バウンダリ-ソート ―WITCH HUNT―

ナカムラ

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あるソート師の誕生

魔女との戦いの始まり

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  私が魔女との戦いを始める前に、ディヴァイド師マルスから黒マント、剣、ルーペ等を授かった。
 私は、マントを羽織り、剣を持ち、金縁のルーペを首から下げた。

 ーこれは、何に使うのだろうー

  私は、疑問に思いながら、あてもなく歩いていると、黒ネズミが肩に乗ってきた。私は、肩に乗ったネズミを慌てて手で振り払った。
 そのネズミが私に怒って言った。
「これ、我に何をする。全く、失礼な!! 私は、王の使いだ。魔獣の砂ネズミ、コミーである。私は、お前の道標となるよう王様から仰せつかった。お前は、私の指示通り動けよ!わかったな!!」
私は、笑ってしまった。
「こんなネズミの言うことを私に聞けだと。やだね。お前は、どう見てもただのネズミだ。もう、私の肩に乗るな! ネズミ!! 叩き潰すぞ!!」
「そうか。では、私とまず戦うか。よし。そうしてやろう!!」
そういうと、そのネズミは、私の10倍ほどの大きさになり、鋭い爪で引っ掻こうとした。
私は、慌てた。
「わかった。わかったよ、コミー。お前の言う通りにするから!」
すると、コミーは、普通の砂ネズミの大きさに戻った。
「よろしい。これから、私の言うことを聞くのだぞ。色々、魔術道具を授かったようだか、追って説明する。まずは、テレポートサークルを作れ」
私は、口を挟んだ。
「テレポートサークル?それは、何だ。どうやって作る?」
コミーは、呆れた表情をした。
「そうか。お前は、全く新しいソート師だな。テレポートサークルとは、瞬間移動円だ。人差し指で、お前の顔程の円を空(くう)に描いてみろ」
「それから、どうするのだ」
「まぁ、いいから、やってみろ」
 私は、首を傾げつつ、人差し指で円を空に描いた。
円の中には、こことは、違う風景が広がっているようだ。
 中には、森が広がっていた。
  私は、コミーの力で円の中に押された。
「ここは、どこだ。あっ、木の前にしゃがみこんでいる人間がいるぞ」
「まぁ、死んでるから魂だがな。ここは、結界の中の魔女狩りに遭った魂達がいる区域、WitchHuntエリアと呼ぶ」
「私は、もう、結界の中に入れたのか」
「勿論、バンドルは、結界から出られないがな」
「えっ? バンドルとは、何だ?」
「魔女か、魔女でないか、まだ振り分けられていない魂のことだ。そんなことは、いい。ルーペで、その魂を覗いてみろ」
私は、そう言われると、その魂をルーペを通して、見てみた。何も変わらない。普通に、先程の姿のままだ。
「何も変わらないぞ」
「周りに黒い霧のようなモヤのようなものは、見えないか?」
「特に、見えない」
「そうか。では、魔女では、ないな。でも、気を付けろ。魔女は、まやかしの術を使うからな」
「魔女かもしれないというのか」
「そうだ」
「では、こんなの役に立つか」
私が首からルーペを取ろうとすると、コミーは、慌てて言った。
「まぁ、魔女を見つけるのに必要な道具だ。まやかしの術を使えるのは、一部の高等魔女だけだ」
「そうか。それなら、かけておこう。それでは、この人げ……魂は、どうする。それにしても、こんな森があれば、食べ物もあり、幸せでは、ないか」
「お前、この魂を見てみろ」
 私は、魂を覗き込むと、とても、憔悴しきった表情をしていて、姿も痩せこけていた。
「何故、こうなるんだ」
「そうだな。森には、私の食べる物ぐらいしかない」
「お前の餌とは?」
「餌って言うな!! 食べ物だ。追って説明する。続きを聞け!魂達は、皆、魔女に嫌がらせを受けたり、魔獣に四六時中、追われ、疲れ果てている。しかも、お前のいた人間界の半分も空気が吸えなくて、皆、苦しんでいて、食べ物もなくて、飢餓にも苦しむ。ソート師に出会わなくて、500年以上苦しむ魂もいるのだ。ほら、テレポートサークルを作るのだ」
 私は、コミーにそう言われると、空に人差し指で円を描いた。
コミーは、魂を円の中に投げ入れた。
「今度は、こういうこともお前がするのだぞ」
「わかったよ。それより、円の中の奥にいる奴は、誰だ?」
「あぁ、あいつは、お前、専属のディヴァイド師だ。あいつがヘル行きかヘブン行きか決める」
 私は、この時、そのディヴァイド師が長く付き合うこととなる友になることをまだ、知らなかった。
 テレポートサークルは、魂を送り出した後、しばらくして、閉じた。
 コミーは、急かすように私に新たなテレポートサークルを作らせた。
 次々と、魂をディヴァイド師に渡した。皆、苦悶の表情を浮かべた魂だった。

 10番目のバンドルに出会った時だった。
私は、ルーペでそのバンドルを覗き込んだ。
私は、コミーに慌てて言った。
「このバンドルの周りに黒い霧が……コイツは、……」
コミーは、余裕で笑って言った。
「そうだ。本物の魔女だ。戦うぞ、ジェロ!!」
魔女は、ニヤリと笑った。
「あたいと戦う気だね。お前が噂の新しいソート師か。あたいを倒せるかな!!」
  そういうと、拳をこちらに向けた。
コミーが急いで言った。
「ジェロ、マントで全身を覆え、顔もだ!!」
私は、慌てて全身を黒いマントで覆った。
魔女が拳を開くと、手から銀の針が無数に出てきて、こちらへ向かってきた。
銀の針は、マントにぶつかると下に落ちた。
コミーが叫んだ。
「ジェロ、今だ!人差し指で空に八の字を描け!!」
 ジェロが空に八の字を描くと、魔女の手と足が拘束されたようで、倒れ込んだ。
「クソー! あたいがお前みたいな新しいソート師にやられるとは!!」
コミーは、魔女が騒いでいるのを、よそに私に言った。
「今のは、シャックル(手枷足枷)だ。お前は、私が今度から、シャックルと命じたら、空に人差し指で先程のように八の字を描くのだぞ。そうすれば、魔女が拘束される。わかったな!」
私は、ふてくされた。
「また、偉そうにネズミが」
「何だと、また、戦うか!」
「いや、ゴメン、コミー。それより、この騒いでいる魔女、どうするのだ。また、テレポートサークルの中に放り込むのか?」
「いや、魔女は、途中で何をするか、わからん。ディヴァイド師の所まで我々が送り届けるのだ」

  私とコミーは、テレポートサークルの中に、魔女を放り込んだ後、自分達も中に入った。

  ディヴァイド師は、私の目を見ずに言った。
「お前が新しいソート師、ジェロ・ウォードか。よろしく。私は、お前の専属ディヴァイド師のサニー・ウィルソンだ。ところで、早速その魔女をヘル行きさせる。見張ってろよ」
「わかったよ、サニー」
「会ったばかりなのに随分、図々しいな。サニーと呼ぶとは、まぁ、いい」

  そう言うと、ディヴァイド師サニーは、名簿とペンに手を翳した。すると、名簿とペンは、宙を舞い、後ろ手に、シャックルで縛られた手中に名簿とペンが収まった。
サニーが呪文を唱えた。
「ドラクリエ、ドラクリエ……」
すると、魔女の指は、勝手に動き、名簿にサインさせた。
〈エミリー〉
 ディヴァイド師サニーは、魔女に笑って言った。
「そうか。お前の名前は、エミリーか。さぁ、ヘルへ行け!!」
 そういうと、サニーも、テレポートサークルを人差し指で円を描いて、魔女に手を翳して浮かし、サークルの中へ放り込んだ。

  エミリーという魔女は、「ギャーッ!!」と叫びながら、ヘルへ堕ちた。

  私は、コミーに言った。
「何だ。魔女を捕まえるのなんて、容易いことじゃないか」

  コミーは、ほくそ笑んだ。
その笑みは、これからの魔女との戦いが厳しいことを暗示していた。

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