55 / 66
第55話:お父様の想い
しおりを挟む
その日は一切部屋から出ず、食事もせずに過ごす。何度もお母様やお兄様、お義姉様が様子を見に来たが、頑なにベッドから出ずにいた。
そして翌日。
ふと外を眺める。今頃カルロス様、魔物と戦っているのかしら?怪我をしたりしていないかしら…て、もうカルロス様なんてどうでもいいのよ。そうよ、もう私は彼と婚約破棄をする事に決めたのだから。
そもそもカルロス様だって、気持ちよく送り出せない様な私に、愛想をつかしたに違いないわ。
この日はどうしても貴族学院に行く気になれず、学院をお休みした。なんだかんだ言って、貴族学院卒業まで後3ヶ月。もうすぐ卒業認定試験もあるというのに…そもそも私、カルロス様と結婚しないのだから、後1年貴族学院に通ってもいいのよね。
そう、カルロス様と結婚しないのだから…
自分で勝手に決めた事なのに、なぜか胸がチクリと痛む。なんだか落ち着かなくて、部屋から出て、中庭へとやって来た。
「ルミナス、学院をサボってこんなところにいたのか。それにしても、どうして昨日カルロス殿を見送ってやらなかったんだ。カルロス殿、悲しそうな顔をしていたぞ」
私の元にやって来たのは、お兄様だ。
「お兄様は黙っていてください。私はもう、カルロス様と婚約を破棄するのですから!」
「何を勝手な事を言っているのだ!そんな事、今更出来る訳がないだろう。ルミナス、冷静になれ。カルロス殿はお前の事を、誰よりも大切にしてくれていただろう。魔物討伐に参加するのだって、最後までルミナスの事を心配して悩んでいたのだぞ」
「それでも結局、魔物討伐に参加する事を決めたではないですか?結局カルロス様も、お父様と一緒で、家族や婚約者よりも、任務の方が大事なのよ!」
「ルミナス、お前、本気でそんな事を言っているのか?父上は…」
「ドリトル、それにルミナスも。大きな声を出してどうしたの?」
私達の元にやって来たのは、お母様だ。
「ドリトル、少しルミナスと話をしたいのだけれど、いいかしら?」
「分かりました…」
お兄様が私たちの元を去っていく。私もその場を去ろうとしたのだが…
「ルミナス、ちょっといらっしゃい」
「私は…」
「いいから」
お母様に腕を掴まれ、そのまま連れて行かれる。お母様、怒っているかしら?私がお父様の事を悪く言ったから。でも、本当の事じゃない!
お母様に連れられ向かった先は、かつてお父様が使っていた書斎だ。一体ここに何の用があるというのかしら?
「ルミナス、これ、お父様の日記なの。読んでみて」
お母様から渡されたのは、古い日記帳だ。お父様が日記を付けていただなんて、意外ね。どうせ騎士団についてのことが、書かれているのだろう。そう思って日記帳を広げたのだが。
そこには私とお兄様の事がびっしりと書いてあった。
“3月24日
今日はルミナスが初めて歩いた。生憎俺は騎士団の稽古に行っていて見られなかったが、俺が帰ってきたら、嬉しそうにヨチヨチと歩いて俺の方にやって来たのだ。なんてルミナスは可愛いんだ。俺の可愛い天使“
“4月26日
今日はドリトルが騎士団に入団した。正直俺は、ドリトルにはやりたい事をやって欲しい、俺の後なんて継がなくてもいい。そう思っていた。でも、ドリトル自身が、俺の様な騎士団長になりたいと言ってくれたのだ。俺は父親として何もしてやれていない。だからせめて、騎士団長として、ドリトルの先輩として、彼を支えて行きたい“
「お父様はね、忙しくてあなた達と一緒に過ごせない事を、とても気にしていたのよ。日記の最後の日を読んでみて」
そう言うと、寂しそうに笑ったお母様。最後の日には
“7月15日
明日いよいよ魔物討伐に行く事になった。厳しい戦いになるだろう。もし俺に何かあったら、妻やドリトル、ルミナスはどうなるのだろう、そう考えると不安でたまらない。それでも俺は、行かないといけない。子供たちには今まで、随分寂しい思いをさせた。この討伐が終わったら、騎士団を引退しよう。そしてこれからは侯爵として、子供たちに寄り添っていこう“
そう書かれていた。
「どうやらお父様は、引退を決めていた様ね。でも皮肉な事に、引退する前にあの人は命を落としてしまった。あの人ね、引退後はあなたとドリトルと一緒に、色々なところに行くつもりだったみたいよ。ほら、ここに行きたいリストが書いてあるでしょう」
そう言うと、泣きながらお母様が、日記帳のメモページに書かれているリストを見せてくれた。
そして翌日。
ふと外を眺める。今頃カルロス様、魔物と戦っているのかしら?怪我をしたりしていないかしら…て、もうカルロス様なんてどうでもいいのよ。そうよ、もう私は彼と婚約破棄をする事に決めたのだから。
そもそもカルロス様だって、気持ちよく送り出せない様な私に、愛想をつかしたに違いないわ。
この日はどうしても貴族学院に行く気になれず、学院をお休みした。なんだかんだ言って、貴族学院卒業まで後3ヶ月。もうすぐ卒業認定試験もあるというのに…そもそも私、カルロス様と結婚しないのだから、後1年貴族学院に通ってもいいのよね。
