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10.突然の求婚
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「ソーニャ!」
私が領地から戻ると訪ねて来た者がいた。
ローレンスだ。
彼は私の姿を認めるなり駆け寄ってくる。その勢いは今にも抱きつかんばかりのもので私は思わず一歩引いてしまった。
「ああ、ソーニャ!会いたかったよ!」
「え、ええ……」
彼は私の前で跪き、私の手を取った。
まるで壊れ物に触れるかのように優しく手に唇を寄せる。
「っ!」
ゾワリと悪寒がした。
え?なに?
「結婚しよう、ソーニャ」
「は?」
思わず間抜けな声が漏れた。
ローレンスは跪いたまま私を見上げている。
幻聴ではないらしい。
彼は私と結婚したいと言っている。
「ど、どうしたの?ローレンス」
「ソーニャは僕のことが嫌いかい?」
「……いえ、別にそういうわけでは……」
「じゃあ好きかな?」
「そ、そうね。友人としては好ましく思っているわ」
思わず戸惑いながらも答えると彼は嬉しそうに笑った。
「なら決まりだね」
……え?何が?何が決まったの?
そこからが早かった。
トントン拍子で話が進み、私はローレンスと婚約した。
展開が早すぎて付いていけない。どうしてこうなった?
「何か問題?」
心底不思議そうにのたまうローレンス。
「ええ……あまりにも急展開過ぎて」
「そうかい?僕との結婚はもっとも最善だよ?」
「その根拠はなに?」
「だって、考えてごらん。僕とソーニャの年齢は七歳しか違わない。年回りの合う結婚相手なんて他にいないだろう?」
「……私はそうだけど、ローレンスは違うでしょう?」
「大ありだよ。僕は『婚礼式直前で花嫁に逃げられた男』なんだから」
「それは王家の過失でしょう」
「そうと分っていても揚げ足取りはされるものさ。それに、僕の結婚相手は公爵夫人になる。それなりの教育を受けた高位貴族に限られてくるんだ。ね?早々いないだろう?その点、ソーニャは既に公爵夫人としての教育を受けている。能力に何も問題ない。これだけの条件を揃えているのはソーニャだけ。君以上に最適な結婚相手はいないよ」
「……そうかしら?」
「そうだよ!」
力強く断言するローレンス。
その自信は何処からくるのか。
確かに納得する部分はある。
王女殿下との結婚が無効になったので正式に公爵家を継ぐ身になっている。
必ずしも長子が継ぐとは限らない。
王家に男児が誕生した場合を見越して第一王女は立太子されなかった。
一応、公爵家に嫁ぐ身だった王女殿下。
数年して男児が望めなければそのまま立太子し、ローレンスは王家に婿入りだったはず。
……そうか。そうよね。
王配になるはずだった公爵家の跡取り。
そこら辺の貴族の令嬢ではダメよね。
あら?
それでいうのなら私も同じ?
元婚約者は公爵子息で王太女の夫……うん。この微妙な肩書は私ぐらいかもしれない。
確かに。
私と結婚できる男は限られる。
場合によっては王家に目を付けられかねない女よね。
王太女殿下も夫の元婚約者の女だなんて気分の良い存在ではないはず。
信頼が地に落ちたといってもこれから挽回すればいいこと。
お金のない王家はメイナード公爵家のおかげでその心配はなくなった。
となると、私の結婚相手はいざとなれば王家と事を構えても一向にビクともしない鉄の精神と財力と権力を持った男でなければならない。
……まあ、ローレンスは条件に当てはまるわね。
うん。悪くないわ!
私が領地から戻ると訪ねて来た者がいた。
ローレンスだ。
彼は私の姿を認めるなり駆け寄ってくる。その勢いは今にも抱きつかんばかりのもので私は思わず一歩引いてしまった。
「ああ、ソーニャ!会いたかったよ!」
「え、ええ……」
彼は私の前で跪き、私の手を取った。
まるで壊れ物に触れるかのように優しく手に唇を寄せる。
「っ!」
ゾワリと悪寒がした。
え?なに?
「結婚しよう、ソーニャ」
「は?」
思わず間抜けな声が漏れた。
ローレンスは跪いたまま私を見上げている。
幻聴ではないらしい。
彼は私と結婚したいと言っている。
「ど、どうしたの?ローレンス」
「ソーニャは僕のことが嫌いかい?」
「……いえ、別にそういうわけでは……」
「じゃあ好きかな?」
「そ、そうね。友人としては好ましく思っているわ」
思わず戸惑いながらも答えると彼は嬉しそうに笑った。
「なら決まりだね」
……え?何が?何が決まったの?
そこからが早かった。
トントン拍子で話が進み、私はローレンスと婚約した。
展開が早すぎて付いていけない。どうしてこうなった?
「何か問題?」
心底不思議そうにのたまうローレンス。
「ええ……あまりにも急展開過ぎて」
「そうかい?僕との結婚はもっとも最善だよ?」
「その根拠はなに?」
「だって、考えてごらん。僕とソーニャの年齢は七歳しか違わない。年回りの合う結婚相手なんて他にいないだろう?」
「……私はそうだけど、ローレンスは違うでしょう?」
「大ありだよ。僕は『婚礼式直前で花嫁に逃げられた男』なんだから」
「それは王家の過失でしょう」
「そうと分っていても揚げ足取りはされるものさ。それに、僕の結婚相手は公爵夫人になる。それなりの教育を受けた高位貴族に限られてくるんだ。ね?早々いないだろう?その点、ソーニャは既に公爵夫人としての教育を受けている。能力に何も問題ない。これだけの条件を揃えているのはソーニャだけ。君以上に最適な結婚相手はいないよ」
「……そうかしら?」
「そうだよ!」
力強く断言するローレンス。
その自信は何処からくるのか。
確かに納得する部分はある。
王女殿下との結婚が無効になったので正式に公爵家を継ぐ身になっている。
必ずしも長子が継ぐとは限らない。
王家に男児が誕生した場合を見越して第一王女は立太子されなかった。
一応、公爵家に嫁ぐ身だった王女殿下。
数年して男児が望めなければそのまま立太子し、ローレンスは王家に婿入りだったはず。
……そうか。そうよね。
王配になるはずだった公爵家の跡取り。
そこら辺の貴族の令嬢ではダメよね。
あら?
それでいうのなら私も同じ?
元婚約者は公爵子息で王太女の夫……うん。この微妙な肩書は私ぐらいかもしれない。
確かに。
私と結婚できる男は限られる。
場合によっては王家に目を付けられかねない女よね。
王太女殿下も夫の元婚約者の女だなんて気分の良い存在ではないはず。
信頼が地に落ちたといってもこれから挽回すればいいこと。
お金のない王家はメイナード公爵家のおかげでその心配はなくなった。
となると、私の結婚相手はいざとなれば王家と事を構えても一向にビクともしない鉄の精神と財力と権力を持った男でなければならない。
……まあ、ローレンスは条件に当てはまるわね。
うん。悪くないわ!
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