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~後涼殿の章~
第41話生贄
しおりを挟む僕が両腕を組んでうんうんと考え込んでいると、大弐の乳母が理由を教えてくれる。出来た乳母だ。
「女房達の行動は一見的を得ないものに感じますが、思い出してください。元後涼殿の更衣様の密通の話は公卿達が噂しているものです」
「たしかに……」
「女房達は、元後涼殿の更衣様からお生まれになる御子の存在を恐れているのでしょう。
もし、元後涼殿の更衣様が皇子をお産みになった場合、二の宮様の競争相手になるでしょうし、元後涼殿の更衣様母子が弘徽殿の女御様の傘下に入られたら、更に桐壺の更衣様側にとって脅威と成り得る事態です。
その事も含めて、元後涼殿の更衣様を貶める必要性があったのでしょう。
内裏の妃方の妬みを元後涼殿の更衣様に集まるように行動しながら、元後涼殿の更衣様の信頼を失墜させ、万が一、皇子をお産みになっても排除できる手段を持ち得るようにした。
それが真相ではないでしょうか。もっとも、内裏で元後涼殿の更衣様が不義をなさったと信じている者は一人もおりませんが」
そういえば、内裏は外と違って静かだ。
「元後涼殿の更衣様は早くから入内され、その人となりを知っている者は多いのです。才豊でありながらひけらかすことなく控えめで静かな女人ということは皆が知っていらっしゃいます。決して不義密通などするような性格でない事も含めて、内裏の女人方は静観する構えなのでしょう。女房達の思惑はそこで一つ外れてしまいましたが、公卿達に噂をばら撒いて元後涼殿の更衣様の評判を落とすことは成功しています」
後宮内の勢力争いってエグイ。
それとも桐壺の更衣付の女房が卑劣過ぎるのかな?
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