そう、カルロス様と結婚しないのだから…
自分で勝手に決めた事なのに、なぜか胸がチクリと痛む。なんだか落ち着かなくて、部屋から出て、中庭へとやって来た。
「ルミナス、学院をサボってこんなところにいたのか。それにしても、どうして昨日カルロス殿を見送ってやらなかったんだ。カルロス殿、悲しそうな顔をしていたぞ」
私の元にやって来たのは、お兄様だ。
「お兄様は黙っていてください。私はもう、カルロス様と婚約を破棄するのですから!」
「何を勝手な事を言っているのだ!そんな事、今更出来る訳がないだろう。ルミナス、冷静になれ。カルロス殿はお前の事を、誰よりも大切にしてくれていただろう。魔物討伐に参加するのだって、最後までルミナスの事を心配して悩んでいたのだぞ」
「それでも結局、魔物討伐に参加する事を決めたではないですか?結局カルロス様も、お父様と一緒で、家族や婚約者よりも、任務の方が大事なのよ!」
「ルミナス、お前、本気でそんな事を言っているのか?父上は…」
「ドリトル、それにルミナスも。大きな声を出してどうしたの?」
私達の元にやって来たのは、お母様だ。
「ドリトル、少しルミナスと話をしたいのだけれど、いいかしら?」
「分かりました…」
お兄様が私たちの元を去っていく。私もその場を去ろうとしたのだが…
「ルミナス、ちょっといらっしゃい」
「私は…」
「いいから」
お母様に腕を掴まれ、そのまま連れて行かれる。お母様、怒っているかしら?私がお父様の事を悪く言ったから。でも、本当の事じゃない!
お母様に連れられ向かった先は、かつてお父様が使っていた書斎だ。一体ここに何の用があるというのかしら?
「ルミナス、これ、お父様の日記なの。読んでみて」
お母様から渡されたのは、古い日記帳だ。お父様が日記を付けていただなんて、意外ね。どうせ騎士団についてのことが、書かれているのだろう。そう思って日記帳を広げたのだが。
そこには私とお兄様の事がびっしりと書いてあった。
“3月24日
今日はルミナスが初めて歩いた。生憎俺は騎士団の稽古に行っていて見られなかったが、俺が帰ってきたら、嬉しそうにヨチヨチと歩いて俺の方にやって来たのだ。なんてルミナスは可愛いんだ。俺の可愛い天使“
“4月26日
今日はドリトルが騎士団に入団した。正直俺は、ドリトルにはやりたい事をやって欲しい、俺の後なんて継がなくてもいい。そう思っていた。でも、ドリトル自身が、俺の様な騎士団長になりたいと言ってくれたのだ。俺は父親として何もしてやれていない。だからせめて、騎士団長として、ドリトルの先輩として、彼を支えて行きたい“
「お父様はね、忙しくてあなた達と一緒に過ごせない事を、とても気にしていたのよ。日記の最後の日を読んでみて」
そう言うと、寂しそうに笑ったお母様。最後の日には
“7月15日
明日いよいよ魔物討伐に行く事になった。厳しい戦いになるだろう。もし俺に何かあったら、妻やドリトル、ルミナスはどうなるのだろう、そう考えると不安でたまらない。それでも俺は、行かないといけない。子供たちには今まで、随分寂しい思いをさせた。この討伐が終わったら、騎士団を引退しよう。そしてこれからは侯爵として、子供たちに寄り添っていこう“
そう書かれていた。
「どうやらお父様は、引退を決めていた様ね。でも皮肉な事に、引退する前にあの人は命を落としてしまった。あの人ね、引退後はあなたとドリトルと一緒に、色々なところに行くつもりだったみたいよ。ほら、ここに行きたいリストが書いてあるでしょう」
そう言うと、泣きながらお母様が、日記帳のメモページに書かれているリストを見せてくれた。
57
あなたにおすすめの小説
愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました
蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。
そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。
どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。
離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない!
夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー
※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。
※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。
夫が運命の番と出会いました
重田いの
恋愛
幼馴染のいいなづけとして育ってきた銀狼族の族長エーリヒと、妻ローゼマリー。
だがエーリヒに運命の番が現れたことにより、二人は離別する。
しかし二年後、修道院に暮らすローゼマリーの元へエーリヒが現れ――!?
