草履とヒール

九条 いち

文字の大きさ
25 / 27

6-4

しおりを挟む
 乳首を舐めようと出していた舌を止めてこちらを見る通政さん。卑猥な光景に思わず顔を覆う。
「ゆっくり、してください……」
「ああ」
 蜜口に彼の猛りが再び当てられる。
「えっ、もう? んぁあ!」
「大丈夫だ。ゆっくり掻き回してやる」
 通政さんの肉棒が精液と絡まり、卑猥な音を出してナカを犯していった。


****


 油を敷いた小皿を有明行灯に入れ、火を灯す。和紙越しの炎が辺りを微かに照らす。眠りを誘うような優しい光だ。
 椿が布団から起き上がり、目を擦る。彼女の猫のような愛らしい仕草を見つめる。ずっと見ていられるな。
 俺は彼女の元に行き、隣に座った。
「ありがとうございます。何から何までしていただいて」
「気にするな。無理をさせたのは俺だからな。腰は大丈夫か?」
「はい……」
 先ほどの行為を思い出したのだろう、椿の頬が少し赤くなる。椿の腰元に手を寄せて、軽くさする。
「後でマッサージしよう」
「そんなっ。…………やっぱりお願いします」
「ああ、了解した」
 だいぶ甘えてくれるようになった彼女のもつれた髪に指を通して整えていく。気持ちいいのか椿は目を瞑っていた。
「どうしてあの時ついてきてくれたんだ?」
「いつですか?」
「江戸に戻る時だ。生死の保証も無いし、無事に辿り着いたとしても家族どころか知り合いもいない。椿にとっていいことはなかっただろう」
「通政さんがいましたよ?」
 椿は目を開いて俺に優しく微笑みかける。
「っ……。そうか」
 胸の鼓動が速くなる。彼女のこういう所は嬉しいが心臓に悪い。椿は行灯を見ながら続けた。
「通政さんについて行かなかったら、元の生活に戻れると思いました。友達や家族とも会える、以前の幸せな生活……」
 彼女の瞳に橙の光が入り込む。遠くを見つめる彼女は昔を懐かしんでいるように見えた。
 俺が彼女の幸せを奪ってしまった。身勝手な行動だと自覚はしていた。だが彼女の口から直接告げられると想像以上に胸が締め付けられた。
「すまなかった」
 俺のわがままで彼女の未来を奪ってしまった。彼女の目を見ることができない。
 彼女は笑って顔を横に振った。
「でも、こうも思ったんです。ついて行かなくても元の生活が前みたいに幸せに感じないんじゃないかって。どこに行っても、誰といても通政さんを思い出してしまう。そしてつらくなる。あそこに残ったって楽しくないんですよ。通政さんと一緒に過ごした記憶がある限り」
 椿が俺の頬を両手で包み込む。彼女の瞳には俺が映っていた。自分の手を彼女の手に重ねる。
「ありがとう」
「こちらこそ。通政さんがいなければこんな幸せな時間があるとは知りませんでした」
 優しく笑う彼女を胸に抱きよせる。
 この小さな身体が俺を支えてくれる。俺を前に進ませてくれる。
 彼女を必ず幸せにすると心に誓った。


 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

再婚相手の連れ子は、僕が恋したレンタル彼女。――完璧な義妹は、深夜の自室で「練習」を強いてくる

まさき
恋愛
「初めまして、お兄さん。これからよろしくお願いしますね」 父の再婚によって現れた義理の妹・水瀬 凛(みなせ りん)。 清楚なワンピースを纏い、非の打ち所がない笑顔で挨拶をする彼女を見て、僕は息が止まるかと思った。 なぜなら彼女は、僕が貯金を叩いて一度だけレンタルし、その圧倒的なプロ意識と可憐さに――本気で恋をしてしまった人気No.1レンタル彼女だったから。 学校では誰もが憧れる高嶺の花。 家では親も感心するほど「理想の妹」を演じる彼女。 しかし、二人きりになった深夜のキッチンで、彼女は冷たい瞳で僕を射抜く。 「……私の仕事のこと、親に言ったらタダじゃおかないから」 秘密を共有したことで始まった、一つ屋根の下の奇妙な生活。 彼女は「さらなるスキルアップ」を名目に、僕の部屋を訪れるようになる。 「ねえ、もっと本気で抱きしめて。……そんなんじゃ、次のデートの練習にならないでしょ?」 これは、仕事(レンタル)か、演技(家族)か、それとも――。 完璧すぎる義妹に翻弄され、理性が溶けていく10日間の物語。 『著者より』 もしこの話が合えば、マイページに他の作品も置いてあります。 https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/658724858

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

処理中です...