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第五章 破滅を招くもの
343 襲撃と交渉
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ふっと、緊張感が最高潮に達する。
聖騎士はさりげなく剣を持ち、メルリルは目を閉じて何かを探っている風だ。
勇者は気づいているが気にしてなさそうだな。
フォルテと若葉はさらに気にしてない。
よかった。こいつらが下手に張り切るとまとまる話もまとまらなくなるからな。
モンクは聖女のそばに張り付いているし、聖女は全く気がついてない。
ザアッと、突然の雨にも似た音が響き、多数の矢が空中で止まる。
今まで無音だった周囲の気配が慌ただしく音を立てた。
「どういうことだ!」
「わからん!」
うーん、いきなり攻撃をしかけておいて自分たちがうろたえるとは、どういうことかな?
どうもプロっぽくないな。
もしかすると皇女さまの追手か、東の貴族に雇われた冒険者かと思ったが、なんとなくそういうイメージじゃない。
俺たちのことを知っていて襲うなら、聖女がいることも知っているだろうし、ああいや、聖女がこういう結界のようなものを張れることは知らないかもしれないが。
「何者だ!」
とりあえず声を掛けてみた。
俺たちは聖女の魔法に守られているのでこの場から動かない限りは安全だし、いざ逃げ出すとなれば、場所を定めなければメルリルに森の道を開いてもらえばいい。
うーん、つくづくこの合同パーティには隙がないな。
俺を含めてうちの連中に危険が及ぶことがあるとしたら、武力よりも詐術によるものだと思う。
俺は頭があまりよくないし、勇者や聖女は頭はいいが常識がない、メルリルに至っては判断基準を持たないし、モンクや聖騎士も狭い世界で生きて来た人間だ。
海千山千の相手に来られたら、騙されずに判断出来るかどうか怪しいんだよな。
フォルテと若葉は問題外だ。
「そんなことを話すと思うか! 俺たちはもう貴様らには従わない! その森人の娘を開放しろ!」
む? メルリルのことか?
メルリルもびっくりしているぞ。
「私は別に拘束されていません!」
『安心しろ、助けてやるからな!』
お、森人の言葉だ。
ということは囲んでいるなかに森人がいるな。
『助けはいりません! 私は自由です!』
『君は騙されているのだ、平野人は残酷な種族だ!』
『彼らは違います!』
うーん、何やら誤解が生じている可能性が見えて来たぞ。
どうするかな。
「師匠。こいつらうるさいから黙らせるか?」
勇者、ややこしくなるからやめてくれ。
「ガウッ!」
「キュイ?」
いや、お前らはもっとダメだから。
「ダメだ! 絶対に攻撃するな!」
「でもこいつらから攻撃して来ただろ? ミュリアがいなかったら誰かケガしてたよな? そういう行為には正しく罰が必要だと思うんだ」
「お前の言いたいことはわかるが、現在だれも傷ついていないのも事実だ。とにかくまずは交渉だ」
イライラして来ている勇者を抑える。
言っていることはわからないでもない。
自分のやったことの結果を引き受けるのは常識として当然だ。
だが、やられたらやり返すということを続けていたらただただ被害が増えるばかりでいいことは何もない。
交渉の余地がある間は交渉すべきだ。
「わかった。師匠に任せる」
「クゥ」
勇者とフォルテは納得したようだったが、そもそもが俺の言うことを聞く必要のない若葉にとっては納得以前の問題だったようだ。
『因果応報。世の摂理。痛みは還るその魂に』
「ぐああああああっ!」
若葉の声と共に周囲から悲鳴が響く。
「おい、大丈夫か?」
というか、俺たちにもダメージがあるぞ。
また加減を間違えて「声」を放ちやがった。
全員が頭を抱えてうずくまっている。
「なんだ、今のは! お前たち何をした!」
「いいから、大丈夫か? こっちには聖女さまがいる。いざとなったら救護可能だ」
「せ、聖女さまだと?」
動揺が伝わる。
「嘘だ」
「いや、しかし、あの森人の女性も嘘は言っていなかったんだろ?」
「しかし……」
なんかもめているな。
「メルリル、森人は嘘がわかるのか?」
「はっきりとわかる訳ではないけど、言葉と意識が一緒に伝わるからある程度は」
「なるほどね」
森人は種族的に共感性を持っている。
それでだいたい相手の意識が伝わるようだ。
「それで、全員大丈夫なのか?」
「……」
お、一人姿を見せたぞ。
獣のような耳と尾を持つ男性だ。
森人だな。
『本当に、敵ではないと言うのか?』
「俺たちは西の国の人間だ。敵ではない」
『私はずっと南の熱の山の近くに住まっていたメッセリです。山の魔物を封印したことで集落を出ました。彼らはその封印を手伝ってくださった方たち。その縁で一緒にいるのです』
『なんと!』
「西の国と言ったか?」
お、ざわざわし始めたぞ、動揺している。
あ、進み出て来ていた森人の男が身を伏せた。
てか、あれだ、土下座だ。
うん、すでにもう懐かしいような、慣れたような光景だな。
「失礼いたした。そのような方々とは存じ上げず、いきなり攻撃をしてしまったこと、我が身を持ってお怒りを鎮めまいらせたもうことを、なにとぞ」
突然、その森人の男が剣を抜き放ち、自分に突き刺した。
「おい、バカ!」
「きゃあ!」
血しぶきが舞う。
俺は思わず結界を飛び出したのだった。
聖騎士はさりげなく剣を持ち、メルリルは目を閉じて何かを探っている風だ。
勇者は気づいているが気にしてなさそうだな。
フォルテと若葉はさらに気にしてない。
よかった。こいつらが下手に張り切るとまとまる話もまとまらなくなるからな。
モンクは聖女のそばに張り付いているし、聖女は全く気がついてない。
ザアッと、突然の雨にも似た音が響き、多数の矢が空中で止まる。
今まで無音だった周囲の気配が慌ただしく音を立てた。
「どういうことだ!」
「わからん!」
うーん、いきなり攻撃をしかけておいて自分たちがうろたえるとは、どういうことかな?
