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元宰相side
しおりを挟むやはり、自分の家の領地となると愛着はひとしおじゃ。退職金をせしめてきたのは間違いなかったのぉ。これほど役に立つとは思わんかった。これなら五年もせんうちに王都と同レベルの生活水準に持っていけるというものじゃ。
元々、我が領の民間レベルは高い方じゃった。それでも王都には負ける。じゃが、上の者が本気で動けばあっという間に追いつくもの。最近では近隣の領主が我が領地の著しい発展を目の当たりにし、併合を申し込んできた。クックックッ。儂は国王ではないので併合は出来ん。そのような権利はないからのぉ。しかし、“抜け道”というものは存在しておる。
領主が困窮のために領地を他の貴族に売り渡す――
これは領民の生活を守るために設置された法でもある。
そのため購入する側は高値で買わねばならず、金額も指定されている。売る側が不利にならないための措置じゃ。それも貴族が貴族に売る事しか許されない。裕福な庶民は金で爵位を買う。それは良い。ただ、成り上がりの中には質の悪い者もいる。そんな連中に詐欺同然で領地を奪われないための法でもあったが、まさか、自分自身がそれを利用する日がこようとは思わんかった。人生何が幸いするか分からん。
『本当に宜しいのですか? 我が領は湿地帯が多く土地がやせ細っています』
『毎年、川の氾濫が酷いのです。新しい事業の目途も立たない有り様で……』
『鹿や猪が田畑を荒らして……最近では領民の被害も相次いでおります』
新たに手に入れた土地は領主達が言っていたように旨味がない土地じゃった。売りたくとも買い手が無かったのじゃろう。相場の倍の値段で購入すると伝えると逆に恐縮しておった。
確かにデメリットばかりの土地じゃ。買い手もつかん。要は土地にあった開拓をしていけば良いだけの話。数年は赤字続きになるが長期戦で考えれば黒字になる。その結果が周りの地域にも良い影響を与えてくれるじゃろう。
難しいのは土地ではない。
領民の方がもっと厄介じゃ。食うに困って犯罪に手を染めた者達。家族を養うために山賊になった者までおる。兎に角、新しい土地の住民は荒くれ者が多い。まるで暴れ馬の如し……安心せい!儂は乗馬は得意中の得意じゃ!必ず飼いならしてくれようぞ!
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