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~朱雀の章~
第108話閑話 鳳凰side
しおりを挟む黄帝とやらは賢かった。
彼奴が気に入っただけの事はある。
白沢が教えた一万千五百二十種類の妖異の知識を部下に命じて書き取らせた。
そうして出来上がったのが『白沢図』だ。これらは単なる図録ではない。病魔や天災を呼び起こす妖異に対してどのように対処すれば良いのかといった対処法が事細かに記述されていた。
『白沢図』
この書物の存在は妖異にとって脅威だ。
確かに人間は弱い。
直ぐ病になるし、直ぐに死ぬ。
一度戦争になれば大量の戦死者を出す。
傷は中々癒えない。腕や足を斬られたら再生も出来ない生き物だ。
寿命も短い。
百年も生きられない。
出産も母子共に命がけだ。
無事に産まれたとしても、大半が幼くして命を失う。成人まで生き残れる確率は低い。
地上世界に置いて「人間」という生き物は「弱者」に分類されていた。
それがどうだ?
今では地上世界の覇者だ。
火を使い、武器を使って敵をしとめる。一人でやれないのなら数人で組んで確実に敵を倒す。計画を立て、大勢の人間が多くの武器を手に持てば「人」は「妖異」に勝てる。そう……勝てるようになってしまった。しかもだ、人知を超えた存在と手を組んで悪徳の限りを尽くす者まで出てきた。中にはそれらを利用して多くの者を不幸にする人間まで出てくる始末。
いや、一番おぞましかったのは「人」が「妖異」を飼育し始めた時だ。
珍しい動物を採取する事が権力者の間で流行っていた事も拍車をかけた。
私を食べたら不老不死になれるという俗説まで生まれた!
お陰で逃げ惑う日々の始まりだ!
何故だ?
他にも神獣はいるだろう!
なのに「鳳凰」である私だけが狙われた!
理由は分かっている。
麒麟や龍王は「王」の象徴とされているからだ。
その中で私だけあぶれていると言っても過言ではない!
「え? 鳳凰は『皇后』の象徴とされてるから一緒だよ!」
へらへら笑う白沢の顔面にケリを入れた私は悪くない筈だ。
人間どもはにとって私は二番手なのだ!
吉兆を与えようと姿を見せても「あ……鳳凰か」と言われる私の気持ちが分かるか? 嬉しいけど麒麟や龍の方が良かったと顔に書いてあるんだ!
私は永遠の二番手……なのに白沢ときたら。
「二番じゃダメなの?」
ダメに決まっているだろ!
誰だって一番が良いに決まっている!
ゴホンッ。
話がそれた。
大陸の皇帝は護衛隊の先頭に「白沢旗」を掲げる。
白沢は「徳の高い為政者の治世に姿を現す象徴」とされる。それと一緒に「病魔除けになる」と信じられているのだ。だからこそ、為政者は身近に「白沢」に関するものを置いた。
暫く彼奴の顔は見たくない。
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