上 下
44 / 87
~第二章~

43.閑話1

しおりを挟む
 精霊界の奥深く、精霊王の住む城が存在している。


「精霊王、黒の妖精が……」

「また人間界を見ているのか?」

「はい……」

「まぁ、そのうち飽きるだろう」

「それを言い続けて十数年が経ちます」

「……」

 何も言えない。
 本来、妖精は悪戯好きの気分屋だ。
 好き嫌いが異常に激しい。その分、興味を持っても長続きしない。夢中になっても一時の事だった。

 それが、まさか……ここまで夢中になるとは……。


「そろそろ対策を立てるべきかと」

「うむ……」

「今は何も起きていませんが、これから先の事は分かりません」

「うむ……」

「人間達の間ではが多発しております。例の子供がそれに巻き込まれないとも限りませんし、何よりも信仰の対象になる恐れもあります」

「うむ……」

「精霊王、ご決断を!」

「…………」

 そう急かすな。私だって迷っているのだ。
 例の子供。
 彼は、今のところ特に問題を起こしている訳ではない。だが、あれだけの祝福を与えられた存在が人間の世界に留まっている。それが問題だった。

 どうしたものか。

 あの子供は理性的だ。驚くほどに。

 それでも道を踏み外さないとは限らない。
 いや、子供が問題なくとも周囲に与える影響は絶大だ。
 現に、子供の高い能力に目を付けた人間の欲望は計り知れない。子供を利用しようと企む汚い人間達。実に問題だ。

 ただ……子供を守ろうとする人間もいる。

 欲深い人間だけではないようだ。

 それでも子供をこちら側の世界に保護するのを躊躇するのは、黒の妖精の異様なまでの子供への執着心だ。あの時のようにベッタリになるのではないかとの懸念がある。

 子供は十五歳になった。
 こちら側に来させるにはギリギリの年齢だ。
 稀に大人になっても来れる場合もある。例の子供はどうだろうか。見た限りでは精神年齢が高い。
 
 はぁ……どうしたものか。
 こればかりは私一人で決定する事はできない。

 精霊王達の意見を聞くか。
 彼らもこの件について気にしている様子だしな。
 仕方がない。一度、招集しよう。



 本当にどうしてこうなったのか。



しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

最初に抱いた愛をわすれないで

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:213pt お気に入り:2,744

【完結】義姉の言いなりとなる貴方など要りません

恋愛 / 完結 24h.ポイント:788pt お気に入り:3,539

霊姦体質

BL / 連載中 24h.ポイント:106pt お気に入り:104

【完結】モブなのに最強?

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,455pt お気に入り:4,564

不誠実な旦那様、目が覚めたのでさよならです。

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:97,734pt お気に入り:2,414

転生少女は異世界でお店を始めたい

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:5,468pt お気に入り:1,720

死に戻り令嬢は、歪愛ルートは遠慮したい

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:10,039pt お気に入り:173

処理中です...