170 / 351
[16]もうひとつの魔導書チェス
-165-:もう、黒玉教会には慣れた?
しおりを挟む
あれから二日が経ち…。
あれほどの被害を被ったにも関わらず、天馬学府高等部は明くる日から修繕工事に取り掛かり、一日とて休校もせずに平常通り授業を再開していた。
生徒全員(帰宅した生徒は除く)シェルターに避難していたおかげで、怪我人すらいない、不幸中の幸いとは、この事を言う。
平常通りとはいえ、やはり自然災害(盤上戦騎の暴れ回った後)により、少数の生徒たちが軽度とはいえ、PTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症しているために、部活動を自粛している部も多い。
弓道部も自粛している部のひとつだ。
クレハはヒューゴと仲良く校門を出たところで。
ベルタと出会った。
「お待ちしておりました」
偶然ではなく、明らかにベルタは二人を待っていた様子。
ふたりは顔を見合わせて、これにはウラがあると見ると。
「もう、黒玉教会には慣れた?」
全力で話を逸らしにかかる。
「申し訳なく思うほどに、手厚いもてなしを受けています」
話を聞いて安心したと言うよりも、ココミとライクの関係が、敵対していながら、非常にヌルい関係にある事に脱力感を覚える。
敵陣の真っ只で生活しているというのに。
「それよりも今日は、貴方達にお願いがあって参りました」
途中で会話を切ったばかりか、いきなり用件に入りやがった。
うまくやり過ごせると思ったのだが、残念。
「草間・涼馬様のところへ御挨拶にうかがうところで、ご一緒にどうかと、参った次第です」
彼女はケーキの箱を手に下げている。
「俺の時は、そんなの無かったな」
告げるヒューゴは、少し不服そうな態度を見せている。
「ダナを預かってもらっているお礼も兼ねての訪問です」
それを言われると納得せざるを得ない。
ヒューゴは、その日のうちにココミたちの元へ、ベルタを送り返していた。
二人は気が乗らないものの、ダナがどんな人物なのか興味があったので、ベルタに同行する事にした。
「助かります。一人だと何かと心細くて」
不安気な彼女は、一見して可愛らしく見えるものの、やはりオッサン成分が抜けないヒューゴは「あ、うん」気の無い返事。
草間・涼馬宅へ―。
大きく立派な一軒家だった。
確か、彼の父は、全国に系列病院を置く草間会病院の総裁だったと聞く。行く行くは政治に進出するとも噂されているほどの人物だ。
いざ訪問となると緊張して止まない。
ヒューゴが、恐る恐るインターホンを鳴らそうとすると。
「ご家族の誰かが出たらどうするの?」
クレハは及び腰。
「その心配は要りませんよ。彼は独り暮らしです」
ベルタの情報。
「そ、そうなの?ってか、何でベルタがそんな情報を得ているのよ?」
「ダナが教えてくれました。彼女、リョーマの口添えで、父君から正式に家政婦として雇われたのですよ」
息子の口添えで雇い入れるなんて、何て親バカなんだろうと、二人揃って思った。
インターホンを押したのに、返事が無い…お留守なのかな?思った矢先、玄関ドアが開いた。
「どちら様ですか?」
現れたのはメイド姿の眼鏡美女。
すると、奥から。
「だめじゃないか、ダナ。防犯を兼ねてドアホンが付いているのに」
しょうがないなと言わんばかりに、注意をしながらリョーマが現れた。
ヒューゴたちを目にするなり。
「何だ?君たちか」
いきなりのご挨拶。
やはり、ダナは気になるが、コイツには用事は無ぇ。
表向きニコニコ笑顔で彼に挨拶をする。
リョーマも胡散臭そうな眼差しでベルタたちを見やる。
迎えられ、リビングに上がった。
「お茶を入れてきます」とダナ。
彼女の後ろ姿に、クレハがふと。
「あれ?スカートの丈が長くなってる」
初めて出逢った時との違いに気付いた。
「ああ。彼女が現れた時と比べたんだね」
違いに気づいてくれたのが嬉しいのか、彼の表情が幾分か柔らかくなった。
「スカートの丈が膝上だなんて、フレンチメイドじゃあるまいし」
随分と、こだわりがある模様。
「フ、フレンチメイドって?」
二人は、そんな言葉を聞いた事すら無い。
あれほどの被害を被ったにも関わらず、天馬学府高等部は明くる日から修繕工事に取り掛かり、一日とて休校もせずに平常通り授業を再開していた。
生徒全員(帰宅した生徒は除く)シェルターに避難していたおかげで、怪我人すらいない、不幸中の幸いとは、この事を言う。
平常通りとはいえ、やはり自然災害(盤上戦騎の暴れ回った後)により、少数の生徒たちが軽度とはいえ、PTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症しているために、部活動を自粛している部も多い。
弓道部も自粛している部のひとつだ。
クレハはヒューゴと仲良く校門を出たところで。
ベルタと出会った。
「お待ちしておりました」
偶然ではなく、明らかにベルタは二人を待っていた様子。
