番外編 ダークサイド

浮き足立ち

【 １０ 】 差し伸べる手

「 えっ？！」


暗い店内で、
よく見えないケンの顔を、

アタシは、
一歩ずつ彼に近づきながら、

まじまじと眺める 。



       「 俺 、２５歳だもん！」



        ６歳も、年上かよっ！！



「 見えないっ！ 嘘だろっ？！」


美咲の２７歳にも驚かされたけど、

それと同等 … 、いや 、

それ以上の衝撃かもしれない 。


メイクもせず、すっぴん で 、

高校生に見える２５歳って… 。



「 だから、俺に興味持ってよ♪」


ケンは、
人懐っこい笑顔を浮かべる。

嫌みのない言い方 。


張り詰めた気持ちが、

少しだけ落ち着くような… 。


「 … いやっ、


そんな事 話してる場合じゃない！」


アタシは出口の方にまた振り返り、

足早にヒールを鳴らしながら、


お店の階段を駆け降りた 。


後ろから、

アタシと同じ歩調で向かってくる、

足音が聞こえる 。


軽く振り返ると 、

ケンが、アタシについてくる 。


「 もうっ！

なんで、ついてくんだよ！

子犬かよっ！」


アタシが大声を出して、

呆れ顔をしながら、手で払う。


「 子犬！！(笑) 

いいね、子犬！ ワンッ♪ワンッ♪」


ケンは笑いながら、

気にしない感じで、ついてくる。


思わず、つられて笑ってしまった。



       テル とは また違う 、


       憎めない … 、あどけなさ 。



階段を降りきって、

アタシは店の前で左右を確認する。



少し離れた場所で 、


美咲が地面に座りながら、

顔を両腕で隠して、

うずくまっていた 。



「 みっ」

彼女を見つけた瞬間 、



      「 どうしたの？ 大丈夫 ？」


ケンが、

アタシよりも先に、


美咲のそばまで走り寄っていった 。



アタシは不意を突かれた、

ケンの その行動に 、


今までアタシを取り巻いていた、

空っぽな男達とは違う何かを、


強く 感じていた 。




          本能 、とやらで 。