63 / 84
63.運命の時
しおりを挟む
「イーライ。今からお前を死刑に処する事にするが、死に際に下手に渋って抵抗されて見苦しいものを見るのも、苦痛のあまり暴れられるのもこちらとしては望んでいない。お前のせいでこちらが何らかの被害を被るなんてごめんだからな! だから、念のための対策として、抵抗する力を削ぐ為に魔力封じの魔道具をつける。魔道具を付ける際に抵抗でもしてみろ、無駄に苦しむ事になるのはお前の方だからな!」
そう言ってのけた王太子がキザったらしい動作で大きく音を立てて指を鳴らすと、どこからか現れた侍従達が次々に俺の体に魔道具を取り付けていく。その手つきは酷く乱暴で、魔道具を取り付けられてんだか小突かれてんだか分からない有様だ。やれやれ、そんな事してもそっちの手元がブレて作業がもたつくだけだろうに。ぶっ叩かれる俺を見て視覚的効果で自分が楽しむ為にやっているのならいざ知らず、魔物に生身で立ち向かう俺が小突かれたくらいで心身にダメージを負うと本気で信じてやっているのなら、頭の出来を疑われるぞ。
でもまあ、今際の際に絶命の苦しみでウッカリ聖魔力が溢れ聖魔法が暴走する……。そのせいで周囲一帯更地状態。なんて事になってしまうのは、俺も本意ではない。こんなちゃちな魔道具で俺の膨大な魔力を全て完璧に抑え切れる訳もないが、それでもないよりマシだろう。俺は粛々と首輪やら手錠やら足枷やらを付けられていくのを受け入れる。暫くすれば、身体中に魔道具を付けられ魔力的にと言うより身体的に制限がかけられた状態の俺の完成だ。
「さて、これで準備は整った。これでようやくお前というこの上なく煩わしい存在を、永遠に消し去る準備ができた。王太子であるこの私を襲ったんだ。本当なら極限まで呵責を加えてから殺してやりたいが、時間もないしこれまで立てたちんけながらも功績の積み重ねを鑑みて、一思いに死なせてやろう。代々我が王家に伝わる、滅殺刑でな!」
「滅殺刑、ですか?」
「聞いた事がないようだな? それも当然だろう。滅殺刑は我が王家に伝わる秘術中の秘術。複数人で練り上げた強力な魔法をぶつけ、対象を文字通りこの世から完全に滅殺する高度な魔法なのだから!」
やけに仰々しい名前の割に聞いた事のない刑罰だなと思ったら、それも当然だった。要は王家に都合の悪い人間に多大な魔力を食らわせ秘密裏に滅する特例に、そんな餓鬼臭いハッキリ言ってセンスのない名前をつけて悦に浸っているだけらしいのだから。そんな表に出せないくらいの横暴に名前をつけて体裁を整え、内輪の間のみでカッコつけてるのだ。外野の俺が知る訳もない。身も蓋もない言い方をしてしまえば、男児が拾った棒を振り回しつつオリジナルの技名を叫んで友達とはしゃいでるのと同じ理屈である。死が目前に迫り緊張感があるべき切羽詰まった状況なのに、聞いてるだけでズッコケて肩の力が抜けてしまいそうになるな。まあ、俺は自分がちゃんと死ねさえすればそれでいい。ちゃんと結果さえ伴っていれば、そこに至るまでの過程なんてどれだけ変だろうがおかしかろうが、許容の範囲内だ。
したり顔の周囲に引っ立てられるのに従い、俺は部屋の中央へと歩み出す。そこにはこれから行う魔法の効果を高める為らしき、複雑な魔法陣が大きく書き出されていた。俺は丁度その中央に立たされて、ここを動くなと言い含められる。どうやらここで俺に、その滅殺刑とやらを施すらしい。
メインの魔法陣の周囲を取り囲むようにして、術者と思しき人間達が人垣の中から進み出て立ち位置を確かめていく。補助でもするのか、野次馬らしき残りの人間達も次々にどこからか取りだした術具を手にとっていった。どうやらこの部屋にいる人間全員の魔力を練り合わせて俺を消す魔法を発動させるつもりのようだ。
