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第6章 太陽の聖女と星の聖女
第227話 ドードレックの街の長老
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コリンに案内されて家の中へ入ると、ベッドで上半身だけ起こした白髪のおじいさんが居た。
「お姉ちゃん、イナリ。この人が、長老さんだよ。だけど、あんまり体調が良くないみたいで、少しずつしかお話し出来ないんだって」
「げふんげふん。コリン君の言う通りで、あまり身体が……御用件は、コリン君と同じですかな? げふんげふん」
長老さんが辛そうに……はあまり見えないけど、面倒くさそうに私とイナリに目をやる。
……もしかして、コリンは長老さんの家をノックして、誰も出て来なかったけど、ドアが開いていたから勝手に入っちゃったとか?
私も、コリンにこっちだよって言われて入ってきたけど、勝手に入って来ちゃったって事!?
「こ、コリン。私たち、長老さんの家に上がっちゃって良かったの?」
「うん! ノックの音が聞こえたから、僕が見て来てあげるー! ってちゃんと言ったよー!」
えーっと、コリンの善意を断れなかったって事?
とはいえ、長老さんの顔色は良いけど、もしかしたら本当に体調が悪い可能性もあるので、神水を飲んでもらおうかな。
「あの、よく効くとフランセーズで話題のポーションを持っておりまして、よければ飲まれますか?」
「え? いやその……」
「あ、もちろん費用なんて要らないです。私、薬師を目指しているので、苦しまれている方は放っておけなくて」
「そ、そうまで仰られるなら……」
薬師の受験は、今後の行動範囲を広げる事が目的なんだけど、これから目指している事は嘘ではないし……と思いながら、空の薬瓶にこっそり神水を入れ、長老さんにお渡しする。
「どうぞ。ソフィアさんっていうS級薬師の方が作られたポーションです」
「こ……この神々しさはっ!? まさか……本当に!?」
長老さんがよく分からない事を言いながら、神水を一口飲み……涙を流したっ!?
「ちょ、長老さんっ!? 大丈夫ですかっ!?」
「……いえ、大丈夫です。身体が……腰が痛くないっ! ……おぉっ! 足が動くっ!」
神水を飲み干した長老さんが立ち上がり、スタスタと歩いて近くにあった椅子に座る。
「す、凄い! お嬢さん! お願いがあります! このポーション……いえ、神水を出されたソフィア様に会わせていただけないでしょうか!」
「ソフィアさんは、別の街に……って、待ってください! 今、何て言いました!?」
「え? ソフィア様に会わせて欲しいと」
「その前です」
「神水を出されたソフィア様……ですか?」
「そ、それですっ! ど、どうして今飲まれたのが、ポーションではなく神水だと分かったんですかっ!?」
というか、長老さんはどうして神水の存在を知っているの!?
私だって、イナリに出会って教えてもらうまで、神水っていう言葉自体知らなかったのに!
「……ソフィア様以外には他言無用でお願いしたいのですが、実はワシの曾祖父が水の聖女様の従者をしていたそうなのです」
「み、水の聖女の従者っ!?」
「えぇ。水の聖女様の手から零れ落ちる水は、飲むだけで身体の不調が治り、身体能力が強化されるという神の水。祖父は曾祖父の話を信じておりましたが、父はそんなものがある訳がないとホラ吹き呼ばわりしておりました。ですが、ワシは幼い頃に曾祖父が語った話が嘘だとは思えず、世界中を回って神水に関する伝説を探しました。ですが、年には勝てず、足腰を痛めて故郷へ戻ってきたという次第なのです」
「つまり長老さんは、前の水の聖女の従者の曾孫さんなのですか!?」
「えぇ、その通りです! もう十年以上も苦しめられていた腰痛が治り、足が動く……普通の薬を飲んだところで、これらの持病が一瞬で治る訳がなく、先程のポーションが曾祖父の言っていた神水だと確信したんです! つまり、ソフィア様が水の聖女に違いないと確信したのです!」
えーっと、どうしよう。
まさか、長老さんが前の水の聖女様に関りのある家系の人だったなんて。
これは、本当の話をすべきよね?
「……えっと、ごめんなさい。本当の事をお話しすると、実は私が水の聖女なんです」
「いやいや、そのような冗談は結構です。謝礼が必要でしたら、幾らでもお出しします! ですから、どうかソフィア様がどこに居るか教えてくださいっ!」
あぁぁぁ……私のせいで、ややこしい事になっちゃったぁぁぁっ!
