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第四章 世界の片隅で生きる者たち
292 本の探索2
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本の精霊という不思議なものの存在は興味深いが、今のところ特に用事はないので店主に教わった場所に行き、手分けして問題の本を探す。
古式の文章とは言っても、短文なら俺の知る文章とそれほど変わらない。
だからこそ背表紙に書かれたタイトルが読めるという訳だ。
ただし、メルリルにはその短文でも少し難しいらしいので、とりあえず東という単語の入ったものを探すようにと言っておく。
「東方見聞録、東国の冬……ん~と、お、東国は地獄だ! と、これかな?」
なかなか過激なタイトルの本を抜き出してペラペラとページをめくってみる。
「なになに、東国は身分が……ええっと若い国が……駄目だな、てか、この文章癖が強いな、古式ですらないんじゃ?」
「読みましょうか?」
俺が癖のある文字と文章に苦労していると、聖騎士が横から声を掛けて来た。
ここは専門家に任せよう。
「頼む」
「わかりました。ええっと、……これはあれですね、亡命貴族が東国で貴族らしい扱いを受けられなかったという鬱憤を書きなぐったものですね」
「うわぁ、そんな本もあるのか」
「ええ。私が見つけた本は、東国出身の女性がこの帝国で生きがいを見つけて、愛する人と巡り合い結ばれたというものでした」
「目的のものとちょっと違うな」
俺は聖騎士から戻してもらった本を棚に戻す。
「ダスターこれは?」
メルリルが二冊ほど本を持って来る。
「ええと、東の花々、東方と海、……違うっぽいな」
「そう……でもこの本きれい」
メルリルは目的と違うということで肩を落としたが、東の花々という本を気に入ったようだった。
その本はほかの本に比べて大判で、なかにはさまざまな花の絵が色鮮やかに描かれている。
確かにきれいな本だ。
「気に入ったなら買うか?」
「えっ、だ、駄目。すごく高いんだから」
気に入ったのなら購入しようかと提案したら、メルリルは焦ったように断る。
まぁ確かに高い。
なんと大銀貨二枚だ。
安い宿なら二十泊は出来るだろう。
そういえばこの国に来て驚いたのだが、売り物にはたいがい売値が表示されているのだ。
表示価格から値切ることは出来なくもないが、あまり値切るのは好まない風潮のようだった。
つまりものの価格が安定しているということだ。
「だけど、確かにこの花の絵は素晴らしいと思うぞ。ここまで繊細に描かれているならこの値段はむしろ安いだろう」
俺がそう言うと、聖騎士クルスがくすっと笑った。
「ダスター殿はときに貴族のようなことをおっしゃいますね」
「まさか、そんなはずはないだろう」
「いえ、実用にならない芸術に価値を見出すのは貴族や王族の嗜みです。平民ではあまり聞きません」
「う~ん、そんなんじゃないんだが。あれだな、若い頃に絵の上手い騎士に出会って、その価値が身にしみたからじゃないかな?」
俺はクルスにそう答えながら少し懐かしい思いに駆られていた。
その騎士に出会ったのは確かまだ俺が二十代の頃だったろう。
改めて思い出せば、あの頃の俺は勇者をどうこう言えないぐらい生意気だった。
そんな頃、依頼で出会った騎士は、俺の貴族感を一新させたものだ。
「絵の上手い騎士、ですか?」
「ああ、まぁその話は今度な。とりあえず目的の本を探そうか」
俺たちはその後も東国を脱出した者たちの書いた本を探したが、この書店では発見出来なかった。
そして俺はこっそりと花の絵の本を購入してメルリルにプレゼントしたのである。
「ダスター、もう」
こっそり買ったので、次の目的地へと向かう道の途上で本を渡されたメルリルはびっくりしたようだったが、一瞬困ったような顔になったあと、その本を両手でしっかりと抱きしめた。
「ありがとう」
ほんのりと頬を赤くして礼を言うメルリルは大変かわいらしい。
今は慣れるためにメルリルは森人から平野人へと姿を変えているが、元の姿を彷彿とさせる幻影なので、そこまで違和感はない。
ちゃんとメルリルはメルリルのままだ。
「気にしなくていい。東方の国に行ったときに向こうの植物を知っておくことは役に立つからな。なかを見てみたが、花だけでなく植物の性質や食用や薬用の有無も書いてあった。十分有用な本だよ。俺にも読ませてくれるとありがたい」
「もちろん、一緒に読みましょう」
俺の言葉に納得したのか、メルリルは素直にプレゼントを受け入れる気持ちになったようだ。
後ろを歩く聖騎士が「なかなかやりますね」などと言っていたが、聞き流す。
この後、さらに二店舗ほど最初の書店よりは少し小さい店を回ったが、目的のものは見つからなかった。
