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美しい棘
【 1 】 焦燥
しおりを挟む「 …… 君 、だれぇ?」
聞き覚えのない、
ケンの優しい声に、
美咲は ゆっくりと顔を上げた 。
泣き腫らした顔 で 。
「 はじめまして!
俺は 、ケンだよ!
アンジュちゃんの、お友達だよ♪」
可愛らしい笑顔を向けて、
ケンは美咲にそう言った 。
お友達 、じゃねぇ 。
だけど、ケンの笑顔を見ていたら、
いちいち否定するのが馬鹿らしくて、
止めた 。
アタシは、
美咲のそばまで歩いていく 。
「 …… どうした?何かあった?」
アタシの顔が無表情な事に、
ケンが気付く 。
さっきまで、
焦っていたアタシを見ていた彼は、
不思議そうな顔をしていた 。
そんな彼の視線に気付き 、
「 何 ?」と、
アタシは無表情を変えずに聞く。
「 さっきと、全然違うなー!
と、思ってさ!」
彼は大きな声をわざと出して、
美咲の目の前に しゃがみこんだ。
「 …… ん?何がぁ~?」
美咲は、
涙の残ったまつげを拭いながら、
すぐ目の前で微笑むケンを見る。
「 んー、…… さっきまでね、
アンジュちゃんね」
ケンの言い出しそうな言葉が、
すぐに解ったアタシは 、
「 うるせー!喋んな!」
と言って、慌てて、
ケンのしゃがんでいる背後から、
彼の口を塞いだ 。
ケンは、
アタシに口を塞がれたまま、
お構い無しに話し続ける 。
アタシの手のひらで 、
彼の口が動いてる 。
" さっきまで 、ずっと 、
君を探していたんだよ 。"
アタシの手のひらに 、
美咲には聞こえるはずのない言葉が、
アタシには、ちゃんと 、
伝わってきた 。
ずっと 、
君を 探していたんだよ 。……
アタシ も 、
そんなふうに、誰かに 、
言われる日が 、
くるのかな …… ?
こないだろうな、たぶん…… 。
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