伝えたい、伝えられない。

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31.愛情(前編)

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 土曜日。
 午前中に真緒が部屋を訪ねてきた。
 迎えに行くと言ったが、真緒は自分で行くと言い、迎えに行くことはしなかった。
「どうぞ」
 なぜか緊張してしまう自分がいる。
(だって今日は……)
 昨日の続きをしに彼女は来たのだろうから。
 自分が言ったのだ、続きがしたい、だから来て、と。
 真緒の態度も少しぎこちない。
 暑かっただろう、ハンカチで汗を拭っている。
「暑かっただろ。麦茶でいいか? ほら座って涼んで」
 エアコンを入れてはいるが、扇風機を使って効率よくしている。真緒の側に扇風機を置き、当たらせた。
 目を閉じ、風に当たる真緒からいい香りがした。
(髪の香り……)
 夏の間は髪を一纏めにしている。
 うなじが色っぽくて、妙に胸が高鳴る。
 当然薄着なわけで、前にも着ているのを見たことある薄水色のカットソーだが、視線は胸元に行ってしまう。昨日その中身を見てしまったし、隠れた部分を早く見たくなってしまう自分がいた。
(着痩せするんだろうな……)
 麦茶をグラスに注ぎ、真緒の前に出した。
「おかわりもあるから」
『ありがとうございます』
 真緒は手を合わせて、麦茶を口にした。
 半分ほど一気に飲み、濡れた唇をハンカチで拭った。
 艶めいた唇を見ると、心臓がうるさくなる。
 早くあの唇を貪りたい、と本能が騒ぎ出した。
 ふと、グラスを置いてこちらを見た真緒を目が合った。
 ずっと真緒の動きを目で追っていたのだから、どこかしらで合うのは当然だ。
「あ、の……今日は来てくれて、ありがとな」
『…………』
「もう一度、これ、もらってほしい」
 創平はクマのキーホルダーのついたこの部屋の合鍵と、チェーンに通した指輪を差し出した。
『……はい』
 真緒は二つを受け取った。
 彼女は嬉しそうだった。
 鍵をすぐにバッグに入れ、ネックレスはすぐに首につけようとした。
「あ、待って。俺が、付けてもいい?」
 彼女は頷き、一度受け取った指輪とチェーンを創平に渡した。
 創平は真緒の後ろに回り、真緒は一つにまとめた髪を左側に寄せてくれた。
「はい、出来たよ」
『ありがとうございます』
 真緒は胸元を覗き込み、指輪を確認していた。
 彼女の脇の下から手を入れ、背後からぎゅっと抱きしめる。首筋に顔を埋め、肌にキスをした。
「ありがと、もらってくれて」
 うん、とでも言うように真緒は頷いてくれた。
 創平は腰を下ろし、彼女を包むように抱きしめる。真緒の身体は熱い。来たばかりで体温も熱が収まっていないのだろう、この暑さでは当然だと思ったが、抱きしめる腕に力を加えた。
 そして、真緒の手を取り、自分の手の上に重ねさせる。
「こんな俺だけど、また、好きになってくれるか?」
 真緒は頷いた。
「ありがと。俺も真緒ちゃんが好きだ」
 耳にキスをすると、ぶわりと身体を震わせた。
 身体が強ばっているのがわかる。
(あー……ちゃんと、覚悟して来たんだろうな)
 もぞもぞと手を上へと動かし、そっと真緒の両胸を包むと、彼女は俯いた。耳は赤く染まっている。
 耳元に口を寄せ、
「あとで……見せて。今度はちゃんと全部、見たい」
 小声で言った。
 カットソーの裾から手を入れると、上へと這わせていく。
 真緒を後ろから抱きしめているのをいいことに、創平は右手で左胸の下着の中に指を入れ、先端を見つけ出し、くにくにと摘まんだ。
「ほら……先っちょ、もう固くなってる」