二軒目の書店の主人が、個人出版専門の書店へ行ってみては? と教えてくれたので、次はそっちへと向かう予定だ。
「疲れただろう。いったん休もう」
「そうですね。探索は集中力が大切ですから」
俺の提案に聖騎士クルスは快く賛成した。
メルリルは、あまり空気のよくない場所をずっと煙を防ぎながら移動していたせいか、少し辛そうだ。
少しゆっくりと休める場所がいいだろう。
「あそこはどうですか?」
クルスが指し示す方向は車が入り込めない狭い路地の一画で、そこにテラスにテーブルセットが設置してある場所が見える。
道路にも小さなテーブルセットが置いてあるようだ。
「食堂かな?」
「茶店かもしれませんね」
「クルル」
フォルテが先行してその店に飛んで行き、テーブルセットの横に生えている木に舞い降りる。
「まぁ、きれいな鳥さん」
そのフォルテに誘われるようにひょこっと顔を出したのはまだ十代半ばぐらいの少女だった。
かわいらしいエプロンを着けているところを見ると、この店で働いているのかもしれない。
「すまない。こちらは食堂かな?」
「ふぁ! あ、失礼しました。はい。ええっと、お茶とお酒と軽食を出しています」
「そうか。ならば席を頼む。ここでもよいか?」
「え、あの、はい!」
クルスが少女に話しかけると、相手は真っ赤になって戸惑っているようだった。
クルスの顔と背中の剣をちらちら見ている。
どうやらどこに座ってもいいらしいので、俺たちはフォルテが寛いでいる木の下に設置してある席に座った。
少女はすぐに我に返り、店の奥へと行くと手書きのメニュー表を持って来る。
しかし書かれている料理の名前がよくわからないものが多かったので、一つ一つ説明をしてもらいながら注文した。
「そういう服装でもやはりにじみ出る気品があるのかね」
注文を受けた少女が立ち去った後、俺は少し聖騎士をからかってみる。
ずっと真っ赤な顔でクルスを見ている少女に笑顔一つ向けない堅物ぶりを見れば、誰だってそんな気分にもなるだろう。
「まさか。私などにそのようなものがあるはずがありません。貴族家に生まれながら貴族らしさがないと散々言われて来ましたからね」
真顔でそう返されて、俺は意外な思いを抱く。
聖騎士クルスは、これまであまり自分の立場への不満のようなことは口にしない男だった。
いや、まぁ、これは不満ではないか。
「そうかな。昔出会った貴族にお前はどこか似ているよ。俺が貴族も悪い奴ばかりじゃないなと思うようになったのはあの人のおかげだ」
「……それは先程おっしゃっていた、絵が上手い騎士という方のことですか?」
「ああ」
俺はまだ若かった頃の、とある騎士との出会いに思いを馳せたのだった。
古式の文章とは言っても、短文なら俺の知る文章とそれほど変わらない。
だからこそ背表紙に書かれたタイトルが読めるという訳だ。
ただし、メルリルにはその短文でも少し難しいらしいので、とりあえず東という単語の入ったものを探すようにと言っておく。
「東方見聞録、東国の冬……ん~と、お、東国は地獄だ! と、これかな?」
なかなか過激なタイトルの本を抜き出してペラペラとページをめくってみる。
「なになに、東国は身分が……ええっと若い国が……駄目だな、てか、この文章癖が強いな、古式ですらないんじゃ?」
「読みましょうか?」
俺が癖のある文字と文章に苦労していると、聖騎士が横から声を掛けて来た。
ここは専門家に任せよう。
「頼む」
「わかりました。ええっと、……これはあれですね、亡命貴族が東国で貴族らしい扱いを受けられなかったという鬱憤を書きなぐったものですね」
「うわぁ、そんな本もあるのか」
「ええ。私が見つけた本は、東国出身の女性がこの帝国で生きがいを見つけて、愛する人と巡り合い結ばれたというものでした」
「目的のものとちょっと違うな」
俺は聖騎士から戻してもらった本を棚に戻す。
「ダスターこれは?」
メルリルが二冊ほど本を持って来る。
「ええと、東の花々、東方と海、……違うっぽいな」
「そう……でもこの本きれい」
メルリルは目的と違うということで肩を落としたが、東の花々という本を気に入ったようだった。
その本はほかの本に比べて大判で、なかにはさまざまな花の絵が色鮮やかに描かれている。
確かにきれいな本だ。
「気に入ったなら買うか?」
「えっ、だ、駄目。すごく高いんだから」
気に入ったのなら購入しようかと提案したら、メルリルは焦ったように断る。
まぁ確かに高い。
なんと大銀貨二枚だ。
安い宿なら二十泊は出来るだろう。
そういえばこの国に来て驚いたのだが、売り物にはたいがい売値が表示されているのだ。
表示価格から値切ることは出来なくもないが、あまり値切るのは好まない風潮のようだった。
つまりものの価格が安定しているということだ。
「だけど、確かにこの花の絵は素晴らしいと思うぞ。ここまで繊細に描かれているならこの値段はむしろ安いだろう」
俺がそう言うと、聖騎士クルスがくすっと笑った。
「ダスター殿はときに貴族のようなことをおっしゃいますね」
「まさか、そんなはずはないだろう」
「いえ、実用にならない芸術に価値を見出すのは貴族や王族の嗜みです。平民ではあまり聞きません」
「う~ん、そんなんじゃないんだが。あれだな、若い頃に絵の上手い騎士に出会って、その価値が身にしみたからじゃないかな?」
俺はクルスにそう答えながら少し懐かしい思いに駆られていた。
その騎士に出会ったのは確かまだ俺が二十代の頃だったろう。
改めて思い出せば、あの頃の俺は勇者をどうこう言えないぐらい生意気だった。
そんな頃、依頼で出会った騎士は、俺の貴族感を一新させたものだ。
「絵の上手い騎士、ですか?」
「ああ、まぁその話は今度な。とりあえず目的の本を探そうか」
俺たちはその後も東国を脱出した者たちの書いた本を探したが、この書店では発見出来なかった。
そして俺はこっそりと花の絵の本を購入してメルリルにプレゼントしたのである。
「ダスター、もう」
こっそり買ったので、次の目的地へと向かう道の途上で本を渡されたメルリルはびっくりしたようだったが、一瞬困ったような顔になったあと、その本を両手でしっかりと抱きしめた。
「ありがとう」
ほんのりと頬を赤くして礼を言うメルリルは大変かわいらしい。
今は慣れるためにメルリルは森人から平野人へと姿を変えているが、元の姿を彷彿とさせる幻影なので、そこまで違和感はない。
ちゃんとメルリルはメルリルのままだ。
「気にしなくていい。東方の国に行ったときに向こうの植物を知っておくことは役に立つからな。なかを見てみたが、花だけでなく植物の性質や食用や薬用の有無も書いてあった。十分有用な本だよ。俺にも読ませてくれるとありがたい」
「もちろん、一緒に読みましょう」
俺の言葉に納得したのか、メルリルは素直にプレゼントを受け入れる気持ちになったようだ。
後ろを歩く聖騎士が「なかなかやりますね」などと言っていたが、聞き流す。
この後、さらに二店舗ほど最初の書店よりは少し小さい店を回ったが、目的のものは見つからなかった。
二軒目の書店の主人が、個人出版専門の書店へ行ってみては? と教えてくれたので、次はそっちへと向かう予定だ。
「疲れただろう。いったん休もう」
「そうですね。探索は集中力が大切ですから」
俺の提案に聖騎士クルスは快く賛成した。
メルリルは、あまり空気のよくない場所をずっと煙を防ぎながら移動していたせいか、少し辛そうだ。
少しゆっくりと休める場所がいいだろう。
「あそこはどうですか?」
クルスが指し示す方向は車が入り込めない狭い路地の一画で、そこにテラスにテーブルセットが設置してある場所が見える。
道路にも小さなテーブルセットが置いてあるようだ。
「食堂かな?」
「茶店かもしれませんね」
「クルル」
フォルテが先行してその店に飛んで行き、テーブルセットの横に生えている木に舞い降りる。
「まぁ、きれいな鳥さん」
そのフォルテに誘われるようにひょこっと顔を出したのはまだ十代半ばぐらいの少女だった。
かわいらしいエプロンを着けているところを見ると、この店で働いているのかもしれない。
「すまない。こちらは食堂かな?」
「ふぁ! あ、失礼しました。はい。ええっと、お茶とお酒と軽食を出しています」
「そうか。ならば席を頼む。ここでもよいか?」
「え、あの、はい!」
クルスが少女に話しかけると、相手は真っ赤になって戸惑っているようだった。
クルスの顔と背中の剣をちらちら見ている。
どうやらどこに座ってもいいらしいので、俺たちはフォルテが寛いでいる木の下に設置してある席に座った。
少女はすぐに我に返り、店の奥へと行くと手書きのメニュー表を持って来る。
しかし書かれている料理の名前がよくわからないものが多かったので、一つ一つ説明をしてもらいながら注文した。
「そういう服装でもやはりにじみ出る気品があるのかね」
注文を受けた少女が立ち去った後、俺は少し聖騎士をからかってみる。
ずっと真っ赤な顔でクルスを見ている少女に笑顔一つ向けない堅物ぶりを見れば、誰だってそんな気分にもなるだろう。
「まさか。私などにそのようなものがあるはずがありません。貴族家に生まれながら貴族らしさがないと散々言われて来ましたからね」
真顔でそう返されて、俺は意外な思いを抱く。
聖騎士クルスは、これまであまり自分の立場への不満のようなことは口にしない男だった。
いや、まぁ、これは不満ではないか。
「そうかな。昔出会った貴族にお前はどこか似ているよ。俺が貴族も悪い奴ばかりじゃないなと思うようになったのはあの人のおかげだ」
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