の甲羅のなかだということを忘れてしまいそうだ。
そして到着はびっくりする程早かった。
確か距離的には、この大陸の南の端から北の端までぐらいあるはずなんだが、一日もかからずに目的の場所に到着してしまう。
海に面した場所での戦いなら負けないとか言うはずだよな。
「これはまた……」
天杜の海沿いの地に着いたのだが、そこは切り立った崖になっている。
しかも岩礁に囲まれているので、上陸するときには俺たち自身が小舟で上陸するしかないとのことだった。
崖の高さからして鈎付きのロープを投げても届かないし、崖をそのまま登るしかないのか?
聖女には無理じゃないか? 俺も怪しいぞ。
「大丈夫です。そこの崖下の洞窟を進むと、天杜の山間部に出るとのことです。山間部は天守山の間近にありますから、そこからの距離は大したことはないはずです」
「うーん。全部伝聞形式なのが気になる。実際にその洞窟を探索した人はいるんですか?」
いろいろ教えてくれたテア・アンリカに確認する。
「昔うちの漁師が遭難したときにそこを通って外に出たそうですわ」
「昔というのは?」
「ええっと、確か五十年より少ないことはなかったと思うけれど」
おおう五十年以上前か?
「……ゲア」
「いや、テア・アンリカ様を責めてる訳じゃないからな」
幻島姫が俺に咎めるような目を向けたので、言い訳をする。
「素晴らしいですわ。ダスター様はすっかり彼女の言葉を理解しているようですね」
「いやいや理解してませんよ? うちのフォルテとだいたい同じようにそういう意味に聞こえるだけで」
「それで十分ですわ。ダスター様は案外と巫女の素養がおありなのかもしれませんね」
「え? いやいや、巫女って女性でしょう?」
「そうではありません。女の巫女は受動的ですけど、男の巫は能動的なだけで、本質に違いはないのです。ただ男性は自分の身を他者に任せることが耐えられないという方が多いので、廃れ気味なのですよ」
「身を任せる?……ああ」
なるほど、俺がフォルテを受け入れるようなことか。
だが俺だって俺の一部であるような感覚があるフォルテだから平気なんであって、例えばこの幻島姫の意識を受け入れられるかと言えば無理だからな。
「ともあれ今はルート確保だな。すみません。予定を変更して構いませんか?」
「と、おっしゃると?」
「洞窟のなかを実際に歩いてみます。ああいう暗くて狭いところはフォルテで確認する意味がないですし、人と会わなければ問題ありませんから。洞窟から出たところからフォルテに確認してもらおうと思います」
わがままかもしれないが、人が普段通らないところは少しの期間で様子が変わってしまうことがある。
実際に行ってみないと何かがあったときに対処が出来ないだろう。
「わかりました。それならこれを」
テア・アンリカは、俺に手のひらの大きさの巻き貝を渡した。
「これは?」
「幻島姫を呼び出す音を出します。動物の吠え声のように聞こえるので、あまり人の注意は引かないかと」
「助かります。行ったはいいが、ここにずっと待っていてもらう訳にもいきませんし」
「ふふ、少し先の海の深いところでじっとしています。そういうのが得意なんですよ。この娘」
微笑むテア・アンリカに頭を下げる。
そして俺たちは出来るだけ海岸近くまで幻島姫に首を伸ばしてもらって、残りの距離はがんばって泳いで崖下まで到着した。
今回まだ夏場だったからいいが、作戦決行時は冬だし、船は忘れないようにしないとな。
「実際に上陸はしないんだけどな」
「ついて行きます」
メルリルが妙に頑固に主張する。
「当然俺も行くから」
勇者が当たり前のように言う。
「魔物のなかに入るなんてめったに出来ない体験ですからね」
「おっきい亀さんですね」
「あ、ミュリア、あまり前に行くと濡れるから」
残りは物見遊山かな?