 耳元で囁くと、もう真緒の顔が真っ赤になっていた。
「期待してる? 俺に触られるって」
 ふるふる、と首を横に振る真緒が可愛らしく思える創平だ。
「このまま続けたいけど、昼飯、作ってからにしよっか……?」
 入れていた手を出し、真緒の服をぽんぽんと整えた。
「腹ごしらえするか」
 真緒は赤ら顔で頷いた。
「あとでたっぷり可愛がるから」
 真緒から離れると、彼女は両手で顔を覆った。
(これで、主導権は俺のほうだな)

 冷蔵庫に残っているもので、創平はチャーハンを作ることにした。市販の鶏ガラスープの素があったし、卵もある。チャーシューはなかったが、まあ問題はないだろう。ニンニクが入っているわけではないし、スープも作って、真緒と一緒に食べることにした。
「はい、でーきたっと。どうぞ」
『ありがとうございます』
 テレビを見ながら、二人は昼食を摂った。
(しっかり食べとかないと)
 口には出さないが、これから起こることを想定した創平はそんなことを思っていた。
(なんか……やる気満々って思われるかな……)
 真緒は小食だが、創平の作ったチャーハンを美味しそうに食べてくれた。
 後片付けはします、と真緒が言ってくれたので甘えることにした。
 後片付けを終えた真緒が、ローテーブルの元の場所に座ったのを見て、創平はベッドに腰を下ろした。
(いきなりと思われてもいいから、今から……)
 と創平は真緒を呼ぶ。
「こっち来て」
 真緒は立ち上がり、おずおずと創平の隣に座った。
「緊張してる?」
『……』
「昨日の続き、するつもりで来たんだろ?」
 わざとそんな質問をすると、真緒は困ったようだが、頷いた。
「そっか。これからすること、考えて緊張してる?」
 こくん、と素直に頷いたのを見て笑った。
「別に無理しなくていい。昨日は、最後までしたい、って言ったけど、最後までじゃなくてもいよ」
 どうしてですか、と真緒は創平を見た。
「真緒ちゃんが嫌なら出来ないからな。最後までじゃなくてもいいし、真緒ちゃんが許してくれるところまででもいいし」
『わたしは、松浦さんがしたいこと、してほしいです……』
 また真緒の顔が赤く染まってゆく。
『今日は、そのつもりで、います』
 彼女なりに頑張って言ってくれているのだろう。
「可愛すぎだろ……」
 そんなこと言われたら遠慮なく襲うからな、と真緒の身体を抱きしめる。
 身体を倒し、覆い被さった。
 ちゅっちゅっ、と啄むようなキスを落とすと、真緒は目を閉じた。
「駄目だったり嫌だったりしたら、ちゃんと伝えてくれ。俺の手を抓るなり、髪の毛を引っ張るなり、真緒ちゃんなりの方法でいいからな」
 薄く目を開いて真緒は頷いてくれた。
 真緒を広くはないベッドの中央に寝かせ、優しくキスを落としながら、服の上から真緒の身体をまさぐる。布越しに、形や線を確かめるように撫でていたが、本当は早く直接肌に触れたかった。余裕がなくなりつつあるのを悟られまいとした。
 寝かせたまま真緒のカットソーをなんとか脱がせ、下着だけの姿にした。
 大きな胸を包む白いブラジャーに、目がチカチカした。
(エロいな……)
 胸元に顔を寄せ、肌を吸う。少し汗ばんでいるようだ。
 キスの跡が小さくつけられた。
 両肩紐を肩から外し、胸を覆うそれを剥がすようにずらすと、昨日目にした豊満な乳房の全貌が現れた。
 明るい場所で見ると、本当に綺麗だ。
 色も形も大きさも。花のような桃色の輪も。
(極上……っていうのかな)
 この身体を俺のものに出来るのか、そう思うと興奮が収まらない。
 もちろん自分の所有物なんかであるはずがなく、真緒の身体は真緒もので、自分が踏みにじる権利はないが、それでも、許されて彼女の瑞々しい身体に触れられるのだと思うと、昂ぶってくるのだ。