ふたりは顔を見合わせて、これにはウラがあると見ると。
「もう、黒玉教会には慣れた?」
全力で話を逸らしにかかる。
「申し訳なく思うほどに、手厚いもてなしを受けています」
話を聞いて安心したと言うよりも、ココミとライクの関係が、敵対していながら、非常にヌルい関係にある事に脱力感を覚える。
敵陣の真っ只で生活しているというのに。
「それよりも今日は、貴方達にお願いがあって参りました」
途中で会話を切ったばかりか、いきなり用件に入りやがった。
うまくやり過ごせると思ったのだが、残念。
「草間・涼馬様のところへ御挨拶にうかがうところで、ご一緒にどうかと、参った次第です」
彼女はケーキの箱を手に下げている。
「俺の時は、そんなの無かったな」
告げるヒューゴは、少し不服そうな態度を見せている。
「ダナを預かってもらっているお礼も兼ねての訪問です」
それを言われると納得せざるを得ない。
ヒューゴは、その日のうちにココミたちの元へ、ベルタを送り返していた。
二人は気が乗らないものの、ダナがどんな人物なのか興味があったので、ベルタに同行する事にした。
「助かります。一人だと何かと心細くて」
不安気な彼女は、一見して可愛らしく見えるものの、やはりオッサン成分が抜けないヒューゴは「あ、うん」気の無い返事。
草間・涼馬宅へ―。
大きく立派な一軒家だった。
確か、彼の父は、全国に系列病院を置く草間会病院の総裁だったと聞く。行く行くは政治に進出するとも噂されているほどの人物だ。
いざ訪問となると緊張して止まない。
ヒューゴが、恐る恐るインターホンを鳴らそうとすると。
「ご家族の誰かが出たらどうするの?」
クレハは及び腰。
「その心配は要りませんよ。彼は独り暮らしです」
ベルタの情報。
「そ、そうなの?ってか、何でベルタがそんな情報を得ているのよ?」
「ダナが教えてくれました。彼女、リョーマの口添えで、父君から正式に家政婦として雇われたのですよ」
息子の口添えで雇い入れるなんて、何て親バカなんだろうと、二人揃って思った。
インターホンを押したのに、返事が無い…お留守なのかな?思った矢先、玄関ドアが開いた。
「どちら様ですか?」
現れたのはメイド姿の眼鏡美女。
すると、奥から。
「だめじゃないか、ダナ。防犯を兼ねてドアホンが付いているのに」
しょうがないなと言わんばかりに、注意をしながらリョーマが現れた。
ヒューゴたちを目にするなり。
「何だ?君たちか」
いきなりのご挨拶。
やはり、ダナは気になるが、コイツには用事は無ぇ。
表向きニコニコ笑顔で彼に挨拶をする。
リョーマも胡散臭そうな眼差しでベルタたちを見やる。
迎えられ、リビングに上がった。
「お茶を入れてきます」とダナ。
彼女の後ろ姿に、クレハがふと。
「あれ?スカートの丈が長くなってる」
初めて出逢った時との違いに気付いた。
「ああ。彼女が現れた時と比べたんだね」
違いに気づいてくれたのが嬉しいのか、彼の表情が幾分か柔らかくなった。
「スカートの丈が膝上だなんて、フレンチメイドじゃあるまいし」
随分と、こだわりがある模様。
「フ、フレンチメイドって?」
二人は、そんな言葉を聞いた事すら無い。
0
お気に入りに追加
38
あなたにおすすめの小説
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
あの夕方を、もう一度
秋澤えで
ファンタジー
海洋に浮かび隔絶された島国、メタンプシコーズ王国。かつて豊かで恵まれた国であった。しかし天災に見舞われ太平は乱れ始める。この国では二度、革命戦争が起こった。
二度目の革命戦争、革命軍総長メンテ・エスペランサの公開処刑が行われることに。革命軍は王都へなだれ込み、総長の奪還に向かう。しかし奮闘するも敵わず、革命軍副長アルマ・ベルネットの前でメンテは首を落とされてしまう。そしてアルマもまた、王国軍大将によって斬首される。
だがアルマが気が付くと何故か自身の故郷にいた。わけもわからず茫然とするが、海面に映る自分の姿を見て自身が革命戦争の18年前にいることに気が付く。
友人であり、恩人であったメンテを助け出すために、アルマは王国軍軍人として二度目の人生を歩み始める。
全てはあの日の、あの一瞬のために
元革命軍アルマ・ベルネットのやり直しファンタジー戦記
小説家になろうにて「あの夕方を、もう一度」として投稿した物を一人称に書き換えたものです。
9月末まで毎日投稿になります。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-
ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。
自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。
いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して!
