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第8話政略結婚3
しおりを挟む結婚後、始めての夜会です。
私は伯父のエスコートで王城を訪れました。
本来なら、エスコートの役目は夫であるジョアンがするべきなのですが赤毛の愛人が寝込んでいるらしく「看病が必要だ」とエスコートを断わってきました。伯父一家は呆れ果てていました。私との離婚を未だに諦めていないようですが、離婚できたとしても侯爵家でのジョアンの居場所はもうないでしょう。
会場に入りますと、何故かジョアンがいました。欠席するのではなかったのですか?隣には赤毛の女性が居ました。特徴的な赤い髪には見覚えがあります。恐らく愛人の准男爵令嬢でしょう。
「あの馬鹿が」
伯父様は今にも射殺しそうな目でジョアンを見ています。
「伯父様、落ち着いてください」
「フアナ……。あの馬鹿がすまん」
私の声で少し落ち着いた伯父様と共にジョアン達を観察する事にしました。すると、どうでしょう。ジョアンは「妻が急病で臥せっているんだ」と言っているではないですか。「代わりに愛する女性を連れてきた」と臆面もなく宣っています。よくもまあ、あのような嘘八百を並べられるものです。ある意味で感心してしまいます。
それに、よく見ると赤毛の愛人はジョアンの『色』を身につけていました。
金とアクアマリンの首飾り。
ジョアンの金髪と青い目をイメージしての事でしょう。
横にいる伯父様も気付いたようで今にも飛び掛かっていきそうな雰囲気で困ってしまいます。
それに、気付いたのは私達だけではありません。他の人も感づいたようで、年配の方はジョアンと赤毛の愛人を白い目で見ています。
「何ですの? あの非常識な二人は」
「アウストラリス伯爵家に婿入りした男だろうに。新妻を放っておいて何をしているんだ? 相手の女は誰だ? 貴族位の者か?」
「先ほど聞こえましたけど『愛する女性』とか言ってましたわよ。新婚早々に愛人を夜会に連れ込んでくるとは何と無礼な」
「まあ。相手の女性も恥を知らない方のようですわね」
「全くだ。伯爵家の婿は何を考えているんだ」
ヒソヒソと二人に対する評価が聞こえました。
ジョアン達には聞こえていないのでしょうか?
二人の世界に入り込んでいるようで、甘い空気を放っています。
でも、そろそろ周りに目を向けないと大変な事になりますわよ。ジョアンの友人達は自分達に向けられている厳しい目に気付いて二人からそそくさと離れ始めているのですから。本当に困った方達ですね。
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