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【第1部】5.誕生日
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ファミレスを出ると、
「駅まで送る」
トモはそう言った。遠慮をしたが、
「こんな遅くに女一人で歩かせられるわけないだろ」
こう言われては甘えるしかなかった。
(前は『ガキが一人で』と言われたが、今日は『ガキ』とは言われなかったな)
二年前は「ガキ」と何度も言われていた。
(もう、ガキじゃないって思ってくれてる……?)
途中、ラブホ街を通りすぎて行く。
昼間はわからないが、夜ともなるとイルミネーションのように明るい。そして時間的に、どこも賑わっているようだ。なぜ賑わっているのか、それは考えないことにした。
(まさか……)
思わず身体を強ばらせる。
その様子を見たトモが、
「あん? なんだ、興味あんのか」
ニヤニヤと笑った。
「ちがっ……」
「興味あんなら入ってみるか?」
「違いますって! そんなの、ありません! そういうことは、好きな人とじゃないと! てか結婚前の男女がそんなことしてはいけませんし!」」
聡子は顔を真っ赤にして否定する。
「昭和かよ」
トモは笑う。
「だいたいなあ、俺は入ってみるかって言っただけだろ? 二十歳の記念にでも見てみるかって。別におまえとヤろうなんて言ってないぞ? そんなビビんなくても、とって食ったりしねえし。てか、まさかまだ男知らねえとか? 最近の高校生でも進んでんだろうに。友達においてかれてんじゃないのか? 結婚前の男女がーなんて今時ないぞ?」
「……ほっといて下さいっ」
自分で墓穴を掘ってしまったことに気づき、恥ずかしさでいっぱいになった。
男女が人目をはばかることなく、ホテルに入って行くのを見て、聡子はドキドキしてしまう。
「……おまえ、ほんとに男いねえのか?」
「いませんよ」
「気が強いからか?」
「知りませんよそんなこと」
悪かったですね、と口を尖らせる。
また揶揄われているのだと思うが、ついムキになってしまう。そしてまた「気が強い」と言われてしまうのだろう。
「おまえさ、黙ってれば可愛いのにな」
「か、可愛い……?」
聡子はふいにそんなことを言われ、顔を赤らめた。
「そんなこと言われたことないです。トモさんだけですよ、そんなこと言うの。それに、第一お世辞とはわかってますし」
「前も言ってたな。そんなわけねえだろ」
トモは鼻で笑う。
(なんでそんなこと言うのかな……)
どうでもいい話をしながら歩いていると。
「あらトモじゃない!」
女性に声をかけられ、立ち止まった。
ゴージャスな髪型で、洋服もぴったりとしたもので身体のラインがしっかりわかるものだ。夜の歓楽街で働いているのかと言った風貌の美人な女性だ。少し気が強そうなイメージがあった。
(気が強そう……もしかして、恋人……?)
「久しぶり。一人? ねえ、あたしトモにかまってもらえてないから最近寂しいなあって思ってたの。ねっ、今夜どう?」
「……いや」
トモはなんだか気まずそうだ。ちらりと背後にいる聡子を気にしている。
「今日は連れがいるから。悪いな」
「え?」
きらびやかな女性は、トモの斜め後ろにちょこんといる聡子に目をやると驚いた。
「うそ! 随分地味な子ね!? 気づかなかった。どこの店の子!? こんな子見たことなわね」
「……まあ、そういうわけだから」
「えーっ、たまには構ってよお」
「そう言われてもな……」
「今日がだめなら明日でもいいじゃない」
女性の甘えた声に、トモは明らかに困惑している。
「あたし、絶対その子より上手よ? トモは大きい胸が好きでしょ。ほら」
女性はトモの手を取り、自分の胸に押し付けた。
「ひゃっ」
トモではなく、聡子が小さく悲鳴をあげてしまう。
「やめろ」
「ねーえ、トモのいい所全部知ってるし、満足させてあげられるわよ? トモだって、あたしのいい所知ってるでしょ? ねっ」
女はトモにしなだれかかる。
(うわー……大人って……)
「……悪い、また今度な」
「今度っていつよ」
「今度は今度だ」
トモはばつが悪そうにし、聡子を促してその場から立ち去った。聡子はぺこりと頭を下げて、トモの後ろを慌てて付いて行った。
「駅まで送る」
トモはそう言った。遠慮をしたが、
「こんな遅くに女一人で歩かせられるわけないだろ」
こう言われては甘えるしかなかった。
(前は『ガキが一人で』と言われたが、今日は『ガキ』とは言われなかったな)
二年前は「ガキ」と何度も言われていた。
(もう、ガキじゃないって思ってくれてる……?)
