何度も死に戻りした悪役貴族〜自殺したらなんかストーリーが変わったんだが〜

琥珀のアリス

文字の大きさ
85 / 238
冒険編

王子様という名の…

しおりを挟む
 俺は話しかけてきた5人に対して怠さを隠さず視線を向けた後、これまた怠そうに言葉を返す。

「なにか?」

「な、なんだその態度は!」

 すると、俺の態度が気に入らなかったのか、真ん中にいた金髪をオールバックにしている目つきの悪い太った男が声を荒げる。

「態度って何だ?これが俺の普通だが。なぁ?」

「ん。エルはいつも通り」

「そうね。いつもこんな感じね」

「てか。そもそもお前誰だよ」

 いつも一緒に行動しているフィエラとシュヴィーナは、俺が尋ねると迷いなく答えてくれる。

 そして、ついでにこの男が誰なのか聞いてみるが、ソニアはこの男が誰なのか知っているようであわあわしながら俺たちと男の間で視線を彷徨わせていた。

 男はそんな俺たちの態度がよほど気に入らなかったのか、プルプルと震えながら顔を真っ赤にして怒鳴り出す。

「お前!俺が誰か知らないだと!!俺はこの国の第一王子であり次期賢者でもあるダイト・ファルメルだぞ!」

「ふーん。で?」

「なっ?!」

 身分を明かしたにも関わらず、まさかの返しにダイトだけでなく周りにいた他の生徒たちも驚いた顔をする。

「で、だと!!王族である俺に対して何という態度!貴様!ただじゃ置かないぞ!」

「めんどくさ」

 ダイトは大きなお腹をぶるんぶるん揺らしながら怒るだけで、一向に話しかけてきた要件を話す様子がなく、相手にするのが面倒になってくる。

「ソニア」

「な、なにかしら?」

「お前が相手をしてくれ。俺はめんどくさいから寝る」

「…え?」

 王子のことをソニアに任せた俺は、席に座ると水クッションを机の上に出し、それを枕にして寝る準備に入る。

 フィエラも俺の隣に座ると、何故か尻尾を俺の太ももに乗せてきて、シュヴィーナはさすがにソニアが可哀想だったのか、彼女の側で様子を見ていた。

「…あの、ダイト様。とりあえず、ご用件をお伺いしてもよろしいですか?」

 ソニアは恐る恐るダイトの方を見て話しかけるが、彼は完全に無視されたことにより、もはやソニアの話が全く聞こえていなかった。

 そして…

「決闘だ!!」

「……はい?」

「この俺、ダイト・ファルメルは!そこの男に決闘を申し込む!」

 ダイトがそう叫ぶと、クラス内にいた全員がざわめき出し、ソニアは理解が追いつかないのかポカンとしていた。

「何の騒ぎだい?」

 すると、そのタイミングで聞き覚えのある声が聞こえて顔を上げてみると、そこには昨日クラス分けの試験を担当していたハミルが立っていた。

「ハミル先生!俺はこの新入生に決闘を申し込みます!」

 ダイトは俺のことを指差しながらハミルにそう言うと、彼はすぐに状況を察したのか俺の方に話しかけてくる。

「決闘ねぇ。エイルくんはどうする?」

「そもそも決闘についてがわからないのですが?」

「あぁ、そうだったね。決闘とは、挑んだ者と挑まれた者が戦うものなんだけど、勝った側は相手に一つだけ命令ができるんだ。

 その命令については、見届け役である教師を交えながら当事者たちで話し合い、教師が認めた場合、または当事者同士がお互いに同意した場合にのみ、その命令をかけて決闘ができるというものだよ」

「なるほど。それって断れますか?」

「え?ま、まぁ断ることはできるけど、本当に断るのかい?」

 ハミルは俺が断れるのか聞くと、少し驚いたような顔をして聞き返してくる。

「だってそれ、受ける側にほとんどメリットありませんよね?」

「確かにそうなんだけど…ほら、君も魔法使いなわけだし、プライドとか無いのかなって思って」

 彼が何を言いたいのか分からず少し考えると、プライドと言われて俺はようやく納得することができた。

 魔法使いとは、己の使う魔法や知識に大なり小なりプライドや自信を持っている。
 そのため、自身の魔法を馬鹿にされたり、それに関わる決闘を申し込まれれば、大抵の魔法使いはそれを受けるということなのだろう。

「ありませんね。俺は格上と戦うのは好きですけど、何も考えていない格下と戦うのは何の得にもならないので嫌いなんですよ。
 それに、相手との実力差も分からないようなやつから何を学べと言うんですか?」

