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3/6話 宴会も無双する料理係さん
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夜の騎士団本部は、いつになく華やいでいた。
食堂ホールの拡張スペースには明かりが灯り、温かな香りと笑い声が満ちている。新たに配属された炊事係、ミレイア・グランシェリの歓迎会が始まっていた。
卓上には彩り豊かな料理がずらりと並び、団員たちの顔はどれも緩みきっている。
「姉御、これ……マジで全部手作りっスか……」
「胃袋、完全に陥落しました……」
褒め言葉が飛び交う中、ミレイアはエプロンのまま酒杯を手に現れ、にっこりと笑う。
「さ~て、胃袋の次は、皆さんの心も掴ませてもらおうかな」
団員たちは歓声を上げて杯を掲げる。だがその盛り上がりの中、ひとりだけ場の熱に乗らない男がいた。
「団長も飲みましょうよ!」
呼びかけられたレオン・バルクハルトは、微かに眉を動かしただけで、低く返す。
「任務中は控える」
その瞬間、場の空気が一気に張り詰める——かに思えた。
しかしミレイアは、何事もなかったかのように杯をくるりと回し、楽しげに言った。
「じゃあ代わりに、私が酔ったふりでもして盛り上げてみようかしら?」
そして、杯を掲げたまま、くるりとレオンの前に立ちはだかる。
「団長ぉ~~その上腕二頭筋ぅ~~~抱き枕にしたいぃぃ~~~!」
次の瞬間、ミレイアの柔らかな腕が、豪快にレオンの胸板へと伸びた。
騎士団の英雄であり、鋼のような精神力を誇る団長が——凍りついた。
「……」
その顔に、かすかな赤みが差す。
「団長、顔赤い!」
「逃げられないッスね、これは!」
「姉御、それ犯罪スレスレっす!」
団員たちの喝采が響く中、レオンはぎこちなく声を発した。
「……離れろ。不謹慎だ」
それでも、ミレイアは頬をすり寄せながら囁くように笑う。
「減るもんじゃないし……むしろ、筋肉は愛されたら育つんだよ?」
「姉御が本気出すと、団長でも手に負えない説」
「これもう結婚しちまえよ……」
「付き合ってないのが奇跡だな……」
団員たちは酒杯片手に盛り上がり、やがて誰かが言った。
「団長、顔真っ赤っスよ。もう降参したらどうです?」
レオンは静かに息をつき、ようやく身体を引き剥がすようにして言う。
「……いい加減にしろ。お前は明日、朝食当番だろう」
耳まで染まったまま、その背中はそそくさと食堂を後にした。
残されたミレイアは、杯を掲げて笑った。
「は~い、がんばりま~す」
その笑い声は、夜の帳に軽やかに溶けていった。
食堂ホールの拡張スペースには明かりが灯り、温かな香りと笑い声が満ちている。新たに配属された炊事係、ミレイア・グランシェリの歓迎会が始まっていた。
卓上には彩り豊かな料理がずらりと並び、団員たちの顔はどれも緩みきっている。
「姉御、これ……マジで全部手作りっスか……」
「胃袋、完全に陥落しました……」
褒め言葉が飛び交う中、ミレイアはエプロンのまま酒杯を手に現れ、にっこりと笑う。
「さ~て、胃袋の次は、皆さんの心も掴ませてもらおうかな」
団員たちは歓声を上げて杯を掲げる。だがその盛り上がりの中、ひとりだけ場の熱に乗らない男がいた。
「団長も飲みましょうよ!」
呼びかけられたレオン・バルクハルトは、微かに眉を動かしただけで、低く返す。
「任務中は控える」
その瞬間、場の空気が一気に張り詰める——かに思えた。
しかしミレイアは、何事もなかったかのように杯をくるりと回し、楽しげに言った。
「じゃあ代わりに、私が酔ったふりでもして盛り上げてみようかしら?」
そして、杯を掲げたまま、くるりとレオンの前に立ちはだかる。
「団長ぉ~~その上腕二頭筋ぅ~~~抱き枕にしたいぃぃ~~~!」
次の瞬間、ミレイアの柔らかな腕が、豪快にレオンの胸板へと伸びた。
騎士団の英雄であり、鋼のような精神力を誇る団長が——凍りついた。
「……」
その顔に、かすかな赤みが差す。
「団長、顔赤い!」
「逃げられないッスね、これは!」
「姉御、それ犯罪スレスレっす!」
団員たちの喝采が響く中、レオンはぎこちなく声を発した。
「……離れろ。不謹慎だ」
それでも、ミレイアは頬をすり寄せながら囁くように笑う。
「減るもんじゃないし……むしろ、筋肉は愛されたら育つんだよ?」
「姉御が本気出すと、団長でも手に負えない説」
「これもう結婚しちまえよ……」
「付き合ってないのが奇跡だな……」
団員たちは酒杯片手に盛り上がり、やがて誰かが言った。
「団長、顔真っ赤っスよ。もう降参したらどうです?」
レオンは静かに息をつき、ようやく身体を引き剥がすようにして言う。
「……いい加減にしろ。お前は明日、朝食当番だろう」
耳まで染まったまま、その背中はそそくさと食堂を後にした。
残されたミレイアは、杯を掲げて笑った。
「は~い、がんばりま~す」
その笑い声は、夜の帳に軽やかに溶けていった。
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