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【第1部】14.条件
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***
「ちょっと、こっち来てくれ」
聡子はベンチの後ろの暗がりへ連れ込まれた。
「あのさ、マジで抱きてえ……」
「約束!」
「わかってる! しない! でも!」
「!?」
街路樹の幹に身体を押し付けられる。
「キスはいいんだよな!?」
至近距離で顔が近づく。唇が触れ合いそうな距離だ。
「え、ええ」
頷いた途端、荒々しく唇を塞がれた。
何度も何度も、貪られ、口内で舌が絡まる。
胸がドキドキする。
今までにもしたことはあったが、トモは「ついで」や「始まりの合図」のような感じでするだけだった。
離れると、双方の息は荒くなっている。
両頬をトモのごつ目の手で包まれ、また塞がれた。
(キスだけなのに、身体が疼いてる……!)
「……ぷはっ……はぁ……」
「……ハァ……ハァ……」
暗がりの中で、トモの瞳が獣のように光っている。
「セックスはだめなんだよな」
こくりと頷く。
「触るのは……いいか?」
聡子は頷いた。が、頭すぐに首を横に振った。
「駄目で」
駄目です、と言い終わらないうちに、またトモが口内を侵す。
シャツの上から両胸を掴まれ、尖端を探し当てられて、布越しでも触れられてからは、頭がぼんやりとしはじめ、裾からの侵入を許してしまった。下着をずらされ、大きな手で揉みしだかれる。
止めようと腕でトモを押し退けようとするが、それよりも強い力で上半身を攻められていくのだ。ついにはシャツを捲りあげられ、トモの前に晒された。隠そうとしても力が弱すぎた。
「こ、こんなところで!?」
「大丈夫、人は来ない」
「来ないって……トモさん、ここでしたことあるんですね」
軽蔑したいのに、しきれない。先にトモが聡子の思考を緩ませた。
「暗くてもわかる、おまえの……綺麗だな」
尖端を親指ではじかれると、身を捩った。
「挿れない、挿れないから」
「でも」
「おまえに会うの久しぶりだし、我慢できそうにない。せめて見たい」
舌で尖端を刺激されれば、電流が走るように痺れていく。
「別の女の人としてたんじゃないですか」
「……してねぇ」
「間があった」
「してねえよ」
「ほんとですか?」
聡子は荒くなる息を抑え、トモを睨む。
「嘘。わたし、髪の短い胸の大きな人と腕組んで夕方に歩いているの見ました」
「いや……一度だけ……した、かな」
川村と出かけた時に見かけたあの女性と、どうやら関係を持ったらしい。
「わたし、二度、女の人と一緒の所をみましたよ。その次は髪の長い人でした」
レイナも一緒に目撃した時のことを思い出す。
「……二度だったかもしれねえ」
どうやらこちらとも関係したようだ。
恐らく二人、二度、だけではない気がした。三ヶ月もしなかったことはない男が、一年近く自分と会わない間に、ましてや毎日誰かと寝る男が、二人だけで済んではいないだろう。
「ほら……」
「でも、俺からじゃねえ、相手が勝手に……。それに、おまえのことばっか思い出して……おまえの身体じゃないとダメだって」
「身体! 身体ですか!?」
最低最低、と聡子は精一杯抵抗した。
胸にトモがむしゃぶりついている。
抵抗はするが、トモの舌が身体を刺激するのは嫌ではない自分がいた。
聡子の手を掴み、トモが自分の猛々しくなっている場所に誘った。
「!」
「我慢してる」
「やっぱりトモさんの女にはなるのやめますっ」
なんとかトモを突き飛ばすことができた。トモはよろめいたが、倒れはしなかった。聡子はシャツの裾を下ろし、その場にしゃがみ込んだ。
「ああっくそっ、なんて言えばいいんだよ!」
彼が悪態をつくように叫ぶ。
「……トモさん、最低っ!」
「だから……おまえがほしいってことをなんて言ったらいいのかわかんねえんだよ!」
聡子はトモを見上げる。
「ずっと会ってない間、確かにほかの女たちと寝た。二人どころじゃねえ。でも、やっぱりおまえがいいってわかって……おまえに会いたくて……」
「ほら、身体じゃないですか……」
「否定できねえけど……でもそれだけじゃねえ、それも含めておまえがいいって気づいたんだよ。おまえの蕩けてる顔とか、下手でも一生懸命俺の咥えてる顔とか、嬉しそうな顔とか、笑う顔とか、泣きそうな顔とか、全部」
「セックスのことばっかりじゃないですか!」
「全部おまえのこと思い出して、おまえがほかの男のものになったかもって思ったらムカついて……もっと大事にしてやればよかったなって思って……」
トモが聡子の手を引き、立ち上がらせた。
「おまえに惚れたって意味だってわかって、どうしようもないんだよ。はじめてなんだよ、こんなの。我慢できねえんだ……」
「……わたし、帰りますね」
聡子は膝や腕の汚れを払った。ずれた下着をこっそり直し、頭を下げた。
「おまえが欲しい」
腕を引かれた。
「セックスしなくてもいい。おまえが欲しい。おまえに俺を見てほしい。俺だけを見て欲しい。俺を好きだって言って欲しい。他の男のものになんかなるな」
ぐいっと、トモの胸のなかに抱き寄せられた。
「ミヅキ、好きだ」
「ちょっと、こっち来てくれ」
聡子はベンチの後ろの暗がりへ連れ込まれた。
「あのさ、マジで抱きてえ……」
「約束!」
「わかってる! しない! でも!」
「!?」
街路樹の幹に身体を押し付けられる。
「キスはいいんだよな!?」
至近距離で顔が近づく。唇が触れ合いそうな距離だ。
「え、ええ」
頷いた途端、荒々しく唇を塞がれた。
何度も何度も、貪られ、口内で舌が絡まる。
胸がドキドキする。
今までにもしたことはあったが、トモは「ついで」や「始まりの合図」のような感じでするだけだった。
離れると、双方の息は荒くなっている。
両頬をトモのごつ目の手で包まれ、また塞がれた。
(キスだけなのに、身体が疼いてる……!)
