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第四章 大型連休は遊園地デートです!?

29話 秘密の男子会《side魔央》 3

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「これと、これ──うん。当たりだ」

 俺はバサッと、ペアで集めたトランプをテープの上に置いた。

「ど、どういうこと……」

 その光景を見て、柚瑠ゆずるが震えた声を出した。

「──神経しんけい|衰弱『すいじゃく》、マオのばんで全部終わっちゃったんだけど!?」
「悪いね。俺、神経衰弱は得意なんだ。忘れてたの? 柚瑠」
「トランプなんて久しぶりだから、忘れてた~!!」
「俺は……、覚えてた」
「なら先に言ってよカイリ!!」
「ほかのをやらないか? いくら黒羽くろばねでも、苦手分野があるはずだ」
「俺、オールラウンダーだから。負ける気しないけど?」
「やってみなければ、わからないだろう」

 バチバチと、天内あまないにらみ合う。
 
「ほらそこ喧嘩しない! じゃ、次はスピード対決にしない?」

 スピードのルールは、手持ちの札を相手より先に0にするというゲーム。
 瞬発力しゅんぱつりょくが求められるから、一瞬の油断が大敵たいてきだ。

 まずは天内と界李かいりの対決。
 始まった瞬間、界李の動きがすさまじいほどに速かった。

「はぁっ……、はぁっ……」
「やった。勝っちゃった」

 天内は息が切れている。  
 それだけ全力でやっても、界李の動きがはやすぎて追いつけなかった。

 いつも眠たげで、ゆっくり動く界李。
 でもいざというときは、速いんだよねぇ。

「これは、俺でもちょっと勝てないかも。界李、スピードそんなに上手かったっけ?」
「なんでか知らないけど……、上手くなったみたい?」
 
 スピード対決は、界李の圧勝だった。
 対決を見ていた柚瑠は、涙目でギャンっとえる。

「ナニソレ! こんなの勝てるわけないじゃん! ボクが勝てるやつは、ほかにないのっ!?」

 うーん。
 柚瑠でも勝てそうなものかぁ……。

「ババ抜きはどう? あれは運もあるし」
「それだっマオ!」

 ふがー、と鼻息が荒い柚瑠。

 ──第三戦目。
 負けられない戦い、ババ抜きが始まった。   
 俺から時計回りに、柚瑠、天内、界李の順番でカードを引いていく。
 俺が一枚引くたびに、柚瑠は緊張した顔をする。

「柚瑠、わかりやすすぎ」
「ええっ!?」
「全部顔に出ているぞ、ひいらぎくん」
「うそっ? 顔をひきしめなきゃ」

 順調にババ抜きが進んでいく。
 俺が一番で抜けて、次に界李が抜ける。
 残ったのは、柚瑠と天内だ。

 天内の手元には一枚、柚瑠はあと二枚のカード。
 柚瑠が持っている右のカードを天内がつまむと、柚瑠はホッとした顔をする。
 次に左のカードをつまむと、今度は青ざめた。

 ……これは、勝負あったかな。
 あちゃー、と俺は目を閉じた。

「……ジョーカーを引いてしまった」
「よしっ! まだボクが勝てるかも!」

 驚いて目を開けると、天内の手にはジョーカーが。
 天内は、わざとジョーカーを選んだようだ。
 二枚になったカードをシャッフルする天内。

「どっちにしよう……。決めた、こっちに……」
「──柊くん、後ろに何かいるぞ」
「へ? ……何もいないじゃん、騙したでしょミカド」
「すまない、見間違いだったようだ」


 ……今、天内は柚瑠が引こうとしていたカードを、柚瑠が視線を外した隙に、隣のカードと変えた。
 まさか……と思ったが、言わないでおく。

 ぶくりと頬を膨らませた柚瑠は、気を取り直してカードを引く。
 柚瑠が引いたカードは……ハートの五。

「──僕の負けだ」
「……やったー! 見てた? ボク勝ったんだけど!」

 ……天内は、わざと負けてあげたらしい。
 まぁそれがわかったところで、喜んでいる柚瑠にあえて言うつもりはないけどね。
 満足げな柚瑠は、よいしょ、と立ち上がった。
  
「ボク、ちょっとトイレ行ってくるねー」

 ルンルンと飛び跳ねながら、柚瑠は部屋を出ていった。
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