 俺は基本的に売られた喧嘩は買う主義ではあるが、今回は違う。

 ダイトは相手との実力差が分かっていない上に、こいつには本当の目的が別にあることが分かっていたからだ。

 というのも、こいつは先ほどから俺の隣にいるフィエラやシュヴィーナ、それにソニアのことをチラチラと見ており、明らかに下心が透けて見えていたのだ。

「か、格下だと?!試験にたまたま合格したゴミの分際で調子に乗るなよ!今すぐ俺と決闘しろ!!!」

「君って結構容赦なく言うんだね」

「まぁ本当のことですから。それより決闘についてですが、代理を立てることは可能ですか?」

「代理?うーん、ルール上では禁止されていないし大丈夫だと思うけど…」

「わかりました。フィエラ」

「ん」

「遊んでやれ」

「わかった」

 フィエラはそう言って席を立つと、ダイトの方を見て話しかける。

「エルの代わりに私が決闘を受ける。勝った場合の命令はなに」

 しかし、すぐにダイトから返事が返ってくることは無く、疑問に思いながら彼の方を見てみると、彼はフィエラの胸に視線が釘付けになっていた。

「アホくさ。フィエラ、さっさとゴミを片付けろ」

「ん。早く答えて。命令はなに」

 フィエラがダイトに再び勝った場合の命令について聞くと、彼はようやくフィエラの胸から視線を外して彼女の方を見る。

 しかし、そんな彼をクラスにいる全員の女子が軽蔑のこもった目で見ており、少なくともこの一瞬だけは女子の味方が誰一人としていなくなった。

「…こほん。命令についてだが、俺が決闘に勝った場合、お前たち3人には俺の女になってもらう!獣人を女にするなど本当はあり得ないことなのだが、お前は見た目が良いから特別だ!感謝しろ!

 それとそこの男には退学してもらう!俺を馬鹿にしたのだから当然だよなぁ!!これが俺が勝った時の命令だ!」

「だ、そうだけど。フィエラさんはどうするんだい?」

「なら、私が勝ったらあなたが退学して。そして二度と私たちの前に現れないで」

 何とも清々しいくらいに私欲に塗れた命令に対し、フィエラは汚物を見るような目でダイトに自分が勝った場合の命令を告げる。

「ふん!いいだろう!!獣人ごときに次期賢者であるこの俺が負けるはずもない!その条件で勝負を受けよう!」

 いつの間にか勝負を受ける側と挑む側が逆になったような台詞を吐くダイトは、お腹についた脂肪をぶるんぶるん揺らしながら鼻の穴を大きくしていた。

(はぁ。すでに勝った後のことを考えているみたいだな)