ふむ……。かなり大掛かりな魔法だな。きっと成功すれば、流石の俺も後には骨一欠片、髪の毛一筋残らないだろう。まあ俺は魔力が強いから、それ即ち生来携わった防御力も高い。万が一を考え、少しも生存の可能性も残さぬように念には念をという事なのだろう。大仕事だとは思うが、下手に慢心されて手を抜いたら生き残っちゃいました……なんてのよりはいいか。
俺を助けようとして捕らえられてしまった人達は今頃どうしているだろうか。貴族で温室育ちが多いだろうし、獄中の劣悪な環境で体調を崩したりなんかしていないといいのだけれど。でもまあ、俺が死にさえすれば開放される契約だから、後少しの辛抱だ。それまでどうか、耐えて欲しい。
どうせこんな事は今回切りで、俺という弱みがなくなればきっと彼らがしてやられる事はもうないだろう。ヨシュアの身内ならそこら辺はやり手だろうし、その方面ではもう心配はないと思う。なにかまた王太子との間に揉め事があろうとも、ヨシュアを筆頭に優秀な人達ばかりだから、これから先遅れを取る事は絶対になさそうだ。文をつけられたって、今度はきっと、返り討ちにできる筈。本当に、助かる気のない俺なんかの為に無駄な苦労をさせてしまって、俺はどこまでも皆に対して申し訳ない気持ちで一杯だった。
「さあ……始めるぞ」
愉悦を全面に滲ませた王太子か刑の執行開始を告げる。部屋のそこかしこで参加者達が呪文を唱え、それぞれ魔力を出力し練り上げ始めた。魔力の濃度が高まり空気がバチバチと弾け、薄暗い室内がボウッと明るく照らされる。
俺に向けられる攻撃的でトゲトゲしい魔力の存在感が増すのに伴い、途方もない殺意と敵意が部屋の中に満ちていった。俺はそれ等をなんの感慨もなくただ眺め、感じている。戦場でいつも手の届く場所にあった死が、今度こそ逃れようのない所まで迫ろうとしていた。終わりの時を前にしても、走馬灯は巡らない。代わりと言ってはなんだが、なんとはなしにこれまでの事を自主的に想起した。
苦しみに満ちていた前半生。俺にはどうしようもない周囲から押し付けられる様々な事情を前に、挫折と諦念ばかりが支配していた。そしてそれに続く1度目の後半生。誰の理解も得られず、優しさもなく、俺はどこまでも孤独だった。何も得られないままただただ奪われ続け、それで最後には追い詰められて死ぬところまで至ったんだっけ。世に溢れるお涙頂戴物語の登場人物達もドン引きの悲惨さだな。
しかし、2度目の後半生。そこからは全てが様変わりした。俺の勝手で酷い事情に巻き込んだだけだったのに、ヨシュアはこんな俺にどこまでも親切にしてくれ、沢山助けられたしどれ程その献身に心が軽くなった事か。その真心に触れる内に、いつしか俺はヨシュアの事を好ましく思うようになっていた始末。我ながら凄くチョロい。
でも、ヨシュアの事を好きになれて、良かったと思う。確かにこの思いが報われる事はないが、それでも俺は好いた相手と少なくない優しい時間を過ごす事ができたのだから。欠けた人間なりに、その気持ちに気がつけてよかった。
有難う、ヨシュア。俺は今こんなにも満たされていて、幸せだ。お前がくれた全てが、俺の中で暖かく息づいている。それを味わえただけでも、この2度目の人生は意味があったよ。2度目の人生、ほんの少しだけだったかもしれないけれど、お前と生きられてよかった。
女神様、もうやり直しの機会は与えて下さらなくていいですよ。こうして2度目に与えられ過ごした時間は、かけがえなく替えのきかないものだったから。俺はもう満足してる。元々生に執着はないし、これ以上は手に入ったものを自分の不出来のせいで壊してしまわないか怖くなるだけた。1度目の人生の終わりのように、偉業を果たしてめでたしめでたしの後に不幸な続きを迎えるくらいなら、こうして幸せなまま終わらせよう。死出の餞には十分だ。
