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『クズアルファはぐずぐずに尽くし巣を作る』本編(完結)
◇オメガ視点◇
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最悪。
おれのウチに空き巣が入ったみたいだ。
ここんとこ数日ツイてない。人生詰んでる。
初対面のアルファにフェロモンレイプされるわ、嚙まれた上にヤリ逃げされるわ、最悪極悪だ。
アルファフェロモンがあんなにスゴイとは知らなかった。
住んでる街はそこそこの田舎で、アルファっぽい子は学年が上がるにつれて都市部に引っ越していく。
うちの食堂に来るお客さんは、近場の工場勤務の普通のベータだし。仕事で都会から来るアルファも大体おじさんで、番持ちだろうなーって人ばっかり。
フェロモンってこんなもんかなー、ってぐらいのふわーっとした認識で暮らしてきた。
強制ヒートから理性が復帰して、一人取り残されたホテルのゴージャス部屋から逃げてきて。先ずは店に戻ってみたら、じーちゃんの秘伝のソースまでカチンコチンに凍ってて……はぁ。
で、今はコレ。アパートの部屋の鍵が開いてんの。
思い切って、でもそーっと扉を開けてみる。
むわんとレイプ魔の匂いが充満してる。
いや、ごめんわかってた。アパートに近づくにつれ強くなってた激甘フェロモン。現実を直視できなかったんだよ。あーあ。
玄関とキッチンを秒で抜け……
「ナニコレ?」
まんまるの服の塊。大玉転がしの玉より大きい。寄り添うように、おれのモノが塔のごとく積み上がってる。
「あーっ! うちの暖簾!」
食堂で唯一見当たらなかった暖簾が、てっぺんに掛けられてる。
おれが剥ぎ取ると、玉がカサっと動く。
「いる! いる!」
上のタオル部分をかき分ける。中には全裸のレイプ魔。マジか。なぜかおれのネックガードとパンツを握りしめ、丸くなって眠ってる。
「だぁれ? なお?」
ふわわぁーっと大きなアクビと、寝ぼけて柔らかい声。
「お前こそ、結局誰なんだよ?!」
布地の玉から腕が伸びてくる。
「くずみあきひろ、だ。きみは、くずみなお」
「へ?」
「こんいんとどけ、だしたよ。わたしのつがい」
びっくりして固まるおれは、そのまんま玉の中に抱き入れられてしまった。
服の中は、黒蜜みたいに濃厚なアルファの匂いと、ちょっと焦げくさい……多分、おれのフェロモン。
二つ混じって溶けて、くらくらする。でも、なんだかホッとする空間。
「これも、わたしのだ」
油断してた。大きな手がおれの服を脱がそうとしてくる。出会った時に着てたまんまのヨレヨレの仕事用。パンツは無かったけど、他はホテルに残されてた。
「なっ! やめて!」
「あばれると、ここ、くずれる」
全部あっさり剥ぎ取られ、おれまでスッポンポン。奪った服も一緒に抱えてスンスン嗅ぎながら、再び丸まるアルファ。
「げんかい……おやすみ、なお」
「え? は? おれは?」
幸せそうに微睡むアルファ……ってさぁ、婚姻届って何だよ! ってか、本人より服なのか?!
ふふっと低い声がして、指がおれのうなじに優しく触れる。
「きれいに、まぁるく、あとがついたね」
熱い感触に、スグンと胎の奥が反応する。断片的に残ってる記憶が、ほわんほわんと脳裏に浮かぶ。
いきなりガツンとフェロモン当ててきて、無理やり発情させられた。強引だった。怖かった。正気に戻ったら独りぼっちで、不安だった。
でも、丁寧に抱かれるのは気持ちよかった……かな。最後の方はおれもノリノリだった……かも?
レイプでヤリ逃げじゃなかったのか?