どうもプロっぽくないな。
もしかすると皇女さまの追手か、東の貴族に雇われた冒険者かと思ったが、なんとなくそういうイメージじゃない。
俺たちのことを知っていて襲うなら、聖女がいることも知っているだろうし、ああいや、聖女がこういう結界のようなものを張れることは知らないかもしれないが。
「何者だ!」
とりあえず声を掛けてみた。
俺たちは聖女の魔法に守られているのでこの場から動かない限りは安全だし、いざ逃げ出すとなれば、場所を定めなければメルリルに森の道を開いてもらえばいい。
うーん、つくづくこの合同パーティには隙がないな。
俺を含めてうちの連中に危険が及ぶことがあるとしたら、武力よりも詐術によるものだと思う。
俺は頭があまりよくないし、勇者や聖女は頭はいいが常識がない、メルリルに至っては判断基準を持たないし、モンクや聖騎士も狭い世界で生きて来た人間だ。
海千山千の相手に来られたら、騙されずに判断出来るかどうか怪しいんだよな。
フォルテと若葉は問題外だ。
「そんなことを話すと思うか! 俺たちはもう貴様らには従わない! その森人の娘を開放しろ!」
む? メルリルのことか?
メルリルもびっくりしているぞ。
「私は別に拘束されていません!」
『安心しろ、助けてやるからな!』
お、森人の言葉だ。
ということは囲んでいるなかに森人がいるな。
『助けはいりません! 私は自由です!』
『君は騙されているのだ、平野人は残酷な種族だ!』
『彼らは違います!』
うーん、何やら誤解が生じている可能性が見えて来たぞ。
どうするかな。
「師匠。こいつらうるさいから黙らせるか?」
勇者、ややこしくなるからやめてくれ。
「ガウッ!」
「キュイ?」
いや、お前らはもっとダメだから。
「ダメだ! 絶対に攻撃するな!」
「でもこいつらから攻撃して来ただろ? ミュリアがいなかったら誰かケガしてたよな? そういう行為には正しく罰が必要だと思うんだ」
「お前の言いたいことはわかるが、現在だれも傷ついていないのも事実だ。とにかくまずは交渉だ」
イライラして来ている勇者を抑える。
言っていることはわからないでもない。
自分のやったことの結果を引き受けるのは常識として当然だ。
だが、やられたらやり返すということを続けていたらただただ被害が増えるばかりでいいことは何もない。
交渉の余地がある間は交渉すべきだ。
「わかった。師匠に任せる」
「クゥ」
勇者とフォルテは納得したようだったが、そもそもが俺の言うことを聞く必要のない若葉にとっては納得以前の問題だったようだ。
『因果応報。世の摂理。痛みは還るその魂に』
「ぐああああああっ!」
若葉の声と共に周囲から悲鳴が響く。
「おい、大丈夫か?」
というか、俺たちにもダメージがあるぞ。
また加減を間違えて「声」を放ちやがった。
全員が頭を抱えてうずくまっている。
「なんだ、今のは! お前たち何をした!」
「いいから、大丈夫か? こっちには聖女さまがいる。いざとなったら救護可能だ」
「せ、聖女さまだと?」
動揺が伝わる。
「嘘だ」
「いや、しかし、あの森人の女性も嘘は言っていなかったんだろ?」
「しかし……」
なんかもめているな。
「メルリル、森人は嘘がわかるのか?」
「はっきりとわかる訳ではないけど、言葉と意識が一緒に伝わるからある程度は」
「なるほどね」
森人は種族的に共感性を持っている。
それでだいたい相手の意識が伝わるようだ。
「それで、全員大丈夫なのか?」
「……」
お、一人姿を見せたぞ。
獣のような耳と尾を持つ男性だ。
森人だな。
『本当に、敵ではないと言うのか?』
「俺たちは西の国の人間だ。敵ではない」
『私はずっと南の熱の山の近くに住まっていたメッセリです。山の魔物を封印したことで集落を出ました。彼らはその封印を手伝ってくださった方たち。その縁で一緒にいるのです』
『なんと!』
「西の国と言ったか?」
お、ざわざわし始めたぞ、動揺している。
あ、進み出て来ていた森人の男が身を伏せた。
てか、あれだ、土下座だ。
うん、すでにもう懐かしいような、慣れたような光景だな。
「失礼いたした。そのような方々とは存じ上げず、いきなり攻撃をしてしまったこと、我が身を持ってお怒りを鎮めまいらせたもうことを、なにとぞ」
突然、その森人の男が剣を抜き放ち、自分に突き刺した。
「おい、バカ!」
「きゃあ!」
血しぶきが舞う。
俺は思わず結界を飛び出したのだった。
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