つよくてもろい君たちへ

そうな

文字の大きさ
30 / 31
第一部

きらいな、

しおりを挟む
 1時間目の瀬野先生は古典の先生だ。自ら事なかれ主義だと公言していて、僕から距離をとっているのはあからさまに分かる。だけど何も言わないだけありがたい先生だった。
 

 でも、2時間目が始まると同時に嫌味のパレードが始まる。
「おい、白樺なんだこれ」
「え…」
「(2)と(5)の答え見当違いにもほどがある!どうせそこの篠原との「オタノシミ」にかまけて適当にやったんだろ」
 蔑んだ目で、有紀を侮辱する。そうやって僕に攻撃するこの先生はとても苦手だった。わざわざ有紀の宿題のプリントだけを探し出してまでやることだろうか。

「オタノシミって…どういうやつですか?単純に僕が間違えたんです。あ、解説して下さるんですか?わざわざ僕のやつ探し出してまで!愛だな~僕可愛いから仕方ないな~!!いやあ愛されちゃってる」
 
 有紀がとぼけたように言うとクラスで小さな笑いが漏れた。先生は不快そうに顔を歪める。
「ハッ、お前は解説してもわからないだろう。お前の仲良しな篠原に教えてもらえ」
「えーー職務放棄宣言ですか!」
 有紀が不満そうな声を出す。

 僕は有紀が前に出て攻撃から守ってくれるのに、黙って俯いて嵐が過ぎるのを待つだけだった。先生は対象を有紀にしていては思うように事が進まないことを分かったのか僕の方を見た。
「おい、なに下を向いてる?やましいことでもあるのか?」
「いえ…別に」

  顔を上げると、先生はいいことを思いついたと言うように口角を上げた。
「本当か?携帯でもいじってたら大問題だぞ」
「使ってませんから」
「ほう。なら机の中と鞄の中を見るぞ?」
「…いくらなんでも揚げ足取り頑張りすぎでしょ」

 有紀がポツリと呟く。先生はそんな有紀を睨んだ。
「最近風紀が乱れていてなぁ。風紀の顧問としては授業を妨害される前に風紀を正す義務があるんだよ」
 机の上に広げたノートを見る。まだ定期試験の範囲も終わっていないのに、先生はこうやって気に入らないものを排除しようと頑張る。

 後ろからクラスメイトに背中を突かれる。
「なあ、早く見せろよ。授業進まねえじゃん」
 そりゃ、ターゲットにされてない人たちからすれば僕が早くしないと迷惑なだけだよね。さっさと因縁つけられるの終わらせよう。そう思って机の中身を全部取り出す。
 次に鞄の中を取り出そうとしてはたと手を止めた。あ、着替えとか詰まってるじゃん。
 
 先生は手を止めた僕をにやにやと見た。
「なんだ?人に見せられないようなものでも入れているのか?」
「……いえ」
「ならさっさとしなさい!授業が進められないだろう」
「……はい」
 仕方ないので鞄を持ち上げると、それを先生が手から奪う。あ、と思った瞬間には鞄のチャックを開けて先生はそれを逆さまにした。ガサッと落ちたビニール袋には服や教科書が詰められている。クラスの中がざわついたのがわかる。

「なんだ?これは」
 先生もちょっと予想外だったのか眉根を寄せた。僕はうつむく。

「これが授業に関係あるのか?」

 ビニール袋をかざされる。中からは下着も覗いていて妙に恥ずかしい気持ちになる。
「これは没収だな」

 バカにしたような声に慌てて目を向けると、先生は心から僕を蔑んだ目で見ていた。
「学校で下着ごと変えなきゃいけないようなことがあるんだろう?やはりおまえは噂通りなんだな」
 

 濡れ衣だ。そう思うのに、ビニール袋を持ってくる選択をしたのが自分自身だからなにも言えない。
 
 先生はそれに満足したようでビニール袋をこれ見よがしに教卓の上に置いた。
 そして、何事もなかったかのように授業を進め始める。でも、教室中の視線は僕に集まっているのはわかった。
 
 僕は、なにも言えないでずっと下を向いて唇を噛み締めていた。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、 隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。 しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです… オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が なかたのでした。 本当の花嫁じゃない。 だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

劣等アルファは最強王子から逃げられない

BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。 ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式の話

八億児
BL
架空の国と儀式の、真面目騎士×どスケベビッチ王。 古代アイルランドには臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式があったそうで、それはよいものだと思いましたので古代アイルランドとは特に関係なく王の乳首を吸ってもらいました。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

処理中です...