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二、潮風に吹かれて
2,聖王女リシュナ・ティリア(1)
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早朝の澄み切った冷涼な空気の中へ、少女が一人躍り出た。
真っ白なショールを体にきつく巻き付けているが、たっぷりとした髪が肩から零れ落ち金色の流れを作っている。
輝く朝日が、彼女の蜜色の髪を空へとろかす。
娘はベルイエン離宮の中庭、光に愛された水の祭壇の前で膝を折った。
シルクのシュミーズの裳裾がふわりと月のように白い円を描く。
少女は胸の前で両手を合わせ、指を折り畳むと、頭を垂れた。
「母なる海よ、父なる大地よ、精霊たちの手により我らに今日という日をお与えくださり、感謝します。あなたがたの娘にして、ヴァニアスの神子、リシュナ・ティリア・ディア・ヴァニアスの名のもと、祝福と豊穣があらんことを。我が魂をもて畏み申し上げます」
透き通った祝詞の声が消えてゆくのに反比例して、にわかに少女の周りの空気が緩みはじめた。
穏やかな日差しがリシュナの周りでだけ強まる。
閉じている瞼の内側が赤く感じるほどだ。
まるで少女だけを暖めるように光が降り注ぐ。
祈りが届いたのね。
リシュナは喜びに口元をほころばせながら瞳を開いた。
軽い足取りで立ち上がると、祭壇のご神体――大理石の平たい水皿に小さな手のひらを浸し、その水を恭しく口にした。
よく冷えた水が少女の口を、喉を潤す。
祈りから水への口づけまでが、リシュナの目覚めの儀式だった。
ベルイエン離宮では一度も欠かしたことがない。
祭壇の水は、ヴァニアスが建国される以前から湧き出ている清水だった。
この湧き水があったからこそ、聖都ピュハルタは古より発展してきた。
スノーブラッド王朝以前には、水を求める原住民族がここを拠点としていたほどだ。
リシュナは、周りに誰もいないのをいいことに、祭壇の水でぱしゃぱしゃと顔を洗った。
真っ白なショールを体にきつく巻き付けているが、たっぷりとした髪が肩から零れ落ち金色の流れを作っている。
輝く朝日が、彼女の蜜色の髪を空へとろかす。
娘はベルイエン離宮の中庭、光に愛された水の祭壇の前で膝を折った。
シルクのシュミーズの裳裾がふわりと月のように白い円を描く。
少女は胸の前で両手を合わせ、指を折り畳むと、頭を垂れた。
「母なる海よ、父なる大地よ、精霊たちの手により我らに今日という日をお与えくださり、感謝します。あなたがたの娘にして、ヴァニアスの神子、リシュナ・ティリア・ディア・ヴァニアスの名のもと、祝福と豊穣があらんことを。我が魂をもて畏み申し上げます」
透き通った祝詞の声が消えてゆくのに反比例して、にわかに少女の周りの空気が緩みはじめた。
穏やかな日差しがリシュナの周りでだけ強まる。
閉じている瞼の内側が赤く感じるほどだ。
まるで少女だけを暖めるように光が降り注ぐ。
祈りが届いたのね。
リシュナは喜びに口元をほころばせながら瞳を開いた。
軽い足取りで立ち上がると、祭壇のご神体――大理石の平たい水皿に小さな手のひらを浸し、その水を恭しく口にした。
よく冷えた水が少女の口を、喉を潤す。
祈りから水への口づけまでが、リシュナの目覚めの儀式だった。
ベルイエン離宮では一度も欠かしたことがない。
祭壇の水は、ヴァニアスが建国される以前から湧き出ている清水だった。
この湧き水があったからこそ、聖都ピュハルタは古より発展してきた。
スノーブラッド王朝以前には、水を求める原住民族がここを拠点としていたほどだ。
リシュナは、周りに誰もいないのをいいことに、祭壇の水でぱしゃぱしゃと顔を洗った。
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