英霊召喚 ~ハズレと呼ばれた召喚魔法で、過去の大賢者を召喚して史上最強~

向原 行人

文字の大きさ
上 下
239 / 343
第8章 ヴァロン王国遠征

第238話 国境の街

しおりを挟む
「おはよーなのです! 凄いのです! 夜の見張りもしていないし、野営とは思えなかったのです!」

 朝、プリシラが物凄く上機嫌で部屋から出てきた。
 まぁ昨日は、夜に何かの魔物がやってきて小屋に体当たりしたんだけど、魔法で小屋の周りに深めの穴を掘ったら、静かになったしね。
 出発する前に、落とした魔物の様子でも見てみようかな。
 ちなみに、昨日の俺はお風呂を覗いたりはしていない。
 野宿を覚悟していた所へ小屋を出した事で、プリシラが俺に尊敬の念? を見せていたので、それを崩さない方が良いだろうと自重したんだ。
 ドロシーの胸を触り過ぎて、俺を見る目がどんどん冷たくなっていたからね。
 ようやく今日にもヴァロン王国に入るという所なので、このまま良い感じで行きたい。
 そんな事を考えながら、いつもの様に馬を走らせていると、今まで通って来た街よりも、遥かに大きな街が見えてきた。

「お、何か街が見えてきたな」
「師匠。あれが国境の街フォークスで、奥に行けば国境となる大きな橋がありゅ……し、師匠ぉ~」
「説明中でも気を抜いちゃダメだ」
「うぅ……せめて街に入ったら中断して欲しいッス」

 ドロシーとプリシラの説明によると、隣のヴァロン王国とは大きな河で隔てられており、この街に唯一陸路で渡れる巨大な橋が架かって居るらしい。
 国境の街と呼ばれるだけあって、かなり栄えているらしく、街の門に沢山の人や馬車が居る。

「……って、あの列は何だ? どうして、皆街の中へ入らないんだ?」
「ここは国境の街ッス。犯罪者が他国へ逃げたり、また悪人が街で暴れて国の評判を下げたりしないように、街の出入りが厳重に管理されているッス」
「なるほど。エァル王国側は簡易な関所みたいなのしか無かったのに、大きく違うんだな」
「ヴァロン王国は大国ッスからね。大陸諸国の中でも、飛び抜けて大きいし、中心にあるッス。正直、攻められたら負けてしまうと思われるッス」

 なるほどね。
 厳重な管理と言っているから、ここを飛び越えて行ったりすると、後で面倒な事が待っているかもしれない。
 かなり待たされる事になりそうだけど、ちゃんと並ぶか。

「あれ? ドロシー、どこへ行くんだ? あの列に並ばないといけないんだろ?」
「それは商人や冒険者と言った市井の人々ッス。自分たちは別の出入り口があるッス」
「そうなんだ。じゃあ、そっちへ行こう」

 ……こういうのって、騎士だと常識なのだろうか。
 なんて言うか、騎士見習い? みたいな事とか、新米騎士の訓練? みたいなのを受けていないから、さっぱり分からないんだけど。
 学生にして第三王女直属特別隊の隊長に大抜擢されたのは良いけれど、もっと知らないといけない事が沢山ありそうだ。

「第三王女直属特別隊隊長ヘンリー=フォーサイス、同じく第三王女直属特別隊ニーナ=レッドフィールド、第三王女直属特別隊クレア=リルバーンに、第二騎士隊ドロシー=ラザフォードと、魔法騎士隊プリシラ=カトラル……えっと、そっちの幼女は?」
「俺の妹のユーリヤ=フォーサイスだ。家庭の事情で、今回の任務に同行させているが、フローレンス王女様の許可は貰っている」
「……あ、本当だ。し、失礼しました。では、以上の六名を確認いたしました。どうぞ」

 通常の入口とは違う、王宮専用出入口で身元の確認が行われ、ユーリヤを見た兵士が固まっていたけれど、何とか通過する。
 フローレンス様がちゃんと手続きしてくれていたので助かったけど、ちょっと焦ってしまった。
 ここでユーリヤだけが仲間外れ――置いてけぼりをくらうと、どうなって居た事か。
 何とか事無きを得て、そのまま国境へ繋がる大きな橋を目指す。

「しかし……本当に大きな橋だな。河だって、何とか霞んで対岸が見える程度だし」
「歩いて渡れない程、長いのです。お昼には少し早いですが、先に昼食を済ませておいた方が良いのです」
「え!? この橋、そんなに長いの!?」
「はい。それに、向こう岸では国境を越える為の手続きがあるのです。そこも、一般の人たちよりは早いですが、それでも入念に調べられるので、時間が掛かるのです」

 プリシラのアドバイスに従い、軽めの食事――ユーリヤは軽めとは思えないが――を済ませて、橋へ。
 橋に足を踏み入れる――出国する時も身元の確認があって……いやもう、面倒くさいな!
 これを考えると、エァル公国との国境はゆるゆるだな。大丈夫か?

