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27話・足の悪い少女

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 メイドらしき人が、菓子や紅茶を持ってきてくれたので、それを飲みながら、ムートンさんを待つ。
 待つのだが、水分をとったからなのか分からないが、急に催してきた。
 
「トイレってどこだ?」

 この部屋に、扉は1つ… 入ってきた扉しかない。
 一瞬悪いと思ったが、粗相をするよりもいいかという気持ちが勝ち、俺は部屋を出て、トイレを探し始める。
 ここかなぁと思った扉を開けると、そこには、椅子に座っている少女がいた。本を読んでいたのか、手には、本を持っていた。だけど、扉を開けた音に気づいたのか、顔はこっちをむいており、バッチリと目があった。その少女は、少し寂しげな顔をしていた。

「・・・」

「ど… どうも」

 一応、挨拶をする。

「こ… こんにちは」

 むこうも、戸惑いながらも、挨拶をしてくれる。

「そ… それじゃあ、俺はこれで…」

 俺は、何事もなかったかのようにその場を後にしようとするが、

「ちょっと、待って下さい!!」

 呼び止められた。そう易々とは、逃げられなかった…

「な… 何でしょうか?」

「貴方は、いったいどなたなのでしょうか? 流石に、危険人物だと、困るのですが…」

 そりゃそうだ…

「俺… あっいや、私は、冒険者のセウンと言います。一応、ムートンさんに招かれて、この屋敷に来ました」

「セウンさんですね。ムートンがですか? なら、客人なんですね? 私は、ニーニャと言います。でも、どうしてこんな所に?」

「あ… トイレを探してまして、たまたま開けた扉が、その…」

「ここだったんですね?」
 
「…はい、すみません…」

「大丈夫ですよ。トイレは、この先の突き当たりを、右に曲がった所にありま… あっ!!」

 指さしで、教えてくれようとして持っていた本を落とした。

「大丈夫ですか?」

 俺は、咄嗟に、近づいて本を拾う。

「あ… ありがとうございます」

「いえ…」

 本を、手渡す際、ふと足に巻かれている包帯に目がいった。ニーニャさんも、本を受け取りながら、俺の視線に気づいたのか、

「この包帯が、気になりますか?」

 ニーニャさんがそう、尋ねてくる。

「す… すみません!!」

 俺は、すぐ目をそらす。

「いえ、気にしないで下さい…」

 何だか、少し気まずい空気になる。

「別に、怪我している訳ではないのですよ…」

「…なら、どうして?」

 気づけば、そう返していた。

「病気なんですかね… 少し前に、突然、動かなくなってしまったんです…」

「病気ですか…」

 どこの世界にも、物騒な病気があるんだな…

「あ、でも痛みとかはないんですよ。ただ、動かないだけなんです…」

「そうなんですね… でも、どうして私なんかにその話を?」

 ニーニャさんは、少し目を見開く。

「…何となくですかね」

「何となくですか?」

「はい」

「そうですか…」

「あ!!」

「ど… どうしました、ニーニャさん?」

「呼び止めたのは、私なんですがトイレは大丈夫ですか?」

「あ!!」

 忘れてた… 思い出すと、すぐ行きたくなってくる。

「そ… それじゃあ、私はこれで失礼しますね」

「はい。話相手になってくれて、ありがとうございました」

「いえ、私も話せてよかったです」

 俺は、そのまま部屋を出ようとするが、出る前に立ち止まる。

「どうしました?」

 俺は、アイテムボックスから、エリクサーを取り出してから、振り返る。

「これ、良かったらどうぞ?」

 俺は、エリクサーを、ニーニャさんに手渡す。
 エリクサーって、何となく病気にも効果があるかなって思ったからだ。

「これは?」

 当然、何なのか聞いてくる。
 
「回復薬みたいなものです。病気が治ればと思いまして…」

 エリクサーって言っても、信じてくれるか分からない為、回復薬と言っておく。

「でも、このような物を貰うわけには…」

 ニーニャさんは、返してこようとする。

「大丈夫ですよ。あと何本か持ってますから。それに、ここで知り合ったのも何かの縁ですし、元気になってほしいですから」

「…ありがとうございます。後で、必ず飲みますね!!」

「良かったです。それじゃあ、これで」

 俺は、部屋を出て急いでトイレにむかった。
 俺の尊厳の為に、言っておくが漏らしてはない。ちゃんと間に合った。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー作者より(捕捉)

やっと出てきた、新しい女性キャラのニーニャ
今後、稀に出てくる事があるかもしれませんが、ヒロインではありません。
ヒロイン的な物は、もう少ししたら出てくると思います(たぶん…)
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