「お姉ちゃん、イナリ。この人が、長老さんだよ。だけど、あんまり体調が良くないみたいで、少しずつしかお話し出来ないんだって」
「げふんげふん。コリン君の言う通りで、あまり身体が……御用件は、コリン君と同じですかな? げふんげふん」
長老さんが辛そうに……はあまり見えないけど、面倒くさそうに私とイナリに目をやる。
……もしかして、コリンは長老さんの家をノックして、誰も出て来なかったけど、ドアが開いていたから勝手に入っちゃったとか?
私も、コリンにこっちだよって言われて入ってきたけど、勝手に入って来ちゃったって事!?
「こ、コリン。私たち、長老さんの家に上がっちゃって良かったの?」
「うん! ノックの音が聞こえたから、僕が見て来てあげるー! ってちゃんと言ったよー!」
えーっと、コリンの善意を断れなかったって事?
とはいえ、長老さんの顔色は良いけど、もしかしたら本当に体調が悪い可能性もあるので、神水を飲んでもらおうかな。
「あの、よく効くとフランセーズで話題のポーションを持っておりまして、よければ飲まれますか?」
「え? いやその……」
「あ、もちろん費用なんて要らないです。私、薬師を目指しているので、苦しまれている方は放っておけなくて」
「そ、そうまで仰られるなら……」
薬師の受験は、今後の行動範囲を広げる事が目的なんだけど、これから目指している事は嘘ではないし……と思いながら、空の薬瓶にこっそり神水を入れ、長老さんにお渡しする。
「どうぞ。ソフィアさんっていうS級薬師の方が作られたポーションです」
「こ……この神々しさはっ!? まさか……本当に!?」
長老さんがよく分からない事を言いながら、神水を一口飲み……涙を流したっ!?
「ちょ、長老さんっ!? 大丈夫ですかっ!?」
「……いえ、大丈夫です。身体が……腰が痛くないっ! ……おぉっ! 足が動くっ!」
神水を飲み干した長老さんが立ち上がり、スタスタと歩いて近くにあった椅子に座る。
「す、凄い! お嬢さん! お願いがあります! このポーション……いえ、神水を出されたソフィア様に会わせていただけないでしょうか!」
「ソフィアさんは、別の街に……って、待ってください! 今、何て言いました!?」
「え? ソフィア様に会わせて欲しいと」
「その前です」
「神水を出されたソフィア様……ですか?」
「そ、それですっ! ど、どうして今飲まれたのが、ポーションではなく神水だと分かったんですかっ!?」
というか、長老さんはどうして神水の存在を知っているの!?
私だって、イナリに出会って教えてもらうまで、神水っていう言葉自体知らなかったのに!
「……ソフィア様以外には他言無用でお願いしたいのですが、実はワシの曾祖父が水の聖女様の従者をしていたそうなのです」
「み、水の聖女の従者っ!?」
「えぇ。水の聖女様の手から零れ落ちる水は、飲むだけで身体の不調が治り、身体能力が強化されるという神の水。祖父は曾祖父の話を信じておりましたが、父はそんなものがある訳がないとホラ吹き呼ばわりしておりました。ですが、ワシは幼い頃に曾祖父が語った話が嘘だとは思えず、世界中を回って神水に関する伝説を探しました。ですが、年には勝てず、足腰を痛めて故郷へ戻ってきたという次第なのです」
「つまり長老さんは、前の水の聖女の従者の曾孫さんなのですか!?」
「えぇ、その通りです! もう十年以上も苦しめられていた腰痛が治り、足が動く……普通の薬を飲んだところで、これらの持病が一瞬で治る訳がなく、先程のポーションが曾祖父の言っていた神水だと確信したんです! つまり、ソフィア様が水の聖女に違いないと確信したのです!」
えーっと、どうしよう。
まさか、長老さんが前の水の聖女様に関りのある家系の人だったなんて。
これは、本当の話をすべきよね?
「……えっと、ごめんなさい。本当の事をお話しすると、実は私が水の聖女なんです」
「いやいや、そのような冗談は結構です。謝礼が必要でしたら、幾らでもお出しします! ですから、どうかソフィア様がどこに居るか教えてくださいっ!」
あぁぁぁ……私のせいで、ややこしい事になっちゃったぁぁぁっ!
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