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第一章
6.後宮6
しおりを挟む「ねぇ、杏樹。貴女最近、変よ?」
そう言って眉根を寄せたる姉上。
「そ……そうかな?」
「えぇ。だって何か悩んでいるでしょう?」
さすが美娘姉上!何でもお見通しなんですね!なんて言えるはずもなく。私は曖昧に笑って誤魔化した。姉はそんな私の様子に気づいていないのか気にせず、話を続けた。
「もしかして……お継母様からの文に良くない事が書かれていたのではなくて?」
「姉上?」
「例えば、新たな縁談の話とか」
「あ……」
そう言えば、そんな内容の文が何通も来ていたのを思い出した。
しかも、どれも良い話とは言えない内容のものばかり。母上にとっては良い縁組らしい。家柄は勿論、地位も高く財もある。ただし、どれも後妻。つまり、親子ほど歳の離れた男との縁組を推奨されているのだった。その事を美娘姉上に話すと謝られてしまった。
「ごめんなさい。私がもっと早く気づくべきだったわ」
「姉上のせいでは!……それより、私こそ心配かけて御免なさい」
「いいのよ。杏樹は何も悪くないの。謝る必要など何処にもないわ。お継母様からの文は私の方で全て目を通してから断りの返事をだしておくので安心して。貴女にこんな条件の悪過ぎる縁組など私が断固として認めません」
「姉上……。ありがとうございます」
「杏樹の縁組の決定権はお継母様ではなく、私やお父様に有るのだから当然のことよ。私もお父様も杏樹には幸せな結婚をして欲しいの。その為ならどんな事でもするわ」
「……はい」
優しい姉の気遣いに涙が出そうになった。
同時に、貴女の妹は結婚願望ゼロですとも言えなくなってしまった。
その後、姉と他愛もない話をした。姉上が言うには、父上は私に好きな人が出来たらそれがどんな立場の男であっても結婚させてあげたいと仰っていたそうだ。だから、縁談を急ぐ必要は無いと言われた。
巽家の娘に生まれた以上、政略結婚は覚悟していた。
それが「地位も名誉も財産もない男」でも受け入れる、と言われたのだ。父上の優しさに感謝しつつ、初恋もまだの私には今一ピンとこない内容でもあった。
ただ、この一件で美娘姉上の母性に火が付いた事に気付くことはなかった。
そして、この異常な条件を父上に認めさせたのが姉である事実にも気付くのはまだまだ先の事である。
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