愛などもう求めない

一寸光陰

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初恋

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「ヴェリテ様に優しくしなさい。」
「ヴェリテ様に気に入られなさい。」

これは願望ではなく、義務だった。
公爵令息として家を守るための義務。
彼のことはそれだけにすぎなかった。


「お前も大変だな。婚約者が男だなんて。」
そう友人に言われ、頭に血が上った。
「そんなことない!ヴェリテ様は素敵な人だ!」
「急に何だよ。前まで義務で付き合ってるだけで、何とも思ってないって言ってたくせに。」
友人のセリフに言葉を詰まらせる。

「あの美しいと評判のシスティーナ様もお前のことが気になってるらしいぞ。婚約者さえいなければな。」
「そんなの求めてない。だって俺はヴェリテ様を…。」
その言葉は続けることはできなかった。
代わりに顔が熱くなっていくのを感じた。
「お前、まさか…?」

「…俺ってヴェリテ様のこと好きだったんだ…。」

一体自分はいつから婚約者のことが好きだったのだろうか。

あの日からだろうか。特別な存在になったのは。


「ヴェリテ様、何か怒っておられますか?」
「怒ってなどいませんよ。」
「しかし、前のように楽しんでおられないような気がして…。」
「気付いたのです、自分の愚かさに。今までジュスティス様には、僕のような者のために時間をとらせてしまっていました。これからはできるだけ、ジュスティス様の邪魔をしないようにと思っているだけですよ。」
「しかし交流を深めなくては!
父に認めてもらわなければ…。
今まで、ヴェリテ様が不快に感じるような態度をとっていたのであれば改めます!どうか僕を許してください!
僕は公爵家の跡取りなのに…!」

ヴェリテは読んでいた本を閉じて、こちらをまっすぐ見つめた。
「ジュスティス様、どうか自分のことも大切にしてください。」
「…え?」
「自分の心を大切にしてほしいのです。父親が決めたから、公爵家の跡取りだから、そういったこと関係なしに自分自身の心の声に耳を傾けてほしいのです。
貴方は、父親ための駒でも、僕のための伴侶でもありません。
これからは、少しだけ自分本位になってみませんか?」
ヴェリテは微笑んだ。

俺はそんなことを言われたのは初めてで戸惑った。自分の気持ちなど今まで考えたこともなかった。

「自分の心の声…。」

胸に手を当て考える。
聞こえてきそうにもない。

「ふふふっ。胸に手を当てたからといって聞こえませんよ。」
ヴェリテが笑った。

その微笑みを見たとき、初めて自分の心の声が聞こえてきた。

この人とずっと一緒にいたい。

それから、ジュスティスは少しだけ自分本位になった。

愛しています。
その一言すら、勇気が出ず言えないままであるが。
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