充足感に浸っていると、周囲の唱える呪文が佳境に入ってきた。辺りを満たす魔力が高まり張り詰めた空気の緊張感はこれまでにない程に高まっている。……いよいよその時が来たらしい。ボンヤリとしながら王太子の方を向けば、悲願の達成を目前にして高揚した様子の表情が目に飛び込む。どこまでも冷めきっている俺とは違い、向こうは今、気分が最高潮なようだ。最後に見る景色がそんなものではあれなので、少し迷ってから目を閉じる。思い浮かべ眼裏に写すのは、いつか見たヨシュアの笑顔だ。優しさが溢れる程に込められた眼差しを一心にこちらに注ぐその姿を思い出していると、姿だけでなく今にも彼の声まで聞こえてきそうで……。
「イーライ!」
「……は?」
そう言ってのけた王太子がキザったらしい動作で大きく音を立てて指を鳴らすと、どこからか現れた侍従達が次々に俺の体に魔道具を取り付けていく。その手つきは酷く乱暴で、魔道具を取り付けられてんだか小突かれてんだか分からない有様だ。やれやれ、そんな事してもそっちの手元がブレて作業がもたつくだけだろうに。ぶっ叩かれる俺を見て視覚的効果で自分が楽しむ為にやっているのならいざ知らず、魔物に生身で立ち向かう俺が小突かれたくらいで心身にダメージを負うと本気で信じてやっているのなら、頭の出来を疑われるぞ。
でもまあ、今際の際に絶命の苦しみでウッカリ聖魔力が溢れ聖魔法が暴走する……。そのせいで周囲一帯更地状態。なんて事になってしまうのは、俺も本意ではない。こんなちゃちな魔道具で俺の膨大な魔力を全て完璧に抑え切れる訳もないが、それでもないよりマシだろう。俺は粛々と首輪やら手錠やら足枷やらを付けられていくのを受け入れる。暫くすれば、身体中に魔道具を付けられ魔力的にと言うより身体的に制限がかけられた状態の俺の完成だ。
「さて、これで準備は整った。これでようやくお前というこの上なく煩わしい存在を、永遠に消し去る準備ができた。王太子であるこの私を襲ったんだ。本当なら極限まで呵責を加えてから殺してやりたいが、時間もないしこれまで立てたちんけながらも功績の積み重ねを鑑みて、一思いに死なせてやろう。代々我が王家に伝わる、滅殺刑でな!」
「滅殺刑、ですか?」
「聞いた事がないようだな? それも当然だろう。滅殺刑は我が王家に伝わる秘術中の秘術。複数人で練り上げた強力な魔法をぶつけ、対象を文字通りこの世から完全に滅殺する高度な魔法なのだから!」
やけに仰々しい名前の割に聞いた事のない刑罰だなと思ったら、それも当然だった。要は王家に都合の悪い人間に多大な魔力を食らわせ秘密裏に滅する特例に、そんな餓鬼臭いハッキリ言ってセンスのない名前をつけて悦に浸っているだけらしいのだから。そんな表に出せないくらいの横暴に名前をつけて体裁を整え、内輪の間のみでカッコつけてるのだ。外野の俺が知る訳もない。身も蓋もない言い方をしてしまえば、男児が拾った棒を振り回しつつオリジナルの技名を叫んで友達とはしゃいでるのと同じ理屈である。死が目前に迫り緊張感があるべき切羽詰まった状況なのに、聞いてるだけでズッコケて肩の力が抜けてしまいそうになるな。まあ、俺は自分がちゃんと死ねさえすればそれでいい。ちゃんと結果さえ伴っていれば、そこに至るまでの過程なんてどれだけ変だろうがおかしかろうが、許容の範囲内だ。
したり顔の周囲に引っ立てられるのに従い、俺は部屋の中央へと歩み出す。そこにはこれから行う魔法の効果を高める為らしき、複雑な魔法陣が大きく書き出されていた。俺は丁度その中央に立たされて、ここを動くなと言い含められる。どうやらここで俺に、その滅殺刑とやらを施すらしい。
メインの魔法陣の周囲を取り囲むようにして、術者と思しき人間達が人垣の中から進み出て立ち位置を確かめていく。補助でもするのか、野次馬らしき残りの人間達も次々にどこからか取りだした術具を手にとっていった。どうやらこの部屋にいる人間全員の魔力を練り合わせて俺を消す魔法を発動させるつもりのようだ。
