王太子に転生したけど、国王になりたくないので全力で抗ってみた

こばやん2号

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第四話「情報収集」

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「あっ」


 人々が寝静まった真夜中、レイオールはパチリと目を見開く。初めてのハイハイからさらに数か月が経過しており、彼がこの世界に生まれ変わって一年が見え始めてきた。


 何故レイオールが真夜中に目覚めたのかというと、答えは至ってシンプルだ。それは、いつもの日課である情報収集のためである。


 あれから、ジュリアや他の使用人の目を盗んでは情報を集めるために動いているレイオールだったのだが、使用人たちの特にジュリアの監視の目がきつく、情報収集は難航していた。


 そこで考え付いたのが、監視する人間が寝静まる真夜中に行動するというものだ。日中は大人しくしておき、誰も見ていない時に動けばいいという結論に至ったレイオールだっが、それが見事にハマった。


(さてさて、今日も書庫に向かうとするか)


 いつものようにベッドから脱出し、部屋を後にする。ちなみにここ数か月の時間経過によりさらに成長したレイオールは、自力でベッドから抜け出すことが可能となっていた。


 当然ながら、レイオールのいる場所は国王や王妃などの王族が住まう城内であるため、例え真夜中でも厳重な警備網が敷かれている。馬鹿正直に真正面から突っ込めば、警備している人間に見つかってしまうのは想像に難くない。


 ではどうするのかというと、見つかってしまう状況であれば見つかるという状況そのものを無くしてしまえばいいのである。具体的には、魔法での解決だ。


「あうあーうあーう【あうーあ】(かの者に眠りを【スリープ】)」


 もうお分かりだろうが、具体的な方法というのは“警備している人間を眠りの魔法を使って昏睡させる”という至ってシンプルな方法だ。ちなみに、眠りの魔法はレイオールが夜中に目が覚め、ジュリアから栄養をもらったあとに彼女が彼に睡眠を促す際に使用した時に覚えたものだ。


 スリープという魔法自体には睡眠を促す効果はあるものの、完全に相手を無力化するほどの力はない。しかしながら、数か月以上という間欠かすことなく魔力の操作を行ってきたレイオールの魔力をコントロールする力は、常人の域をとっくに逸脱しており、彼が使用した魔法は少ない魔力でも高い効果を発揮するようになっていた。


 そもそも、他人が使った魔法を一度見ただけで再現できてしまうという時点で、彼の魔法の才能がずば抜けていることは明白である。だが、いかんせん魔法を使う人間が彼の周囲にあまりいないため、比較対象が少なく、彼自身自分がとてつもない才能を持っていることに気付いていなかったりする。


(さて、もうそろそろ魔法のハウツー本とかに手を出すべきかな)


 今までレイオールが収集してきた情報は、主にこの世界の概要についてがほとんどで、生活習慣や一般常識などといったものは後回しになっていた。


 彼が今まで得てきた情報を精査すると、この世界は五つの大陸に分かれており、それぞれが独自の文明を築いている。独自といっても地球のように突出した文明が存在している訳ではなく、地球の文明で言うところの中世ヨーロッパ程度の文明力しかない。


 それも相まって、それぞれの大陸に存在するほとんどの国が、国王を頂点とし貴族がそれを補佐するという形の制度が採用されている。


 言語や文字は、何故かはわからないがレイオールの前世である貞光がいた日本の母国語である日本語であり、文字は平仮名・片仮名・漢字が組み合わせてできたこれまた現代の日本に近い文字媒体が使用されている。


 そのお陰もあって、書庫を利用し始めてすぐに本の内容を理解できたことは、レイオールにとっては僥倖であった。寧ろ、高くそびえ立つ本棚から必要な情報が記載された本を取り出す方が苦労したくらいだ。


 そんなこんなで世界についての概要の把握に一区切りついたレイオールは、いよいよ魔法についての情報を集めることに切り替えることにした。


(なになに……“魔法は魔力というものを使用して特定の現象を引き起こすものであり、魔法を使用するためには魔力を感じてそれを操作する必要がある”か。って、これって俺がやってた魔力トレーニングじゃね?)