「では、双方が勝利後の命令について納得したと言うことで、2人に制約魔法をかけるね」

 話がまとまったところで、見届け役のハミルがフィエラとダイトに制約魔法をかける。

 制約魔法とは、お互いに約束したことを守らせるための魔法であり、決められた内容を守らなかった場合には全身を激痛が襲い続けるという魔法だ。

「では、制約魔法も終了したし、これから訓練場に行こうか。本当は新入生の自己紹介の予定だったけど、終わってからでもいいよね。どうせすぐに終わるだろうし」

 ハミルもこの決闘の結末が分かっているようで、早く終わらせるためにクラスの全員で訓練場の方へと移動する。




 訓練場へとやってきた俺たちは、フィエラとダイトから少し離れたところにある観客席に座ると、彼女たちの方へと目を向ける。

 そしてフィエラが軽く準備運動を始めた頃、どこから話を聞いたのか、いつのまにか観客席にはかなりの人が集まっており、他の生徒たちもフィエラとダイトの方を見ていた。

「それではこれより、ダイトくん対フィエラさんの決闘を始める。双方、準備はいいかな?」

「もちろんだ!」

「問題ない」

「それでは…はじめ!」

 ハミルは開始の合図を出すと、2人から距離をとって様子を眺める。

「おい獣人!お前に先手を譲ってやろう!好きに攻めてくるがいい!!」

 ハミルが開始の合図をした瞬間、ダイトは何を思ったのかフィエラにそんな事を言うと、彼は魔法の詠唱もせずに棒立ちになる。

「わかった」

「終わったな」

「えぇ。本当に時間の無駄だったわね」

 フィエラはそう言うと、身体強化を足にだけかけてその場から消えたように移動し、気づいた時にはダイトの目の前で拳を振りかぶっていた。

「え…ぐはぁ!!!」

 顔面をモロに殴られたダイトは、血を撒き散らしながら地面を転がっていき、壁にぶつかってようやく止まる。
 
「勝負あり!ダイトくんが気を失ったため、勝者はフィエラさん!」

 先ほどまでダイトを応援していた生徒や、フィエラを貶していた生徒たちは一気に静まり返り、訓練場は静寂に包まれる。

「丸いからよく転がったな」

「そうね。壁が無ければもっと転がりそうだったのに残念ね」

「ふ、2人とも辛辣ね」

 俺とシュヴィーナの会話にソニアが若干引いていると、ゴミの片付けを終えたフィエラが俺たちのもとへと戻ってくる。

「おわった」

「お疲れ。良い一発だったな」

「えぇ。見ててスッキリしたわ」

「ありがと。エル。ご褒美にあとで尻尾撫でて」

「はいよ」

 その後、ハミルの指示でいまだ意識を失っているダイトは担架で医務室へと運ばれていき、見学していた他の生徒たちも各自の教室へと戻されていく。

 俺たちも訓練場にはもう用が無かったので、4人でクラスへと戻るのであった。





しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!

ユーリ
ファンタジー
気がつくと、見知らぬ部屋のベッドの上で、状況が理解できず混乱していた僕は、鏡の前に立って、あることを思い出した。 ここはリュカとして生きてきた異世界で、僕は“落ちこぼれ貴族の息子”だった。しかも最悪なことに、さっき行われた絶対失敗出来ない召喚の儀で、僕だけが失敗した。 そのせいで、貴族としての評価は確実に地に落ちる。けれど、両親は超が付くほど過保護だから、家から追い出される心配は……たぶん無い。 問題は一つ。 兄様との関係が、どうしようもなく悪い。 僕は両親に甘やかされ、勉強もサボり放題。その積み重ねのせいで、兄様との距離は遠く、話しかけるだけで気まずい空気に。 このまま兄様が家督を継いだら、屋敷から追い出されるかもしれない! 追い出されないように兄様との関係を改善し、いざ追い出されても生きていけるように勉強して強くなる!……のはずが、勉強をサボっていたせいで、一般常識すら分からないところからのスタートだった。 それでも、兄様との距離を縮めようと努力しているのに、なかなか縮まらない! むしろ避けられてる気さえする!! それでもめげずに、今日も兄様との関係修復、頑張ります! 5/9から小説になろうでも掲載中

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~

Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」 病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。 気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた! これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。 だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。 皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。 その結果、 うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。 慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。 「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。 僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに! 行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。 そんな僕が、ついに魔法学園へ入学! 当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート! しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。 魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。 この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――! 勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる! 腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!

英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~

ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国の辺境で、ただ静かに生き延びたいと願う少年、ヴァン。 彼に正義感はない。あるのは、前世の記憶と、母が遺した『物理法則を応用した高圧魔力』という危険な理論だけだ。 敵の大軍が迫る中、ヴァンは剣も振るわず、補給線と心理を切り裂く。 結果、敵軍は撤退。代償も、喝采も、彼には無意味だった。 だが、その「効率的すぎる勝利」は帝国の目に留まり、彼は最高峰の『帝国軍事学院』へと引きずり出される。 「英雄になりたいわけじゃない。生き残りたいだけだ」 謎の仮面メイド『シンカク』、命を取引に差し出した狼耳の少女『アイリ』。 少年は選択する。正義ではなく、最も費用対効果の高い道を。 これは、合理が英雄譚を侵食していく、学園ミリタリーファンタジー。 【※作者は日本語を勉強中の外国人です。翻訳ソフトと辞書を駆使して執筆しています。至らない点もあるかと思いますが、物語を楽しんでいただければ幸いです。】

スキル買います

モモん
ファンタジー
「お前との婚約を破棄する!」 ローズ聖国の国立学園第139期卒業記念パーティーの日、第3王子シュナル=ローズレアは婚約者であるレイミ・ベルナール子爵家息女に宣言した。 見習い聖女であるレイミは、実は対価と引き換えにスキルを買い取ることのできる特殊な能力を有していた。 婚約破棄を受け入れる事を対価に、王子と聖女から特殊なスキルを受け取ったレイミは、そのまま姿を消した。 レイミと王妃の一族には、数年前から続く確執があり、いずれ王子と聖女のスキル消失が判明すれば、原因がレイミとの婚約破棄にあると疑われるのは明白だ。 そして、レイミを鑑定すれば消えたスキルをレイミがもっている事は明確になってしまうからだ。 かくして、子爵令嬢の逃走劇が幕を開ける。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

処理中です...