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4 取引をしよう
「愉快・不愉快・居場所ない」
しおりを挟むよりによって、腕相撲。
そして、相手は”彼女”。
ミリア・リリ・マキシマムだ。
別に、ミリアに対して特別な感情を抱いている訳ではない。
彼女は情報提供者であり、協力者だ。
が、もとより彼は、協力者のことを、スネークをはじめ、誰にも教えるつもりなどなかった。
絶対に。
教えたくなかったのに。
(…………くそ…………!)
ああ、気に食わない。
この前から、どうしてこうもうまくいかないのか。
スネークが『漏らしてしまうかもしれない』なんてことは微塵も思っていない。
問題はそこではない。
とにかく、この男に知られたくなかったのである。
何度聞かれようと。
どれだけカマをかけられようと。
彼女のことを、特定させるつもりなどなかった。
しかしまさか、
協力者として口説き落としたその日にこれとは
自分が迂闊だったとしか言いようがない。
何も知らないミリアと厄介なスネークがいるこの場で、エリックが次に取る手段など────
一つしかない。
────ふうっ……
和気あいあいと談笑する二人をよそに、エリックは短く一つ息をこぼす。
気配を殺して立ち上がるエリックの足元で、
…………かたんっ…………と小さく椅子がなる。
(…………ミリアに挨拶だけして、すぐに引き揚)
「ねえ、エリックさん」
「────……!」
エリックが静かに立ち上がろうとした、その時。
ミリアにその名を呼ばれて、彼はぴくんと動きを止めた。
エリックが反射的に一瞬固まったその瞬間、
ミリアは、カウンターの内側から促すように
中指と薬指がぴたりとついた手のひらの先を、スネークに向けると
「こちら、商工会の組長さん。
スネーク・ケラーさん。
お世話になってる人なの」
『紹介するね』と言わんばかりに述べる彼女。
応えるようにスネークは、すぅ。っと目を細め、左胸に手を添え会釈する。
「スネーク・ケラーと申します、商工会ギルド総合組長をしております」
「────…………ああ、どうもはじめまして。」
「………………ええ。はじめまして。
以後、お見知り置きを」
立ち上がり、正面から向かい合い。
短く言葉を交わす エリックとスネーク。
すっと出した手、交わした握手。
──────そして。
『………………』
無言である。
「………………」
動かぬ顔の奥底から
『余分なことは言うんじゃない。
わかってるだろうな?』
と圧をかけるエリックと
「………………」
にこやかな笑みの下で
ボスの出方を伺うスネーク。
「………………」
「………………」
エリックと
スネーク
凍り、張り詰め切った沈黙が
ずしっとその場を支配して────
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