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本編

27.エリックside

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 姉弟の会話からマスミは恒例行事として日本に行っていた。
 いつもは一ヶ月程の滞在期間。
 でも今回に限り三ヶ月以上の滞在だった。
 仕事明けの頭がまわらない状態のロイドは恒例行事の件をスコーンと頭から消去していたらしい。それを聞いて脱力感と共に深い溜め息をつく。

 なるほどマスミが居なかったはずだ。
 そもそも毎年の事なのにどうしてそれに気付かなかったのか……。
 いや、理由は分かる。
 俺もロイドもコミケに興味がない。
 興味がないと言うよりも狂気の沙汰にしか見えないからだ。キリスト教圏では考えつかない発想と思考と行動様式で描かれた創作物が軒を連ねている。そしてそれらが無造作に陳列される様はとても異様に映るのだ。しかもその殆どが何等かの意味で規制されているこの国においては更に異常さが際立っている。だから興味以前の問題なのかもしれない。俺とロイドにとってはマスミは毎年日本に行って帰って来るという感覚でしか捉えられていなかったし捉える必要もなかった訳だ。

「あー……そういえばそうだな……」

 今更ながらに気付いた事実に対して気のない返事をしてしまう俺だったが、マスミは全く気にしていないようだ。
 それよりも自分がいない間に家政婦ロボットを動員されたいた事の方が余程気になるらしい。



「だいたいね、私は元々反対だったのよ!可愛いマスミをロイドなんかの『嫁』にすることに!!」

「はぁ?! 俺の何処がダメだって言うんだ!!?」

「どの口が言ってるの!ロイヤルバレエ団のプリマとシェイクスピア劇団の看板女優とパリコレのモデルとイタリアのオペラ歌手とウィーンのバイオリニストが鉢合わせして修羅場になった事を忘れたって言う気!!同時進行の付き合いがバレて危く死者が出る処だったでしょう!!!」

「アレは偶々だよ!玉突き事故みたいな現象だから滅多に起きない事だったんだ!!それにマスミと結婚してからはマスミ一筋だよ!!!」

「当たり前でしょ!!!」


 凄まじい会話だ。
 そもそも浮気は事故でもなんでもない。

「それに、付き合ってくれって言ってきたのは向こうからで、俺は一度も言った事ないし、気付いたら彼女面されてる事はザラにあったんだからしょうがないじゃないか!!」

「それを上手くコントロールできなかったから修羅場が白昼堂々と繰り広げられたんでしょうが!!!」

「えぇぇぇぇぇ?! それ俺のせい!!? ワンナイトで彼女面する方がどうかしてるよ!!」

「おバカ!そういう性欲処理はプロを使うのが常識でしょう!!!」


 最悪な会話が部屋に響く。
 それにしても二人の会話って姉弟としてはアリなのか?
 一人っ子の俺には兄弟というのが今一つよく分からん。

 

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