スキルが覚醒してパーティーに貢献していたつもりだったが、追放されてしまいました ~今度から新たに出来た仲間と頑張ります~

黒色の猫

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閑話・ニーニャ

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 私は、あの日から、殆ど外に出ることなく、部屋で本を読んで過ごしていた。今日も、いつものように、本を読んでいると、ノックもなく扉が開いた。
 扉の方を見てみると、見かけた事のない男の人と目が合った。私は、言葉が出てこなかった。

「・・・」

「ど… どうも」

 私と同じ歳くらいの男の人が話しかけてくる。

「こ… こんにちは」

 私も慌てて、挨拶を返す。

「そ… それじゃあ、俺はこれで…」

 男の人は、そのまま立ち去ろうとしたので、

「ちょっと、待って下さい!!」

 咄嗟に、呼び止めてしまう。何者か分からない状態で、逃がしては行けないと、思ったのかもしれない。

「な… 何でしょうか?」

「貴方は、いったいどなか何でしょうか? 流石に、危険人物だと、困るのですが…」

 落ち着いている風を装いながら、そう尋ねてみる。
 その間、心臓は、バクバク動いている。

「俺… あっいや、私は、冒険者のセウンと言います。一応、ムートンさんに招かれて、この屋敷に来ました」

「セウンさんですね。ムートンがですか? なら、客人なんですね? 私は、ニーニャと言います。でも、どうしてこんな所に?」

 どうやら、侵入者ではなようみたいだけど、今度は、どうしてここにいるのか、気になったので、尋ねる。この頃には、心臓のバクバクも落ち着いてきていた。

「あ… トイレを探してまして、たまたま開けた扉が、その…」

「ここだったんですね?」
 
「…はい、すみません…」

 間違えて、私の部屋にですか…
 可笑しな人ですね…

「大丈夫ですよ。トイレは、この先の突き当たりを、右に曲がった所にありま… あっ!!」

 本を落としてしまった。一応、自分で拾える範囲なので、拾うとするが、

「大丈夫ですか?」

 セウンさんが、咄嗟に、近づいて本を拾ってくれる。

「あ… ありがとうございます」

「いえ…」

 本を受け取りながら、セウンさんの視線の先に気づく。

「この包帯が、気になりますか?」

 私は何故か、そう聞いていた。

「す… すみません!!」

 謝りながら、セウンさんは、目をそらす。

「いえ、気にしないで下さい…」

 セウンさんは、申し訳なさそうな顔をしている。その顔を見ていると、自然に私の状況を話していた。

「別に、怪我している訳ではないのですよ…」

「…なら、どうして?」

「病気なんですかね… 少し前に、突然、動かなくなってしまったんです…」

「病気ですか…」

「あ、でも痛みとかはないんですよ。ただ、動かないだけなんです…」

「そうなんですね… でも、どうして私なんかにその話を?」

 私も、少し驚いていた。
 確かに、何で私は、今日あった人ばかりの人にこんな話をしているのだろうか… 考えてみるが、特に理由は思い浮かばなかった。だからか、

「…何となくですかね」

 私は、そう告げた。

「何となくですか?」

「はい」

「そうですか…」

 セウンさんは、納得されたような顔をされている。

「あ!!」

「ど… どうしました、ニーニャさん?」

「呼び止めたのは、私なんですがトイレは大丈夫ですか?」

「あ!!」

「そ… それじゃあ、私はこれで失礼しますね」

「はい。話相手になってくれて、ありがとうございました」

「いえ、私も話せてよかったです」

 セウンさんが、帰るのを目で追っていると、彼は、扉の前で、立ち止まった。

「どうしました?」

 セウンさんは、振り返る。手には何を持っていた。

「これ、良かったらどうぞ?」

 セウンさんから、その何かを手渡される。

「これは?」

 これが何なのか、聞いてみる。
 
「回復薬みたいなものです。病気が治ればと思いまして…」

「でも、このような物を貰うわけには…」

 私は、すぐにお返ししようするも、受け取って貰えない。

「大丈夫ですよ。あと何本か持ってますから。それに、ここで知り合ったのも何かの縁ですし、元気になってほしいですから」

 私は、その気持ちだけで、とても嬉しくなった。

「…ありがとうございます。後で、必ず飲みますね!!」

「良かったです。それじゃあ、これで」

 セウンさんは、そのまま部屋を立ち去っていった。
 しばらく、私は、彼がで出ていった扉を見つめていた。手には、彼から頂いた回復薬を持って…
 少しして、視線を手に持っていた回復薬に移す。

「冒険者のセウンさんか…」

 今までいた彼の事を思い出しながら、何の疑いもなく、頂いた回復薬の蓋を開けてから飲み始める。

 コクッコクッ

 それほど、量が入っている訳ではないので、すぐに飲み終わった。すると、

「え…」

 以前飲んだ、回復薬とは違い私の体が光だす。
 少しして、光がやむと違和感に気づいた。その違和感が何なのか、すぐに気づく。

「あ… 足が… 動く…」

 椅子に座ったまま、あの日動かなくなった足を持ち上げてみる。足は、私の思った通りに、持ち上がる。

「やっぱり… 動く…」

 今度は、床に足をつけてから、椅子の手すりを持ち、立ち上がってみる。

「私… 立ててる…」

 じわりと視界が歪む。気づけば、涙が頬を伝う。
 
 コンコン

 扉がノックされる。

「ニーニャ、入るわよ」

 それは、お母様の声だった。

「は… はい…」

 私は、涙声のままそう答える。

「ニーニャ、体調は… どう… し…」

 お母様は、私の姿をみて固まっていた。

「お母様… 私…」

「ニーニャ!!」

 お母様は、私に駆け寄り、強く強く私を抱き締めてくれた。お母様も涙を流してくれていた。少しして、2人とも、落ち着いた所で、私に何が起こったのか、話した。

「黒髪の冒険者セウン… その人があなたを治してくれたの?」

「そうです… セウンさんがくれた回復薬を飲んだら、体が光だして… 足が動くようになりました…」

「そういえば、お客様が来ていると言っていたわね…」

「セウンさんも、ムートンに連れて来られたと言っていました」

「それなら、確定ね… たぶん、客間であの人が対応していると思うから、今から行ってみましょうか? 私からも、お礼を言いたいですし」

「はい!!」

 私は、お母様に支えて貰いながら、客間にむかった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
作者より(捕捉)

今回、ニーニャが回復した後、すぐ立てた件について
本来、長い間動かしていないと、筋肉量が低下して立つことは困難だと思いますが、まぁそこは異世界の薬ってことで、低下した筋肉量も回復したと思って頂けると、幸いです。
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