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[16]もうひとつの魔導書チェス
-166-:“ハウスキーパー”とは何ですか?
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聞いた事すら無いワードに、ふたりはつい。
「フ、フレンチメイドって?」
「メイドにも種類があるのか?」
さっぱり意味が分からない。
「分かり易く言えば、“お商売の”メイドの事だよ。男性を喜ばす方のね」
そこは“さん”付けして呼ばないのか…。メイドと分類する事にさえ、はばかりを感じている。
「初めて僕の前に現れたダナは、まさにそれだったよ。ったく、それもこれも今の日本のメイド文化が間違った方向に波及しているから、彼女たちに勘違いを起こさせるんだ」
怒りの矛先は、昨今のサブカルチャーへと及ぶ。
「高砂・飛遊午」
突然リョーマに名指しされたので、何だか分からないままヒューゴは背筋の伸びる感覚に襲われた。
「君の、『メイドにも種類があるのか?』との質問に答えよう」
「いや、別にそういう意味で]
さほど興味を惹かれる話題ではないのだけれど。
リョーマのレクチャーが始まった。
「メイドと言っても、仕える人や仕事によって分類されていて、ハウスキーパーの指示に従うハウスメイド、一般的に“メイドさん”と呼ばれるのは彼女たちで、接客を担うパーラーメイドや侍女の役割を担うレディースメイド、また、コックの指示の下で仕事をするキッチンメイドや洗濯を専門とするランドリーメイドetc.…」
これほどまでにメイドに関する知識が豊富とは…感心など到底できず呆れ果てる。
この情熱、もはや褒めるしかない。
「リョーマ。“ハウスキーパー”とは何ですか?」
こんな状況下で、ベルタが要らぬ燃料投下をしでかした。
「ハウスキーパーとは“メイド”ではない!ハウスキーパーとは―」
付き合わされるクレハとヒューゴは(全然頭に入ってこねぇwww)。
ってか、コイツ、ただのメイドマニアじゃねぇか。
リョーマの恐るべき一面を垣間見る。
「ざっと、こんなものかな」
ようやく有難いメイドのレクチャーが終わったようだが、クレハたちの頭には、その一割さえもインプットされる事は無かった。
ダナが戻ってきた。
彼女は、こんなシュミの世界に付き合わされて不満を抱かないのだろうか?
手際よく紅茶を入れるダナを見ながらクレハは思う。
「柑橘の、良い香りですね」
ベルタは早速、差し出された紅茶の香りを楽しむ。
「オレンジフレーバーティーです」
ダナが答えると。
「ダナが物珍しいと買ってきたんだ。悪くないだろう」
3人で盛り上がっている。
「モンブランがあるじゃないか!これを貰ってもいいかい?」
リョーマのこの喜びよう。
結構可愛いところあるじゃん。
リョーマの意外な一面に、少しばかり親近感が湧く。
美味しいケーキをいただきながら。
「早速ですが、草間・涼馬」
ベルタが話を切り出した。
「リョーマで構わないよ。そこの高砂・飛遊午の事だってヒューゴと名前で呼んでいるのだろう?」
「では、リョーマ。この数日の間、身体の具合はどうでしたか?何か疲労感を覚えたりはしませんでしたか?」
ベルタの問いに。
「医者を目指している僕に問診かい?別に構わないけど」
冗談交じりに笑ってみせると、ベルタの問いに答えた。
「これといった疲労感に襲われたという気はしないね。初めてダナを操縦した日は、Gや実戦による緊張から、全身に筋肉痛を覚えたものだが」
リョーマが答える傍ら、ヒューゴは「へぇー」驚いた様子で彼らのやり取りを眺めていた。
そして、逆に。
「どうして、そんな事を訊く?」
質問に質問で返してきた。
「い、いえ…。ココミが心配していたのです。ウッズェを斬った後、ダナの魔力ゲージが大幅に下がってしまった事、そしてその後、出力を抑えた状態でオフィエルと戦い続けていた事に」
ベルタが伝える驚愕の事実。
「もしかして、リョーマ。貴方は―」
ベルタの次の言葉を待つクレハとヒューゴはゴクリと唾を飲み込んだ。
「マスターは保有できる霊力量が少ないのです」
代わりにダナが答えてくれた。その傍らで驚くリョーマ。
「何でアンタが驚いているのよ」
すかさずクレハのツッコミ。
ダナが続ける。
「これはマスターの知り得ない事です。と、言うよりも、彼本来の生活を送っていたのなら、絶対に気付かない事なのです」
「それは私にも解ります」
ベルタは理由を知っているようだ。だが!