この世界は無い物ばかり。
現代知識を使い生産チートを目指します。
※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。
2回目の人生は異世界で
黒ハット
ファンタジー
増田信也は初めてのデートの待ち合わせ場所に行く途中ペットの子犬を抱いて横断歩道を信号が青で渡っていた時に大型トラックが暴走して来てトラックに跳ね飛ばされて内臓が破裂して即死したはずだが、気が付くとそこは見知らぬ異世界の遺跡の中で、何故かペットの柴犬と異世界に生き返った。2日目の人生は異世界で生きる事になった


【完結】婚約者が私以外の人と勝手に結婚したので黙って逃げてやりました〜某国の王子と珍獣ミミルキーを愛でます〜
平川
恋愛
侯爵家の莫大な借金を黒字に塗り替え事業を成功させ続ける才女コリーン。
だが愛する婚約者の為にと寝る間を惜しむほど侯爵家を支えてきたのにも関わらず知らぬ間に裏切られた彼女は一人、誰にも何も告げずに屋敷を飛び出した。
流れ流れて辿り着いたのは獣人が治めるバムダ王国。珍獣ミミルキーが生息するマサラヤマン島でこの国の第一王子ウィンダムに偶然出会い、強引に王宮に連れ去られミミルキーの生態調査に参加する事に!?
魔法使いのウィンロードである王子に溺愛され珍獣に癒されたコリーンは少しずつ自分を取り戻していく。
そして追い掛けて来た元婚約者に対して少女であった彼女が最後に出した答えとは…?
完結済全6話
【本格ハードSF】人類は孤独ではなかった――タイタン探査が明らかにした新たな知性との邂逅
シャーロット
SF
土星の謎めいた衛星タイタン。その氷と液体メタンに覆われた湖の底で、独自の知性体「エリディアン」が進化を遂げていた。透き通った体を持つ彼らは、精緻な振動を通じてコミュニケーションを取り、環境を形作ることで「共鳴」という文化を育んできた。しかし、その平穏な世界に、人類の探査機が到着したことで大きな転機が訪れる。
探査機が発するリズミカルな振動はエリディアンたちの関心を引き、慎重なやり取りが始まる。これが、異なる文明同士の架け橋となる最初の一歩だった。「エンデュランスII号」の探査チームはエリディアンの振動信号を解読し、応答を送り返すことで対話を試みる。エリディアンたちは興味を抱きつつも警戒を続けながら、人類との画期的な知識交換を進める。
その後、人類は振動を光のパターンに変換できる「光の道具」をエリディアンに提供する。この装置は、彼らのコミュニケーション方法を再定義し、文化の可能性を飛躍的に拡大させるものだった。エリディアンたちはこの道具を受け入れ、新たな形でネットワークを調和させながら、光と振動の新しい次元を発見していく。
エリディアンがこうした革新を適応し、統合していく中で、人類はその変化を見守り、知識の共有がもたらす可能性の大きさに驚嘆する。同時に、彼らが自然現象を調和させる能力、たとえばタイタン地震を振動によって抑える力は、人類の理解を超えた生物学的・文化的な深みを示している。
この「ファーストコンタクト」の物語は、共存や進化、そして異なる知性体がもたらす無限の可能性を探るものだ。光と振動の共鳴が、2つの文明が未知へ挑む新たな時代の幕開けを象徴し、互いの好奇心と尊敬、希望に満ちた未来を切り開いていく。
--
プロモーション用の動画を作成しました。
オリジナルの画像をオリジナルの音楽で紹介しています。
https://www.youtube.com/watch?v=G_FW_nUXZiQ
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる