盤上の兵たちは最強を誇るドラゴン種…なんだけどさ

ひるま(マテチ)

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[16]もうひとつの魔導書チェス

-165-:もう、黒玉教会には慣れた?

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 あれから二日が経ち…。

 あれほどの被害を被ったにも関わらず、天馬学府高等部は明くる日から修繕工事に取り掛かり、一日とて休校もせずに平常通り授業を再開していた。

 生徒全員(帰宅した生徒は除く)シェルターに避難していたおかげで、怪我人すらいない、不幸中の幸いとは、この事を言う。

 平常通りとはいえ、やはり自然災害(盤上戦騎ディザスターの暴れ回った後)により、少数の生徒たちが軽度とはいえ、PTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症しているために、部活動を自粛している部も多い。

 弓道部も自粛している部のひとつだ。

 クレハはヒューゴと仲良く校門を出たところで。


 ベルタと出会った。

「お待ちしておりました」
 偶然ではなく、明らかにベルタは二人を待っていた様子。

 ふたりは顔を見合わせて、これにはウラがあると見ると。

「もう、黒玉教会には慣れた?」
 全力で話を逸らしにかかる。

「申し訳なく思うほどに、手厚いもてなしを受けています」
 話を聞いて安心したと言うよりも、ココミとライクの関係が、敵対していながら、非常にヌルい関係にある事に脱力感を覚える。

 敵陣の真っ只で生活しているというのに。

「それよりも今日は、貴方達にお願いがあって参りました」
 途中で会話を切ったばかりか、いきなり用件に入りやがった。

 うまくやり過ごせると思ったのだが、残念。

「草間・涼馬様のところへ御挨拶にうかがうところで、ご一緒にどうかと、参った次第です」
 彼女はケーキの箱を手に下げている。

「俺の時は、そんなの無かったな」
 告げるヒューゴは、少し不服そうな態度を見せている。

「ダナを預かってもらっているお礼も兼ねての訪問です」
 それを言われると納得せざるを得ない。

 ヒューゴは、その日のうちにココミたちの元へ、ベルタを送り返していた。

 二人は気が乗らないものの、ダナがどんな人物なのか興味があったので、ベルタに同行する事にした。
「助かります。一人だと何かと心細くて」

 不安気な彼女は、一見して可愛らしく見えるものの、やはりオッサン成分が抜けないヒューゴは「あ、うん」気の無い返事。



 草間・涼馬宅へ―。

 大きく立派な一軒家だった。

 確か、彼の父は、全国に系列病院を置く草間会病院の総裁だったと聞く。行く行くは政治に進出するとも噂されているほどの人物だ。

 いざ訪問となると緊張して止まない。

 ヒューゴが、恐る恐るインターホンを鳴らそうとすると。

「ご家族の誰かが出たらどうするの?」
 クレハは及び腰。

「その心配は要りませんよ。彼は独り暮らしです」
 ベルタの情報。

「そ、そうなの?ってか、何でベルタがそんな情報を得ているのよ?」

「ダナが教えてくれました。彼女、リョーマの口添えで、父君から正式に家政婦として雇われたのですよ」
 息子の口添えで雇い入れるなんて、何て親バカなんだろうと、二人揃って思った。

 インターホンを押したのに、返事が無い…お留守なのかな?思った矢先、玄関ドアが開いた。

「どちら様ですか?」
 現れたのはメイド姿の眼鏡美女。

 すると、奥から。

「だめじゃないか、ダナ。防犯を兼ねてドアホンが付いているのに」
 しょうがないなと言わんばかりに、注意をしながらリョーマが現れた。

 ヒューゴたちを目にするなり。

「何だ?君たちか」
 いきなりのご挨拶。

 やはり、ダナは気になるが、コイツには用事は無ぇ。

 表向きニコニコ笑顔で彼に挨拶をする。

 リョーマも胡散臭そうな眼差しでベルタたちを見やる。

 迎えられ、リビングに上がった。

「お茶を入れてきます」とダナ。

 彼女の後ろ姿に、クレハがふと。

「あれ?スカートの丈が長くなってる」
 初めて出逢った時との違いに気付いた。

「ああ。彼女が現れた時と比べたんだね」
 違いに気づいてくれたのが嬉しいのか、彼の表情が幾分か柔らかくなった。

「スカートの丈が膝上だなんて、フレンチメイドじゃあるまいし」
 随分と、こだわりがある模様。

「フ、フレンチメイドって?」
 二人は、そんな言葉を聞いた事すら無い。

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