結構な長身で、横になってる背中の筋肉もキレイで、端正って言葉が似合いそうなのに、とろけるように眠ってる。おれの服やモノに囲まれて。
「なんだかオメガの巣作りみたい」
笑えてきて、気が抜けて、おれまで眠くなってくる。
「ま、いいか」
いいんかい! いいのか? いいよな。
硬い背中にぽよんとおなかをくっつけて、一緒に寝っ転がる。
おれのアルファが集めて作った巣の中で、おれも巣の一部になるみたいに。
「おやすみ、おれの番」
◇
◇
◇
ここで、おしまい。
おれに着せたい熱が高じた明広が、ぽっちゃり用普段着のオーダーブランドを立ち上げて、リトルバルーンって名前をつけたり。
直が飲食店したいなら神楽坂、って言って譲らない番と大喧嘩。おれがじーちゃんの店に家出したり。
結局明広が妥協して移住してきたと思ったら、急にスパダリアルファになっちゃってさ。田舎の服飾系工場とガンガン協力して、セミオーダーのバルーンシリーズを全国展開したり。
この街に『風船の巣』って小っ恥ずかしい異名がつくのは……また別のお話。
【ほんとにおしまい!】
おれのウチに空き巣が入ったみたいだ。
ここんとこ数日ツイてない。人生詰んでる。
初対面のアルファにフェロモンレイプされるわ、嚙まれた上にヤリ逃げされるわ、最悪極悪だ。
アルファフェロモンがあんなにスゴイとは知らなかった。
住んでる街はそこそこの田舎で、アルファっぽい子は学年が上がるにつれて都市部に引っ越していく。
うちの食堂に来るお客さんは、近場の工場勤務の普通のベータだし。仕事で都会から来るアルファも大体おじさんで、番持ちだろうなーって人ばっかり。
フェロモンってこんなもんかなー、ってぐらいのふわーっとした認識で暮らしてきた。
強制ヒートから理性が復帰して、一人取り残されたホテルのゴージャス部屋から逃げてきて。先ずは店に戻ってみたら、じーちゃんの秘伝のソースまでカチンコチンに凍ってて……はぁ。
で、今はコレ。アパートの部屋の鍵が開いてんの。
思い切って、でもそーっと扉を開けてみる。
むわんとレイプ魔の匂いが充満してる。
いや、ごめんわかってた。アパートに近づくにつれ強くなってた激甘フェロモン。現実を直視できなかったんだよ。あーあ。
玄関とキッチンを秒で抜け……
「ナニコレ?」
まんまるの服の塊。大玉転がしの玉より大きい。寄り添うように、おれのモノが塔のごとく積み上がってる。
「あーっ! うちの暖簾!」
食堂で唯一見当たらなかった暖簾が、てっぺんに掛けられてる。
おれが剥ぎ取ると、玉がカサっと動く。
「いる! いる!」
上のタオル部分をかき分ける。中には全裸のレイプ魔。マジか。なぜかおれのネックガードとパンツを握りしめ、丸くなって眠ってる。
「だぁれ? なお?」
ふわわぁーっと大きなアクビと、寝ぼけて柔らかい声。
「お前こそ、結局誰なんだよ?!」
布地の玉から腕が伸びてくる。
「くずみあきひろ、だ。きみは、くずみなお」
「へ?」
「こんいんとどけ、だしたよ。わたしのつがい」
びっくりして固まるおれは、そのまんま玉の中に抱き入れられてしまった。
服の中は、黒蜜みたいに濃厚なアルファの匂いと、ちょっと焦げくさい……多分、おれのフェロモン。
二つ混じって溶けて、くらくらする。でも、なんだかホッとする空間。
「これも、わたしのだ」
油断してた。大きな手がおれの服を脱がそうとしてくる。出会った時に着てたまんまのヨレヨレの仕事用。パンツは無かったけど、他はホテルに残されてた。
「なっ! やめて!」
「あばれると、ここ、くずれる」
全部あっさり剥ぎ取られ、おれまでスッポンポン。奪った服も一緒に抱えてスンスン嗅ぎながら、再び丸まるアルファ。
「げんかい……おやすみ、なお」
「え? は? おれは?」
幸せそうに微睡むアルファ……ってさぁ、婚姻届って何だよ! ってか、本人より服なのか?!
ふふっと低い声がして、指がおれのうなじに優しく触れる。
「きれいに、まぁるく、あとがついたね」
熱い感触に、スグンと胎の奥が反応する。断片的に残ってる記憶が、ほわんほわんと脳裏に浮かぶ。
いきなりガツンとフェロモン当ててきて、無理やり発情させられた。強引だった。怖かった。正気に戻ったら独りぼっちで、不安だった。
でも、丁寧に抱かれるのは気持ちよかった……かな。最後の方はおれもノリノリだった……かも?
レイプでヤリ逃げじゃなかったのか?
結構な長身で、横になってる背中の筋肉もキレイで、端正って言葉が似合いそうなのに、とろけるように眠ってる。おれの服やモノに囲まれて。
「なんだかオメガの巣作りみたい」
笑えてきて、気が抜けて、おれまで眠くなってくる。
「ま、いいか」
いいんかい! いいのか? いいよな。
硬い背中にぽよんとおなかをくっつけて、一緒に寝っ転がる。
おれのアルファが集めて作った巣の中で、おれも巣の一部になるみたいに。
「おやすみ、おれの番」
◇
◇
◇
ここで、おしまい。
おれに着せたい熱が高じた明広が、ぽっちゃり用普段着のオーダーブランドを立ち上げて、リトルバルーンって名前をつけたり。
直が飲食店したいなら神楽坂、って言って譲らない番と大喧嘩。おれがじーちゃんの店に家出したり。
結局明広が妥協して移住してきたと思ったら、急にスパダリアルファになっちゃってさ。田舎の服飾系工場とガンガン協力して、セミオーダーのバルーンシリーズを全国展開したり。
この街に『風船の巣』って小っ恥ずかしい異名がつくのは……また別のお話。
【ほんとにおしまい!】
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