ふむ……。かなり大掛かりな魔法だな。きっと成功すれば、流石の俺も後には骨一欠片、髪の毛一筋残らないだろう。まあ俺は魔力が強いから、それ即ち生来携わった防御力も高い。万が一を考え、少しも生存の可能性も残さぬように念には念をという事なのだろう。大仕事だとは思うが、下手に慢心されて手を抜いたら生き残っちゃいました……なんてのよりはいいか。
俺を助けようとして捕らえられてしまった人達は今頃どうしているだろうか。貴族で温室育ちが多いだろうし、獄中の劣悪な環境で体調を崩したりなんかしていないといいのだけれど。でもまあ、俺が死にさえすれば開放される契約だから、後少しの辛抱だ。それまでどうか、耐えて欲しい。
どうせこんな事は今回切りで、俺という弱みがなくなればきっと彼らがしてやられる事はもうないだろう。ヨシュアの身内ならそこら辺はやり手だろうし、その方面ではもう心配はないと思う。なにかまた王太子との間に揉め事があろうとも、ヨシュアを筆頭に優秀な人達ばかりだから、これから先遅れを取る事は絶対になさそうだ。文をつけられたって、今度はきっと、返り討ちにできる筈。本当に、助かる気のない俺なんかの為に無駄な苦労をさせてしまって、俺はどこまでも皆に対して申し訳ない気持ちで一杯だった。
「さあ……始めるぞ」
愉悦を全面に滲ませた王太子か刑の執行開始を告げる。部屋のそこかしこで参加者達が呪文を唱え、それぞれ魔力を出力し練り上げ始めた。魔力の濃度が高まり空気がバチバチと弾け、薄暗い室内がボウッと明るく照らされる。
俺に向けられる攻撃的でトゲトゲしい魔力の存在感が増すのに伴い、途方もない殺意と敵意が部屋の中に満ちていった。俺はそれ等をなんの感慨もなくただ眺め、感じている。戦場でいつも手の届く場所にあった死が、今度こそ逃れようのない所まで迫ろうとしていた。終わりの時を前にしても、走馬灯は巡らない。代わりと言ってはなんだが、なんとはなしにこれまでの事を自主的に想起した。
苦しみに満ちていた前半生。俺にはどうしようもない周囲から押し付けられる様々な事情を前に、挫折と諦念ばかりが支配していた。そしてそれに続く1度目の後半生。誰の理解も得られず、優しさもなく、俺はどこまでも孤独だった。何も得られないままただただ奪われ続け、それで最後には追い詰められて死ぬところまで至ったんだっけ。世に溢れるお涙頂戴物語の登場人物達もドン引きの悲惨さだな。
しかし、2度目の後半生。そこからは全てが様変わりした。俺の勝手で酷い事情に巻き込んだだけだったのに、ヨシュアはこんな俺にどこまでも親切にしてくれ、沢山助けられたしどれ程その献身に心が軽くなった事か。その真心に触れる内に、いつしか俺はヨシュアの事を好ましく思うようになっていた始末。我ながら凄くチョロい。
でも、ヨシュアの事を好きになれて、良かったと思う。確かにこの思いが報われる事はないが、それでも俺は好いた相手と少なくない優しい時間を過ごす事ができたのだから。欠けた人間なりに、その気持ちに気がつけてよかった。
有難う、ヨシュア。俺は今こんなにも満たされていて、幸せだ。お前がくれた全てが、俺の中で暖かく息づいている。それを味わえただけでも、この2度目の人生は意味があったよ。2度目の人生、ほんの少しだけだったかもしれないけれど、お前と生きられてよかった。
女神様、もうやり直しの機会は与えて下さらなくていいですよ。こうして2度目に与えられ過ごした時間は、かけがえなく替えのきかないものだったから。俺はもう満足してる。元々生に執着はないし、これ以上は手に入ったものを自分の不出来のせいで壊してしまわないか怖くなるだけた。1度目の人生の終わりのように、偉業を果たしてめでたしめでたしの後に不幸な続きを迎えるくらいなら、こうして幸せなまま終わらせよう。死出の餞には十分だ。
