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第6章 太陽の聖女と星の聖女

第228話 アニエスの苦手なもの

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「すみません。このように私が水魔法で神水を出したんです」
「普通の水魔法ですな? それくらいならワシも使えますぞ?」
「いえ、神水なんてすってば。飲んでみてください」

 長老さんが、ソフィアさんを水の聖女だと思い込んでしまったので、目の前で神水を出して飲んでもらった。

「ふむ。やはり普通の水ですが」
「えぇっ!? そんなはずは……」
「アニエスよ。この者は既に神水を飲んでおるのだ。その状態で更に神水を飲んだ所で、その効果は実感し難いであろう」

 あ、そっか。イナリの言う通りだ。
 でもじゃあ、どうしよう。

「お姉ちゃん。植物を急成長させたら?」
「なるほど。コリンの言う通りね」

 という訳で、普通に歩けるようになった長老さんを連れて裏庭へ行くと、適当な木の実を地面に植える。

「では、よく見ておいてくださいね。えーいっ!」

 植えた木の実に、私が水魔法で水をあげると、ポンッと目が出て、一気にスクスクと成長していく。

「こ、これは……確かに神の力! では、貴女が水の聖女、ソフィア様なのですね!」
「……すみません。アニエスです」

 長老さんに水の聖女だとわかってもらい、ようやく本題に。

「……という訳で、このドートレックの街に居ると、何と言えば良いのか分からないんですが、モヤモヤした変な感じがするんです。そこで、何かこの街にまつわる伝説などを教えてくれませんか? 例えば、羊祭とか」
「羊祭……ですか? あれは、大昔に羊の肉に高い税金が掛けられていたので、街へ羊肉を持ち込む際に税金を取られないように、羊に人間の恰好をさせた……というのが起源だと、聞いた事がありますが」

 街で羊祭の話を聞いたけど、これは水の聖女には関係なさそうね。

「うーん。他に何か御存知ありませんか?」
「そうですな。このドートレットは、先程申し上げた、私の曾祖父が亡くなった地です。もしかしたら、水の聖女様の従者をしていた曾祖父が、今の水の聖女様であるアニエス様に何かをお伝えしたいのかもしれません」
「……あっ! それってもしかして……あの時のお化け!?」
「お化け? 何の事でしょうか?」
「え、えーっとですね……」

 長老さんに聞かれ、説明しない訳にはいかないかと思い、初めてこの街へ来て一泊した夜の事を説明する。
 あの時は、お風呂や自室へ戻った時とか、私が一人になると誰かが居るような気がして、イナリとコリンの部屋で寝させてもらったんだよね。

「ううむ。それは曾祖父に代わって謝罪致します。水の聖女様を驚かせてしまい、申し訳ありません」
「あ、いえいえ。私が勝手に怖がって逃げただけですので」
「ですが、やはり曾祖父がアニエス様に何か伝えたがっているのではないかと……」

 長老さんの曾祖父で、前の水の聖女様の従者さん。
 従者さんっていうのが具体的に何をする人なのかは分からないけど、きっと悪い事ではないよね?
 何か伝えたい事があるみたいだし、汲み取ってあげたいんだけど……どうすれば良いんだろ?

「あの、よろしければ曾祖父の墓へご案内しましょうか? 今はアニエス様の神水のおかげで歩く事も出来るようになりましたし、街の外れにある共同墓地ですので、そこまで遠くはありませんので」

 墓地……うーん。出来ればあまり近付きたくない場所だけど、せっかくこう言ってくれているし、何かあるかもしれないし……い、行きましょう!

「わ、わかりました。よ、よろしくお願いいたします」
「アニエス。顔色が悪いが、本当に大丈夫なのか?」
「も、もちろん! あ、明るい内ならお墓に行っても何も起こらないわよ……きっと」
「……無理はせぬようにな」

 イナリに心配され、コリンからも不安そうな顔を向けられてしまったけど、長老さんに案内してもらい、水の聖女の従者さんのお墓へ向かうことにした。
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