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~第三章~

65.最悪の結婚式2

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 王女が入場した瞬間の出来事は修羅場の一言に尽きた。
 もうそこから僕は考えるのを止めた。放棄したと言ってもいいだろう。だって訳分かんないんだもん!! 

 国王の隣に居た僕目掛けて……ではなく、何故かに向かって走りながら王女は叫んだ。

「サビオ!待っていたわ!!」

 どうしてそこで僕の名前を出すんだ!!?

「信じてた!!」

 何を!?

「私を迎えに来てくれるって!!」

 はぁ!?
 感極まった感じの王女は褐色髪の男性に飛び掛かった。が、当然、そう上手くはいかないのが世の常だ。男性の近くにいた貴族がとっさの判断で間に入り王女を捕まえた。すると、王女は奇声を発っしながら褐色髪の男性に向かおうと暴れ出した。護衛の騎士が王女を取り押さえたので、彼女は、前に進む事はなかった。

「サビオ!サビオ!!私を助けにきたんだわ!そうでしょう!?やっぱり貴方なら来てくれるって思ってた!」

 いやいやいや!それはないからっ!!
 そもそも君が突進しかけてる男は僕じゃないでしょう!?完全に人違いだよ!?見なよ!褐色髪の男性なんて白目で意識とんだっぽい!
 しかし王女は彼を完全に僕だと本気で思い込んでいるようで……その目には薄っすらと狂気の光りが見えていた。
 怖い。
 客観的に見ても怖すぎる。

 ……結婚式に参列したというよりもホラーの世界に迷い込んだ気がしてきた。


 結婚式の会場はざわついた。
 それはそうだろう。王女が乱心したんだ。

「何だったのでしょうか?アレは……」

「何か呪いの類でも受けたのではないか?」

「そうかもしれませんわね」

 参列者達の顔色は一様に悪かった。中には気絶している女性もチラホラいる程に。無理もない。アレはホラーだったから。寒気すら覚えるよ。
 こんな最悪の状況下で爆笑寸前なのは隣の陛下だけだろう。
 陛下は口元を隠しながら必死に声を押し殺すのを頑張っているようだけど……肩が小刻みに震えているので丸解りであった。

 ざわつく会場を落ち着かせるためか、宰相は「王女殿下は度重なる心労で精神状態がおかしくなっていますから、暫くの間隔離致しますのでご了承いただきたい」と言い放った。そして神官達が気絶した女性のケアをしているが皆んな真っ青に震えている。
 いつの間にか祭壇にいた新郎は、会場を出ていったようだ。もう完全に結婚式の雰囲気ではない。
 有耶無耶なまま……本当に有耶無耶な感じのまま新郎新婦なしの結婚式が行われ、最後にアンハルト王国の国王と宰相による挨拶で結婚式は終了となった。
 そして参列者達は皆んな青い顔をそのままにして会場を後にしたのだった。



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