 そうなのだ。図らずも、レイオールはこの世界における魔法の導入部分である魔力の操作を予備知識なく実践しており、魔法を使用するためのステップを何段階かクリアしてしまっている。


 それに加え、そういった魔力の操作は大体の感触が掴めればトレーニング自体をやめてしまうことがほとんどで、彼のように毎日の日課レベルで継続する人間は稀なのだ。


 以上のことから、魔法使いとして既に魔法の基礎は十分にできており、あとは魔法を発動するための詠唱や呪文を覚えるだけとなっていた。


(おっ、魔法には属性があって、それぞれ火・水・風・土・光・闇が基本で、光と闇はレアって感じか)


 さらにハウツー本を読み進めていくと、この世界での魔法の属性は六つで、光と闇は珍しいという記載があった。しかし、これはあくまでもハウツー本の中での知識であるため、これ以外の属性がある可能性も視野に入れつつ、レイオールは次のページを捲る。


(これが基本となる魔法の詠唱と呪文か。覚えなきゃならないな、こりゃ)


 そこに記載されていたのは、基本となる属性の初級魔法の詠唱と呪文名だった。記載されていたものを箇条書きにすると以下の通りになる。



【火属性】


 ・【トーチ】 効果:指先に小さな火を灯す魔法 詠唱『灯れ』

 ・【ファイア】 効果:指定した場所に火を発生させる 詠唱『火よ集え』


【水属性】


 ・【アクア】 効果:指先に雫を出す魔法 詠唱『滴れ』

 ・【ウォーター】 効果:指定した場所に水を発生させる 詠唱『水よ集え』



【風属性】


 ・【エアー】 効果:指先に空気の流れを起こす魔法 詠唱『吹け』

 ・【ウインド】 効果:指定した場所に風を発生させる 詠唱『風よ集え』



【土属性】


 ・【ソイル】 効果:指先に僅かな土を生み出す魔法 詠唱『肥やせ』

 ・【アース】 効果:指定した場所に土を発生させる 詠唱『土よ集え』



【光属性】


 ・【ライト】 効果:小さな光の玉を出す魔法 詠唱『光よ集え』

 ・【ライトヒール】 効果:擦り傷や切り傷を治療する魔法 詠唱『光の力、かの者に癒しを』



【闇属性】


 ・【ダーク】 効果:小さな闇の玉を出す魔法 詠唱『闇よ集え』

 ・【ブラインド】 効果:一時的に目を見えなくする魔法 詠唱『闇の力、かの者に災いを』




(なるほど、“各属性の最初に記載されている【トーチ】・【アクア】・【エアー】・【ソイル】・【ライト】・【ダーク】は、初歩中の初歩のため、比較的使える者は多い”と)


 初級の魔法が記載されている箇所の概要を読み進んでいくと、そのような記載があることにレイオールは気付く。魔法を使える者は珍しいとはいえ、各属性の最も簡単な魔法であれば光や闇属性であっても使用することは難しくない。


 かく言う乳母のジュリアも、光属性の【ライト】を使用することができていたことから、それは明白である。


 仮に魔法の使用を可能にするための魔力の操作ができていなくとも、魔法を使用するための詠唱と呪文を知っていれば、完全ではないにしろ魔法を使用することはできなくはない。


 しかし、当然だが場合によっては魔法自体が発動しなかったり、ただ無駄に魔力を消費するだけの徒労に終わることが多いため、魔法を使用する際には魔力の操作を覚えることが推奨されている。


(待てよ。ここには【スリープ】がないじゃないか。どういうことだ?)


 一通り初級の魔法を閲覧し終わったレイオールが、ふとあることについて疑問を覚えた。それは書庫にやってくるための策で多用することがある【スリープ】が初級魔法に含まれていなかったことだ。


 もともと、この【スリープ】という魔法は、この魔法を使用したジュリアから見様見真似で習得したものだ。だが、魔法のハウツー本に記載されている魔法の中に該当する魔法はなかった。


 可能性としては【スリープ】という魔法が初級に含まれていない中位以上の魔法であるか、【スリープ】という魔法自体がジュリアの完全オリジナルの魔法であるかである。


 少なくとも、この魔法が初級レベルでどうこうできるような代物ではないということはなんとなく想像でき、自身の乳母であるジュリアが何故そんな魔法を使えるのかという更なる疑問が浮かんだが、そこは“まあ、ジュリアだからな”という異世界物のライトノベルに登場する主人公の規格外を説明する脇役のような台詞で、レイオールは片づけることにした。


 そこからさらに魔法の理解を進めるべくハウツー本を読みたいところだったが、そろそろ夜泣きでジュリアを呼び出さなけれべならない時間となってしまったため、後ろ髪を引かれる思いで自分の部屋へと戻って行った。
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