後宮の右筆妃

つくも茄子

文字の大きさ
19 / 82
第一章

19.包青side

しおりを挟む

 オレの想いも裏腹に捜査は難航した。
 数時間経っても見つからなかった。
 いくら何でも時間がかかり過ぎている。杏樹の身が心配になるものの手掛かりすら見つかっていない現状では打つ手がない。ただ無駄に時間だけが過ぎていった。

 夕暮れ時になり、漸く杏樹らしき侍女を見かけたという女官の証言を得ることが出来た。
 その証言に、オレや捜査にあたってた者達は喜びを露にしたが、続けられた言葉に誰もが言葉を失った。
 
「私が見た時は侍女一人ではありませんでした。数名の女人に運びこまれていたんです。どうも、気を失っていたようで……私はてっきり病人を運んでいるものだとばかり思っていたんです」
 
「間違いないか?」
 
「彼女の赤い髪は目立ちます!間違える筈ございません」
 
 そう断言されてしまえばそれ以上は何も言えない。しかも意識の無い状態だというではないか。そうなると尚更見つけ出すことは困難を極めるだろうことは容易に想像がつく。オレ達は再び捜索を開始したのだが一向に見つかる気配はなく夜になってしまった。このままだと杏樹の命に関わるかもしれないと焦りを覚えたその時だった。皇帝陛下が突然オレの前に現れたのは。
 
「包青、喜べ!朗報だぞ」
 
 陛下が現れたことに驚く間もなく伝えられた報告の内容に、今度は別の意味で驚愕する事となった。なんと、杏樹が見つかったというのだ。それも怪我もなくピンピンとしている状態で。
 一体何故?どうやって見つかったんだ!? 混乱するオレとは対照的に陛下はとても嬉しそうだった。

「実に愉快な娘だ。まさか自力で脱出するとはな。しかも運まで味方しているぞ」
 
 監禁場所から逃げ出した杏樹は丁度、彼女を探していた皇帝直属の諜報部隊の一員に遭遇して保護してもらったとは。これでもう大丈夫だと言うと陛下は早々に姿を消してしまったのだが残されたオレはまだ困惑したままその場に立ち尽くしてしまった。けれど直ぐに我に帰ると杏樹の元に駆け出した。


 
しおりを挟む
感想 19

あなたにおすすめの小説

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。

Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。 そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。 そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。 これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。 (1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)

離婚する両親のどちらと暮らすか……娘が選んだのは夫の方だった。

しゃーりん
恋愛
夫の愛人に子供ができた。夫は私と離婚して愛人と再婚したいという。 私たち夫婦には娘が1人。 愛人との再婚に娘は邪魔になるかもしれないと思い、自分と一緒に連れ出すつもりだった。 だけど娘が選んだのは夫の方だった。 失意のまま実家に戻り、再婚した私が数年後に耳にしたのは、娘が冷遇されているのではないかという話。 事実ならば娘を引き取りたいと思い、元夫の家を訪れた。 再び娘が選ぶのは父か母か?というお話です。

三年の想いは小瓶の中に

月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。 ※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。

わたしのことがお嫌いなら、離縁してください~冷遇された妻は、過小評価されている~

絹乃
恋愛
伯爵夫人のフロレンシアは、夫からもメイドからも使用人以下の扱いを受けていた。どんなに離婚してほしいと夫に訴えても、認めてもらえない。夫は自分の愛人を屋敷に迎え、生まれてくる子供の世話すらもフロレンシアに押しつけようと画策する。地味で目立たないフロレンシアに、どんな価値があるか夫もメイドも知らずに。彼女を正しく理解しているのは騎士団の副団長エミリオと、王女のモニカだけだった。※番外編が別にあります。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

処理中です...