冷徹公爵の誤解された花嫁
柴田はつみ
恋愛
片思いしていた冷徹公爵から求婚された令嬢。幸せの絶頂にあった彼女を打ち砕いたのは、舞踏会で耳にした「地味女…」という言葉だった。望まれぬ花嫁としての結婚に、彼女は一年だけ妻を務めた後、離縁する決意を固める。
冷たくも美しい公爵。誤解とすれ違いを繰り返す日々の中、令嬢は揺れる心を抑え込もうとするが――。
一年後、彼女が選ぶのは別れか、それとも永遠の契約か。
【完結】公爵家の妾腹の子ですが、義母となった公爵夫人が優しすぎます!
ましゅぺちーの
恋愛
リデルはヴォルシュタイン王国の名門貴族ベルクォーツ公爵の血を引いている。
しかし彼女は正妻の子ではなく愛人の子だった。
父は自分に無関心で母は父の寵愛を失ったことで荒れていた。
そんな中、母が亡くなりリデルは父公爵に引き取られ本邸へと行くことになる
そこで出会ったのが父公爵の正妻であり、義母となった公爵夫人シルフィーラだった。
彼女は愛人の子だというのにリデルを冷遇することなく、母の愛というものを教えてくれた。
リデルは虐げられているシルフィーラを守り抜き、幸せにすることを決意する。
しかし本邸にはリデルの他にも父公爵の愛人の子がいて――?
「愛するお義母様を幸せにします!」
愛する義母を守るために奮闘するリデル。そうしているうちに腹違いの兄弟たちの、公爵の愛人だった実母の、そして父公爵の知られざる秘密が次々と明らかになって――!?
ヒロインが愛する義母のために強く逞しい女となり、結果的には皆に愛されるようになる物語です!
完結まで執筆済みです!
小説家になろう様にも投稿しています。
愛する夫にもう一つの家庭があったことを知ったのは、結婚して10年目のことでした
ましゅぺちーの
恋愛
王国の伯爵令嬢だったエミリアは長年の想い人である公爵令息オリバーと結婚した。
しかし、夫となったオリバーとの仲は冷え切っていた。
オリバーはエミリアを愛していない。
それでもエミリアは一途に夫を想い続けた。
子供も出来ないまま十年の年月が過ぎ、エミリアはオリバーにもう一つの家庭が存在していることを知ってしまう。
それをきっかけとして、エミリアはついにオリバーとの離婚を決意する。
オリバーと離婚したエミリアは第二の人生を歩み始める。
一方、最愛の愛人とその子供を公爵家に迎え入れたオリバーは後悔に苛まれていた……。
【完結】氷の王太子に嫁いだら、毎晩甘やかされすぎて困っています
22時完結
恋愛
王国一の冷血漢と噂される王太子レオナード殿下。
誰に対しても冷たく、感情を見せることがないことから、「氷の王太子」と恐れられている。
そんな彼との政略結婚が決まったのは、公爵家の地味な令嬢リリア。
(殿下は私に興味なんてないはず……)
結婚前はそう思っていたのに――
「リリア、寒くないか?」
「……え?」
「もっとこっちに寄れ。俺の腕の中なら、温かいだろう?」
冷酷なはずの殿下が、新婚初夜から優しすぎる!?
それどころか、毎晩のように甘やかされ、気づけば離してもらえなくなっていた。
「お前の笑顔は俺だけのものだ。他の男に見せるな」
「こんなに可愛いお前を、冷たく扱うわけがないだろう?」
(ちょ、待ってください! 殿下、本当に氷のように冷たい人なんですよね!?)
結婚してみたら、噂とは真逆で、私にだけ甘すぎる旦那様だったようです――!?
身代わりの公爵家の花嫁は翌日から溺愛される。~初日を挽回し、溺愛させてくれ!~
湯川仁美
恋愛
姉の身代わりに公爵夫人になった。
「貴様と寝食を共にする気はない!俺に呼ばれるまでは、俺の前に姿を見せるな。声を聞かせるな」
夫と初対面の日、家族から男癖の悪い醜悪女と流され。
公爵である夫とから啖呵を切られたが。
翌日には誤解だと気づいた公爵は花嫁に好意を持ち、挽回活動を開始。
地獄の番人こと閻魔大王(善悪を判断する審判)と異名をもつ公爵は、影でプレゼントを贈り。話しかけるが、謝れない。
「愛しの妻。大切な妻。可愛い妻」とは言えない。
一度、言った言葉を撤回するのは難しい。
そして妻は普通の令嬢とは違い、媚びず、ビクビク怯えもせず普通に接してくれる。
徐々に距離を詰めていきましょう。
全力で真摯に接し、謝罪を行い、ラブラブに到着するコメディ。
第二章から口説きまくり。
第四章で完結です。
第五章に番外編を追加しました。
愛する夫が目の前で別の女性と恋に落ちました。
ましゅぺちーの
恋愛
伯爵令嬢のアンジェは公爵家の嫡男であるアランに嫁いだ。
子はなかなかできなかったが、それでも仲の良い夫婦だった。
――彼女が現れるまでは。
二人が結婚して五年を迎えた記念パーティーでアランは若く美しい令嬢と恋に落ちてしまう。
それからアランは変わり、何かと彼女のことを優先するようになり……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる