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一、黒髪のグレイ
5、少女騎士と不思議なメイド(6)
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ミラーは何度も瞬きを繰り返した。
ドキドキと暴れる心臓を抑えつけて、たっぷりと深呼吸をすると、グレイだった娘の頭を撫ぜた。
「大丈夫よ、シア」
アルバトロスが書面で伝えてきたこと。
それは、グレイに旅をさせるということ。
そして、このシアという娘――他人に寸分たがわず変身できる異能を持つ彼女をグレイの影武者にすることだった。
期限は、ベルイエン離宮に赴く〈処女の月〉十五日まで。
それまでには戻すと、強い筆圧で書いてあった。
「『戻す』。若様が閣下の導きで旅立たれたのは、間違いないようですね」
でも、誰と?
どこの女と?
ミラーの気持ちが波立つ。
案内人を用意したのなら、まず私たちに会わせるべきでは?
不満を鼻から漏らすミラーの手前で、少年騎士は気楽にしていた。
「変身できるなんて、すごいね。魔法かな。本当の本当に、本物の若みたいだった。姫様でもできないんじゃないかな」
ラインがそう言いながら、シアの頭を撫ぜている。
されているほうは、不思議そうに義理の兄を見上げるばかりだ。
彼女から底知れぬ未曽有の力を見せつけられたのに。
「すごすぎて、私はまだ信じられません。けれど……」
ミラーは再びため息をついた。
「こうして、若様が戻られるまで、やり過ごさなくてはいけないのですね」
「僕が若のところへ行くよ、ミラー。そうしたら安心でしょ」
少年騎士がえへんと胸を張る。
「いけません。それに、今、どこにいらっしゃるかわからないのですよ」
「でも、若が危ない目に遭うかもしれない」
ラインが口を尖らせる。
「若様の腕試しと、思うほかありません。案内人もいるようですし。どこの誰かは知りませんけど」
待機指示さえなければ。
ミラーも、彼と同じ気持ちだった。
今すぐにでも追いかけますものを。
だが、二人に課せられたのは旅の供ではない。
「私たちがお守りすべき若様は、ここにいるのですから……」
ミラーに抱き寄せられたシアが、ぱちくりと瞬きした。
「がんばります」
ドキドキと暴れる心臓を抑えつけて、たっぷりと深呼吸をすると、グレイだった娘の頭を撫ぜた。
「大丈夫よ、シア」
アルバトロスが書面で伝えてきたこと。
それは、グレイに旅をさせるということ。
そして、このシアという娘――他人に寸分たがわず変身できる異能を持つ彼女をグレイの影武者にすることだった。
期限は、ベルイエン離宮に赴く〈処女の月〉十五日まで。
それまでには戻すと、強い筆圧で書いてあった。
「『戻す』。若様が閣下の導きで旅立たれたのは、間違いないようですね」
でも、誰と?
どこの女と?
ミラーの気持ちが波立つ。
案内人を用意したのなら、まず私たちに会わせるべきでは?
不満を鼻から漏らすミラーの手前で、少年騎士は気楽にしていた。
「変身できるなんて、すごいね。魔法かな。本当の本当に、本物の若みたいだった。姫様でもできないんじゃないかな」
ラインがそう言いながら、シアの頭を撫ぜている。
されているほうは、不思議そうに義理の兄を見上げるばかりだ。
彼女から底知れぬ未曽有の力を見せつけられたのに。
「すごすぎて、私はまだ信じられません。けれど……」
ミラーは再びため息をついた。
「こうして、若様が戻られるまで、やり過ごさなくてはいけないのですね」
「僕が若のところへ行くよ、ミラー。そうしたら安心でしょ」
少年騎士がえへんと胸を張る。
「いけません。それに、今、どこにいらっしゃるかわからないのですよ」
「でも、若が危ない目に遭うかもしれない」
ラインが口を尖らせる。
「若様の腕試しと、思うほかありません。案内人もいるようですし。どこの誰かは知りませんけど」
待機指示さえなければ。
ミラーも、彼と同じ気持ちだった。
今すぐにでも追いかけますものを。
だが、二人に課せられたのは旅の供ではない。
「私たちがお守りすべき若様は、ここにいるのですから……」
ミラーに抱き寄せられたシアが、ぱちくりと瞬きした。
「がんばります」
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