充足感に浸っていると、周囲の唱える呪文が佳境に入ってきた。辺りを満たす魔力が高まり張り詰めた空気の緊張感はこれまでにない程に高まっている。……いよいよその時が来たらしい。ボンヤリとしながら王太子の方を向けば、悲願の達成を目前にして高揚した様子の表情が目に飛び込む。どこまでも冷めきっている俺とは違い、向こうは今、気分が最高潮なようだ。最後に見る景色がそんなものではあれなので、少し迷ってから目を閉じる。思い浮かべ眼裏に写すのは、いつか見たヨシュアの笑顔だ。優しさが溢れる程に込められた眼差しを一心にこちらに注ぐその姿を思い出していると、姿だけでなく今にも彼の声まで聞こえてきそうで……。
「イーライ!」
「……は?」
56
お気に入りに追加
348
あなたにおすすめの小説

悪役令息の死ぬ前に
やぬい
BL
「あんたら全員最高の馬鹿だ」
ある日、高貴な血筋に生まれた公爵令息であるラインハルト・ニーチェ・デ・サヴォイアが突如として婚約者によって破棄されるという衝撃的な出来事が起こった。
彼が愛し、心から信じていた相手の裏切りに、しかもその新たな相手が自分の義弟だということに彼の心は深く傷ついた。
さらに冤罪をかけられたラインハルトは公爵家の自室に幽閉され、数日後、シーツで作った縄で首を吊っているのを発見された。
青年たちは、ラインハルトの遺体を抱きしめる男からその話を聞いた。その青年たちこそ、マークの元婚約者と義弟とその友人である。
「真実も分からないクセに分かった風になっているガキがいたからラインは死んだんだ」
男によって過去に戻された青年たちは「真実」を見つけられるのか。
【奨励賞】恋愛感情抹消魔法で元夫への恋を消去する
SKYTRICK
BL
☆11/28完結しました。
☆第11回BL小説大賞奨励賞受賞しました。ありがとうございます!
冷酷大元帥×元娼夫の忘れられた夫
——「また俺を好きになるって言ったのに、嘘つき」
元娼夫で現魔術師であるエディことサラは五年ぶりに祖国・ファルンに帰国した。しかし暫しの帰郷を味わう間も無く、直後、ファルン王国軍の大元帥であるロイ・オークランスの使者が元帥命令を掲げてサラの元へやってくる。
ロイ・オークランスの名を知らぬ者は世界でもそうそういない。魔族の血を引くロイは人間から畏怖を大いに集めながらも、大将として国防戦争に打ち勝ち、たった二十九歳で大元帥として全軍のトップに立っている。
その元帥命令の内容というのは、五年前に最愛の妻を亡くしたロイを、魔族への本能的な恐怖を感じないサラが慰めろというものだった。
ロイは妻であるリネ・オークランスを亡くし、悲しみに苛まれている。あまりの辛さで『奥様』に関する記憶すら忘却してしまったらしい。半ば強引にロイの元へ連れていかれるサラは、彼に己を『サラ』と名乗る。だが、
——「失せろ。お前のような娼夫など必要としていない」
噂通り冷酷なロイの口からは罵詈雑言が放たれた。ロイは穢らわしい娼夫を睨みつけ去ってしまう。使者らは最愛の妻を亡くしたロイを憐れむばかりで、まるでサラの様子を気にしていない。
誰も、サラこそが五年前に亡くなった『奥様』であり、最愛のその人であるとは気付いていないようだった。
しかし、最大の問題は元夫に存在を忘れられていることではない。
サラが未だにロイを愛しているという事実だ。
仕方なく、『恋愛感情抹消魔法』を己にかけることにするサラだが——……
☆描写はありませんが、受けがモブに抱かれている示唆はあります(男娼なので)
☆お読みくださりありがとうございます。良ければ感想などいただけるとパワーになります!