「勝手に納得しないでよ。私たちにも、ちゃんと解るように説明して」
置いてけぼりは嫌だ。
では、とベルタは説明を始めた。
「ヒューゴもすでに体験済みの事ですが、貴方は我々と出会う前までは、二天撃を使っても、ひどい疲労感に襲われる事は無かったはずです」
「疲れるどころか、連発できていた」
「ですが、私と契約を交わした後は、二天撃を使うと疲れを感じませんか?」
ベルタの問いに、ヒューゴは思い出しながら何度も頷いて見せた。
「それは、私たち魔者と契約したために、私たちへの霊力の供給はもちろん、貴方が消費する霊力の量と出力も増幅しているからです」
「要するに、お前たちが勝手に蛇口を全開に回しているって事か?」
分かり易いようで、非常に解りにくい解釈。
「ええ。だから慣れるまでは、今までよりも抑えた生活を送るよう助言に参ったのです」
ベルタの回答に、ヒューゴはあまりにも自分との待遇の違いに驚きを隠せずにいた。
「フ、フレンチメイドって?」
「メイドにも種類があるのか?」
さっぱり意味が分からない。
「分かり易く言えば、“お商売の”メイドの事だよ。男性を喜ばす方のね」
そこは“さん”付けして呼ばないのか…。メイドと分類する事にさえ、はばかりを感じている。
「初めて僕の前に現れたダナは、まさにそれだったよ。ったく、それもこれも今の日本のメイド文化が間違った方向に波及しているから、彼女たちに勘違いを起こさせるんだ」
怒りの矛先は、昨今のサブカルチャーへと及ぶ。
「高砂・飛遊午」
突然リョーマに名指しされたので、何だか分からないままヒューゴは背筋の伸びる感覚に襲われた。
「君の、『メイドにも種類があるのか?』との質問に答えよう」
「いや、別にそういう意味で]
さほど興味を惹かれる話題ではないのだけれど。
リョーマのレクチャーが始まった。
「メイドと言っても、仕える人や仕事によって分類されていて、ハウスキーパーの指示に従うハウスメイド、一般的に“メイドさん”と呼ばれるのは彼女たちで、接客を担うパーラーメイドや侍女の役割を担うレディースメイド、また、コックの指示の下で仕事をするキッチンメイドや洗濯を専門とするランドリーメイドetc.…」
これほどまでにメイドに関する知識が豊富とは…感心など到底できず呆れ果てる。
この情熱、もはや褒めるしかない。
「リョーマ。“ハウスキーパー”とは何ですか?」
こんな状況下で、ベルタが要らぬ燃料投下をしでかした。
「ハウスキーパーとは“メイド”ではない!ハウスキーパーとは―」
付き合わされるクレハとヒューゴは(全然頭に入ってこねぇwww)。
ってか、コイツ、ただのメイドマニアじゃねぇか。
リョーマの恐るべき一面を垣間見る。
「ざっと、こんなものかな」
ようやく有難いメイドのレクチャーが終わったようだが、クレハたちの頭には、その一割さえもインプットされる事は無かった。
ダナが戻ってきた。
彼女は、こんなシュミの世界に付き合わされて不満を抱かないのだろうか?
手際よく紅茶を入れるダナを見ながらクレハは思う。
「柑橘の、良い香りですね」
ベルタは早速、差し出された紅茶の香りを楽しむ。
「オレンジフレーバーティーです」
ダナが答えると。
「ダナが物珍しいと買ってきたんだ。悪くないだろう」
3人で盛り上がっている。
「モンブランがあるじゃないか!これを貰ってもいいかい?」
リョーマのこの喜びよう。
結構可愛いところあるじゃん。
リョーマの意外な一面に、少しばかり親近感が湧く。
美味しいケーキをいただきながら。
「早速ですが、草間・涼馬」
ベルタが話を切り出した。
「リョーマで構わないよ。そこの高砂・飛遊午の事だってヒューゴと名前で呼んでいるのだろう?」
「では、リョーマ。この数日の間、身体の具合はどうでしたか?何か疲労感を覚えたりはしませんでしたか?」
ベルタの問いに。
「医者を目指している僕に問診かい?別に構わないけど」
冗談交じりに笑ってみせると、ベルタの問いに答えた。
「これといった疲労感に襲われたという気はしないね。初めてダナを操縦した日は、Gや実戦による緊張から、全身に筋肉痛を覚えたものだが」
リョーマが答える傍ら、ヒューゴは「へぇー」驚いた様子で彼らのやり取りを眺めていた。
そして、逆に。
「どうして、そんな事を訊く?」
質問に質問で返してきた。
「い、いえ…。ココミが心配していたのです。ウッズェを斬った後、ダナの魔力ゲージが大幅に下がってしまった事、そしてその後、出力を抑えた状態でオフィエルと戦い続けていた事に」
ベルタが伝える驚愕の事実。
「もしかして、リョーマ。貴方は―」
ベルタの次の言葉を待つクレハとヒューゴはゴクリと唾を飲み込んだ。
「マスターは保有できる霊力量が少ないのです」
代わりにダナが答えてくれた。その傍らで驚くリョーマ。
「何でアンタが驚いているのよ」
すかさずクレハのツッコミ。
ダナが続ける。
「これはマスターの知り得ない事です。と、言うよりも、彼本来の生活を送っていたのなら、絶対に気付かない事なのです」
「それは私にも解ります」
ベルタは理由を知っているようだ。だが!
「勝手に納得しないでよ。私たちにも、ちゃんと解るように説明して」
置いてけぼりは嫌だ。
では、とベルタは説明を始めた。
「ヒューゴもすでに体験済みの事ですが、貴方は我々と出会う前までは、二天撃を使っても、ひどい疲労感に襲われる事は無かったはずです」
「疲れるどころか、連発できていた」
「ですが、私と契約を交わした後は、二天撃を使うと疲れを感じませんか?」
ベルタの問いに、ヒューゴは思い出しながら何度も頷いて見せた。
「それは、私たち魔者と契約したために、私たちへの霊力の供給はもちろん、貴方が消費する霊力の量と出力も増幅しているからです」
「要するに、お前たちが勝手に蛇口を全開に回しているって事か?」
分かり易いようで、非常に解りにくい解釈。
「ええ。だから慣れるまでは、今までよりも抑えた生活を送るよう助言に参ったのです」
ベルタの回答に、ヒューゴはあまりにも自分との待遇の違いに驚きを隠せずにいた。
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