途中、ラブホ街を通りすぎて行く。
昼間はわからないが、夜ともなるとイルミネーションのように明るい。そして時間的に、どこも賑わっているようだ。なぜ賑わっているのか、それは考えないことにした。
(まさか……)
思わず身体を強ばらせる。
その様子を見たトモが、
「あん? なんだ、興味あんのか」
ニヤニヤと笑った。
「ちがっ……」
「興味あんなら入ってみるか?」
「違いますって! そんなの、ありません! そういうことは、好きな人とじゃないと! てか結婚前の男女がそんなことしてはいけませんし!」」
聡子は顔を真っ赤にして否定する。
「昭和かよ」
トモは笑う。
「だいたいなあ、俺は入ってみるかって言っただけだろ? 二十歳の記念にでも見てみるかって。別におまえとヤろうなんて言ってないぞ? そんなビビんなくても、とって食ったりしねえし。てか、まさかまだ男知らねえとか? 最近の高校生でも進んでんだろうに。友達においてかれてんじゃないのか? 結婚前の男女がーなんて今時ないぞ?」
「……ほっといて下さいっ」
自分で墓穴を掘ってしまったことに気づき、恥ずかしさでいっぱいになった。
男女が人目をはばかることなく、ホテルに入って行くのを見て、聡子はドキドキしてしまう。
「……おまえ、ほんとに男いねえのか?」
「いませんよ」
「気が強いからか?」
「知りませんよそんなこと」
悪かったですね、と口を尖らせる。
また揶揄われているのだと思うが、ついムキになってしまう。そしてまた「気が強い」と言われてしまうのだろう。
「おまえさ、黙ってれば可愛いのにな」
「か、可愛い……?」
聡子はふいにそんなことを言われ、顔を赤らめた。
「そんなこと言われたことないです。トモさんだけですよ、そんなこと言うの。それに、第一お世辞とはわかってますし」
「前も言ってたな。そんなわけねえだろ」
トモは鼻で笑う。
(なんでそんなこと言うのかな……)
どうでもいい話をしながら歩いていると。
「あらトモじゃない!」
女性に声をかけられ、立ち止まった。
ゴージャスな髪型で、洋服もぴったりとしたもので身体のラインがしっかりわかるものだ。夜の歓楽街で働いているのかと言った風貌の美人な女性だ。少し気が強そうなイメージがあった。
(気が強そう……もしかして、恋人……?)
「久しぶり。一人? ねえ、あたしトモにかまってもらえてないから最近寂しいなあって思ってたの。ねっ、今夜どう?」
「……いや」
トモはなんだか気まずそうだ。ちらりと背後にいる聡子を気にしている。
「今日は連れがいるから。悪いな」
「え?」
きらびやかな女性は、トモの斜め後ろにちょこんといる聡子に目をやると驚いた。
「うそ! 随分地味な子ね!? 気づかなかった。どこの店の子!? こんな子見たことなわね」
「……まあ、そういうわけだから」
「えーっ、たまには構ってよお」
「そう言われてもな……」
「今日がだめなら明日でもいいじゃない」
女性の甘えた声に、トモは明らかに困惑している。
「あたし、絶対その子より上手よ? トモは大きい胸が好きでしょ。ほら」
女性はトモの手を取り、自分の胸に押し付けた。
「ひゃっ」
トモではなく、聡子が小さく悲鳴をあげてしまう。
「やめろ」
「ねーえ、トモのいい所全部知ってるし、満足させてあげられるわよ? トモだって、あたしのいい所知ってるでしょ? ねっ」
女はトモにしなだれかかる。
(うわー……大人って……)
「……悪い、また今度な」
「今度っていつよ」
「今度は今度だ」
トモはばつが悪そうにし、聡子を促してその場から立ち去った。聡子はぺこりと頭を下げて、トモの後ろを慌てて付いて行った。
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