「……はい、確認が済みました。では、どうぞ」

 ようやく手続きが終わって橋に足を踏み入れたのだが、とにかく大きい。
 馬車が数代横並び出来そうな程の幅がある。
 それが遥か向こうの岸まで……凄いな。
 橋を造った昔の人たちに敬意を評しながら、馬で一気に駆け抜けると、

「止まれ! 田舎の国の騎士たちよ。身分証を見せてもらおうか」

 ヴァロン国側の岸で、随分と高圧的な態度の兵士に止められた。
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

固有スキルガチャで最底辺からの大逆転だモ~モンスターのスキルを使えるようになった俺のお気楽ダンジョンライフ~

うみ
ファンタジー
 恵まれない固有スキルを持って生まれたクラウディオだったが、一人、ダンジョンの一階層で宝箱を漁ることで生計を立てていた。  いつものように一階層を探索していたところ、弱い癖に探索者を続けている彼の態度が気に入らない探索者によって深層に飛ばされてしまう。  モンスターに襲われ絶体絶命のピンチに機転を利かせて切り抜けるも、ただの雑魚モンスター一匹を倒したに過ぎなかった。  そこで、クラウディオは固有スキルを入れ替えるアイテムを手に入れ、大逆転。  モンスターの力を吸収できるようになった彼は深層から無事帰還することができた。  その後、彼と同じように深層に転移した探索者の手助けをしたり、彼を深層に飛ばした探索者にお灸をすえたり、と彼の生活が一変する。  稼いだ金で郊外で隠居生活を送ることを目標に今日もまたダンジョンに挑むクラウディオなのであった。 『箱を開けるモ』 「餌は待てと言ってるだろうに」  とあるイベントでくっついてくることになった生意気なマーモットと共に。

クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした

コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。 クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。 召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。 理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。 ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。 これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。

異世界召喚されたら無能と言われ追い出されました。~この世界は俺にとってイージーモードでした~

WING/空埼 裕@書籍発売中
ファンタジー
 1~8巻好評発売中です!  ※2022年7月12日に本編は完結しました。  ◇ ◇ ◇  ある日突然、クラスまるごと異世界に勇者召喚された高校生、結城晴人。  ステータスを確認したところ、勇者に与えられる特典のギフトどころか、勇者の称号すらも無いことが判明する。  晴人たちを召喚した王女は「無能がいては足手纏いになる」と、彼のことを追い出してしまった。  しかも街を出て早々、王女が差し向けた騎士によって、晴人は殺されかける。  胸を刺され意識を失った彼は、気がつくと神様の前にいた。  そしてギフトを与え忘れたお詫びとして、望むスキルを作れるスキルをはじめとしたチート能力を手に入れるのであった──  ハードモードな異世界生活も、やりすぎなくらいスキルを作って一発逆転イージーモード!?  前代未聞の難易度激甘ファンタジー、開幕!

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

さんざん馬鹿にされてきた最弱精霊使いですが、剣一本で魔物を倒し続けたらパートナーが最強の『大精霊』に進化したので逆襲を始めます。

ヒツキノドカ
ファンタジー
 誰もがパートナーの精霊を持つウィスティリア王国。  そこでは精霊によって人生が決まり、また身分の高いものほど強い精霊を宿すといわれている。  しかし第二王子シグは最弱の精霊を宿して生まれたために王家を追放されてしまう。  身分を剥奪されたシグは冒険者になり、剣一本で魔物を倒して生計を立てるようになる。しかしそこでも精霊の弱さから見下された。ひどい時は他の冒険者に襲われこともあった。  そんな生活がしばらく続いたある日――今までの苦労が報われ精霊が進化。  姿は美しい白髪の少女に。  伝説の大精霊となり、『天候にまつわる全属性使用可』という規格外の能力を得たクゥは、「今まで育ててくれた恩返しがしたい!」と懐きまくってくる。  最強の相棒を手に入れたシグは、今まで自分を見下してきた人間たちを見返すことを決意するのだった。 ーーーーーー ーーー 閲覧、お気に入り登録、感想等いつもありがとうございます。とても励みになります! ※2020.6.8お陰様でHOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!

~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる

僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。 スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。 だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。 それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。 色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。 しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。 ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。 一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。 土曜日以外は毎日投稿してます。

処理中です...