 昨日と同じように、双房の先端を舌先で刺激すると、真緒は顔を背けた。口に含み、じゅぷじゅぷと音を立て、荒々しく口内で転がすと、次第に固くなっていくのがわかる。
 両手で膨らみを包み、柔らかさを堪能しながら、下へと降りていき、その柔らかな身体のあちこちに花びらや痣のような跡を付けた。
 創平が触れた場所は、真緒の身体が艶めかしく光っている。
 スカートの裾から手を入れ、今度は下半身へと創平の手は移動して行く。
 脚の付け根を這い、真ん中へと手を進めていくと、布に到達した。強引に指を侵入させると、しっとりと湿り気を帯びた場所を見つけた。
 ぼうっとして、指を感じていたらしい真緒だったが、ふとそれ以上侵入されまい思ったのか、創平の手を押さえたが、
「止めねえよ。ここも、見せてくれないと。ここでつながるんだから、ちゃんと確認しないと駄目だ」
 観念したのか、創平の妙な説得に、素直に応じてくれた。
「いい子だ」
「……ぁぅ……」
「じゃあスカート、脱ごうか。下着もな」
 すっとスカートを脱がすと、白いショーツが目に飛び込んできた。下着は上下セットのもののようだ。
 布越しに真ん中を指で撫でると、濡れて浸みてしまっているのがわかる。
「汚れる前に脱いだ方がいいな」
 真緒が一瞬抵抗しようとしたが、それより創平の動きのほうが早かった。するすると下着を下ろし、片足だけ抜いて、もう片方の脚に引っかけたままにした。
(お……やっぱ濡れてるな)
 断りを入れ、ゆっくりと指の抜き差しを繰り返し、止めてはナカをかき回す。
 指の動きを再開すると、遮るのもがなくなったせいか、くちゅくちゅと淫靡な音が聞こえた。
「聞こえる? めちゃくちゃエロい音」
 両膝を掴んで、抵抗する太腿を無理矢理割って、顔を近づけた。
 濡れている場所を舌で舐めとると、真緒の腰がびくりと揺れた。
「見せろって」
 閉じようとする両脚をしっかり開かせた後、創平は秘めたその場所を手で開いた。
(ピンク色……)
 ああそうか誰も侵入したことがないから当然だな、と一人納得する。
 真ん中の膨れた場所がヒクヒクと動き、創平の性欲を刺激した。
 舌を這わせ、吸い付き、ナカへ舌を押し入れる。
 すると、ばしばしっ、と創平は頭を軽く叩かれた。
「……どうした、これは駄目か?」
 真緒は嫌がっているのか、と確認するため創平は顔を上げた。
『そんなところ、汚いです』
「汚い……? いや、汚くなんてねえよ。俺の指や舌に興奮してくれてるんだろ。それに、とろとろになってるし」
『お風呂……せめてお風呂に入らせてほしいです、汗かいてるし』
「風呂? 風呂に入りたいって?」
 真緒が恥ずかしそうに頷いたので、仕方ないな、と身体を起こしてやった。
「別に俺は気にしないけど……」
 せっかくここまでしておいて、こんないい雰囲気なのに、と思うが言わないでおいた。
 真緒が気にするなら仕方が無い。覚悟を決めてくれている彼女の言うとおりにしてあげたいと思ったのも本当だ。
「だったら俺も風呂に入らないとな。真緒ちゃんが上がったら、俺も入るよ」
 真緒の頭をぽんぽんと撫でてやった。
 彼女は上半身についたままだったブラジャーと、脚にひっかけたままのショーツを外すと、身体を隠すようにして立ち上がった。
「そのうち湯が出るから、それまでちょっと我慢して。バスタオル、用意しとくから」
 真緒は逃げるようにして風呂場へ向かった。
(可愛い……)
 可愛いからつい意地悪なことを言ってしまう。
 言葉責めもほどほどにしておこう、と決めた。

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