期待外れの後妻だったはずですが、なぜか溺愛されています
ぽんちゃん
BL
病弱な義弟がいじめられている現場を目撃したフラヴィオは、カッとなって手を出していた。
謹慎することになったが、なぜかそれから調子が悪くなり、ベッドの住人に……。
五年ほどで体調が回復したものの、その間にとんでもない噂を流されていた。
剣の腕を磨いていた異母弟ミゲルが、学園の剣術大会で優勝。
加えて筋肉隆々のマッチョになっていたことにより、フラヴィオはさらに屈強な大男だと勘違いされていたのだ。
そしてフラヴィオが殴った相手は、ミゲルが一度も勝てたことのない相手。
次期騎士団長として注目を浴びているため、そんな強者を倒したフラヴィオは、手に負えない野蛮な男だと思われていた。
一方、偽りの噂を耳にした強面公爵の母親。
妻に強さを求める息子にぴったりの相手だと、後妻にならないかと持ちかけていた。
我が子に爵位を継いで欲しいフラヴィオの義母は快諾し、冷遇確定の地へと前妻の子を送り出す。
こうして青春を謳歌することもできず、引きこもりになっていたフラヴィオは、国民から恐れられている戦場の鬼神の後妻として嫁ぐことになるのだが――。
同性婚が当たり前の世界。
女性も登場しますが、恋愛には発展しません。


【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺
福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。
目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。
でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい…
……あれ…?
…やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ…
前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。
1万2000字前後です。
攻めのキャラがブレるし若干変態です。
無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形)
おまけ完結済み
【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~
綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」
洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。
子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。
人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。
「僕ね、セティのこと大好きだよ」
【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印)
【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ
【完結】2021/9/13
※2020/11/01 エブリスタ BLカテゴリー6位
※2021/09/09 エブリスタ、BLカテゴリー2位

運悪く放課後に屯してる不良たちと一緒に転移に巻き込まれた俺、到底馴染めそうにないのでソロで無双する事に決めました。~なのに何故かついて来る…
こまの ととと
BL
『申し訳ございませんが、皆様には今からこちらへと来て頂きます。強制となってしまった事、改めて非礼申し上げます』
ある日、教室中に響いた声だ。
……この言い方には語弊があった。
正確には、頭の中に響いた声だ。何故なら、耳から聞こえて来た感覚は無く、直接頭を揺らされたという感覚に襲われたからだ。
テレパシーというものが実際にあったなら、確かにこういうものなのかも知れない。
問題はいくつかあるが、最大の問題は……俺はただその教室近くの廊下を歩いていただけという事だ。
*当作品はカクヨム様でも掲載しております。

アルファな俺が最推しを救う話〜どうして俺が受けなんだ?!〜
車不
BL
5歳の誕生日に階段から落ちて頭を打った主人公は、自身がオメガバースの世界を舞台にしたBLゲームに転生したことに気づく。「よりにもよってレオンハルトに転生なんて…悪役じゃねぇか!!待てよ、もしかしたらゲームで死んだ最推しの異母兄を助けられるかもしれない…」これは第二の性により人々の人生や生活が左右される世界に疑問を持った主人公が、最推しの死を阻止するために奮闘する物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる