*婚前なれそめファンタジー* 盟主は手綱を握りたい! ※ 猜疑心強めのいじわる盟主は、光の溺愛男に進化する ※

保志見祐花

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4 取引をしよう

第60話「愉快・不愉快・居場所ない」

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『………………』




「……………………」
 …………ごくっ…………






(…………アノ~──────……


 スイマセェェェン……
 息が詰まるんですけど……)





 カウンターの内側。
 艶やかな張り部分を“ぎゅうっ”と掴んで
 こっそりと息をのみ、二人を見上げるのはミリアである。

 
 ミリアは、『契約もしたし、この先会うこともあるよね?』と気を利かせて紹介したつもりだったのだが


 自分を挟んで右と左。
 客側通路で『バリっ!』と空気を張り詰めさせる男二人に言葉も出ない。
 


 勤め先の店内で
 今にも何かが始まりそうなこの『圧力』『雰囲気』。



 ミリアからしてみれば
 『何がどうしてこうなった?』である。



 二人の──、
 いや、主にエリックから滲み出る圧力を感じて、




 ミリアは、息もほそぼそと

 スネーク・エリック
 スネーク・エリック と


 二人を交互に、ちらちらしながら、おずお~ずと
 



「………………ア、あの~……
 ねえ、えっと。
 なんかお互い、
 こう、なんか、
 ……意識でも飛ばしあってる、
 の……?」


 伺うように、覗き込むように声をかけるが


「────♪」
 スネークはすっと目だけを横して口元を上げ

「…………」
 エリックはさっと目を背けるのだ。




 その反応に────
 ミリアはさら戸惑い、心の声がお喋りになる。



(えっ。なんかまずいことしたっ?
 えっ? なにこの、エリックさんの反応っ?
 えっ? なにっ!?
 なにっ!?)



 ひだり、みぎ
 ひだり、みぎ

 エリック、スネーク
 エリック、スネーク


 と、交互に瞳を動かしながら
 ミリアは、首を傾げて、言葉を、カスり出した。



「…………えと、ア、
 あのー……、
 おふたり、お知り合いで……? スカ」
「──いや、知らないな」
 

 その問いかけに、かぶせ気味に答えたのはエリックの方。いつになく硬めの声色にミリアが『ん?』と目を向けた瞬間とき、スネークが流れるように喋り出す。


「えぇ。
 どこかでお会いしたことはあるかもしれませんが、私の記憶にはありませんねえ」
「いや。会ったことはない。
 記憶は正しいと思いますよ、スネークさん」
「おや。私の名前を憶えていただき光栄です」
「…………名乗られましたから。
 それぐらいは。」

「……」
「…………」

『…………』



 ────    黙 。

(…………イヤ…………ダカラ……
 …………ナンなのコノ空気クウキ…………)


 男二人。
 止めなく一気にどばっと話し始めたかと思いきや、瞬間的に黙り込む。


 緩急激しい空気に、ミリアは店員ながらも肩身も狭く、息を呑むしかなかった。

 

(は、挟まれています。
 なんですか、この状況ハ。
 まって何が始まるのこれ)



 男二人から滲み出る、圧力に挟まれて。
 カウンターの内側に隠れてしまいたい衝動を抑えながら、中腰・上目遣いで様子を窺う彼女。


(──つ、ツラい。ヘタに動けない)


 フ────────…………と
 ほそーーーく吐き出しエリックをちらーり……と盗み見る。



 そろりと見上げた彼の顔は
 彫刻のような顔面から『ビリっ』とした圧力を放っていて
 ミリアは思わず目をそらし、もう一度カウンターを握りしめていた。






(……まるで因縁の戦いなんですけど。
 一触即発って感じなんですけど。
 …………やばい、そこのトルソーしまっておいたほうがいいかも)


 彼女の脳内
 些細なきっかけで
 口論と取っ組み合いを始める、スネーク商工会組合長とエリックに巻き込まれ

 ドレスを着たトルソーがひっくり返る未来がちらついて──



「────じゃあ、ミリア。
 …………また来るから」
「え? あ、はい、わかりました?」

 唐突な声かけに反射的に切り返す。


「ミリアさん、会費をいただいてよろしいですか?」
「あ! はい、中身確認します!」



 畳み掛けるように言われ、
 ミリアはわたわたと封筒を探し始めた。




 そんな彼女を尻目に
 言葉も少なく、エリックとスネークがすれ違う。


 そしてスネークは素早く、彼にサインを送るのだ。
 目の動きで『後で』、と。



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