「……ぷはっ……はぁ……」
「……ハァ……ハァ……」
暗がりの中で、トモの瞳が獣のように光っている。
「セックスはだめなんだよな」
こくりと頷く。
「触るのは……いいか?」
聡子は頷いた。が、頭すぐに首を横に振った。
「駄目で」
駄目です、と言い終わらないうちに、またトモが口内を侵す。
シャツの上から両胸を掴まれ、尖端を探し当てられて、布越しでも触れられてからは、頭がぼんやりとしはじめ、裾からの侵入を許してしまった。下着をずらされ、大きな手で揉みしだかれる。
止めようと腕でトモを押し退けようとするが、それよりも強い力で上半身を攻められていくのだ。ついにはシャツを捲りあげられ、トモの前に晒された。隠そうとしても力が弱すぎた。
「こ、こんなところで!?」
「大丈夫、人は来ない」
「来ないって……トモさん、ここでしたことあるんですね」
軽蔑したいのに、しきれない。先にトモが聡子の思考を緩ませた。
「暗くてもわかる、おまえの……綺麗だな」
尖端を親指ではじかれると、身を捩った。
「挿れない、挿れないから」
「でも」
「おまえに会うの久しぶりだし、我慢できそうにない。せめて見たい」
舌で尖端を刺激されれば、電流が走るように痺れていく。
「別の女の人としてたんじゃないですか」
「……してねぇ」
「間があった」
「してねえよ」
「ほんとですか?」
聡子は荒くなる息を抑え、トモを睨む。
「嘘。わたし、髪の短い胸の大きな人と腕組んで夕方に歩いているの見ました」
「いや……一度だけ……した、かな」
川村と出かけた時に見かけたあの女性と、どうやら関係を持ったらしい。
「わたし、二度、女の人と一緒の所をみましたよ。その次は髪の長い人でした」
レイナも一緒に目撃した時のことを思い出す。
「……二度だったかもしれねえ」
どうやらこちらとも関係したようだ。
恐らく二人、二度、だけではない気がした。三ヶ月もしなかったことはない男が、一年近く自分と会わない間に、ましてや毎日誰かと寝る男が、二人だけで済んではいないだろう。
「ほら……」
「でも、俺からじゃねえ、相手が勝手に……。それに、おまえのことばっか思い出して……おまえの身体じゃないとダメだって」
「身体! 身体ですか!?」
最低最低、と聡子は精一杯抵抗した。
胸にトモがむしゃぶりついている。
抵抗はするが、トモの舌が身体を刺激するのは嫌ではない自分がいた。
聡子の手を掴み、トモが自分の猛々しくなっている場所に誘った。
「!」
「我慢してる」
「やっぱりトモさんの女にはなるのやめますっ」
なんとかトモを突き飛ばすことができた。トモはよろめいたが、倒れはしなかった。聡子はシャツの裾を下ろし、その場にしゃがみ込んだ。
「ああっくそっ、なんて言えばいいんだよ!」
彼が悪態をつくように叫ぶ。
「……トモさん、最低っ!」
「だから……おまえがほしいってことをなんて言ったらいいのかわかんねえんだよ!」
聡子はトモを見上げる。
「ずっと会ってない間、確かにほかの女たちと寝た。二人どころじゃねえ。でも、やっぱりおまえがいいってわかって……おまえに会いたくて……」
「ほら、身体じゃないですか……」
「否定できねえけど……でもそれだけじゃねえ、それも含めておまえがいいって気づいたんだよ。おまえの蕩けてる顔とか、下手でも一生懸命俺の咥えてる顔とか、嬉しそうな顔とか、笑う顔とか、泣きそうな顔とか、全部」
「セックスのことばっかりじゃないですか!」
「全部おまえのこと思い出して、おまえがほかの男のものになったかもって思ったらムカついて……もっと大事にしてやればよかったなって思って……」
トモが聡子の手を引き、立ち上がらせた。
「おまえに惚れたって意味だってわかって、どうしようもないんだよ。はじめてなんだよ、こんなの。我慢できねえんだ……」
「……わたし、帰りますね」
聡子は膝や腕の汚れを払った。ずれた下着をこっそり直し、頭を下げた。
「おまえが欲しい」
腕を引かれた。
「セックスしなくてもいい。おまえが欲しい。おまえに俺を見てほしい。俺だけを見て欲しい。俺を好きだって言って欲しい。他の男のものになんかなるな」
ぐいっと、トモの胸のなかに抱き寄せられた。
「ミヅキ、好きだ」
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