「ピュイ!」
「うむ。今回は珍しくお前の主張が正しいな。確かに今回の主役はお前だ」
フォルテが肩の上で胸を張って偉ぶっているが、今回ルート確保の要はフォルテなので好きに言わせておく。
とりあえずミュリアとメルリルのためにハシゴをかけてもらい、幻島姫の頭の上に出た。
つぶらな目をした幻島姫は、この騒がしい面々を優しい目で見つめている。
「みなさんとても彼女に気に入られたようですね。珍しいんですよ」
巫女のェミュナが微笑ましいものを見るような表情をする。
幻島姫と巫女の感情は共鳴しているようで、幻の館の女主人であるテア・アンリカは、巫女の機嫌がいい内は危険はないと言っていた。
ということは巫女の態度が変わったら危ないということだな。
「いろいろありがとうございます。幻島姫様、ェミュナさん、よろしくお願いします」
「はい。どうぞ安心して館でお待ちください」
作戦の細かいところは巫女であるェミュナが幻島姫に伝えるのだそうだ。
巫女の役割は大事だな。
俺たちは館に乗り込んで到着を待つだけとなった。
幻島姫の体内の島には食べられる実のなる植物もあり、魚や貝も採れる。
魔獣の甲羅のなかだということを忘れてしまいそうだ。
そして到着はびっくりする程早かった。
確か距離的には、この大陸の南の端から北の端までぐらいあるはずなんだが、一日もかからずに目的の場所に到着してしまう。
海に面した場所での戦いなら負けないとか言うはずだよな。
「これはまた……」
天杜の海沿いの地に着いたのだが、そこは切り立った崖になっている。
しかも岩礁に囲まれているので、上陸するときには俺たち自身が小舟で上陸するしかないとのことだった。
崖の高さからして鈎付きのロープを投げても届かないし、崖をそのまま登るしかないのか?
聖女には無理じゃないか? 俺も怪しいぞ。
「大丈夫です。そこの崖下の洞窟を進むと、天杜の山間部に出るとのことです。山間部は天守山の間近にありますから、そこからの距離は大したことはないはずです」
「うーん。全部伝聞形式なのが気になる。実際にその洞窟を探索した人はいるんですか?」
いろいろ教えてくれたテア・アンリカに確認する。
「昔うちの漁師が遭難したときにそこを通って外に出たそうですわ」
「昔というのは?」
「ええっと、確か五十年より少ないことはなかったと思うけれど」
おおう五十年以上前か?
「……ゲア」
「いや、テア・アンリカ様を責めてる訳じゃないからな」
幻島姫が俺に咎めるような目を向けたので、言い訳をする。
「素晴らしいですわ。ダスター様はすっかり彼女の言葉を理解しているようですね」
「いやいや理解してませんよ? うちのフォルテとだいたい同じようにそういう意味に聞こえるだけで」
「それで十分ですわ。ダスター様は案外と巫女の素養がおありなのかもしれませんね」
「え? いやいや、巫女って女性でしょう?」
「そうではありません。女の巫女は受動的ですけど、男の巫は能動的なだけで、本質に違いはないのです。ただ男性は自分の身を他者に任せることが耐えられないという方が多いので、廃れ気味なのですよ」
「身を任せる?……ああ」
なるほど、俺がフォルテを受け入れるようなことか。
だが俺だって俺の一部であるような感覚があるフォルテだから平気なんであって、例えばこの幻島姫の意識を受け入れられるかと言えば無理だからな。
「ともあれ今はルート確保だな。すみません。予定を変更して構いませんか?」
「と、おっしゃると?」
「洞窟のなかを実際に歩いてみます。ああいう暗くて狭いところはフォルテで確認する意味がないですし、人と会わなければ問題ありませんから。洞窟から出たところからフォルテに確認してもらおうと思います」
わがままかもしれないが、人が普段通らないところは少しの期間で様子が変わってしまうことがある。
実際に行ってみないと何かがあったときに対処が出来ないだろう。
「わかりました。それならこれを」
テア・アンリカは、俺に手のひらの大きさの巻き貝を渡した。
「これは?」
「幻島姫を呼び出す音を出します。動物の吠え声のように聞こえるので、あまり人の注意は引かないかと」
「助かります。行ったはいいが、ここにずっと待っていてもらう訳にもいきませんし」
「ふふ、少し先の海の深いところでじっとしています。そういうのが得意なんですよ。この娘」
微笑むテア・アンリカに頭を下げる。
そして俺たちは出来るだけ海岸近くまで幻島姫に首を伸ばしてもらって、残りの距離はがんばって泳いで崖下まで到着した。
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