精霊の加護を持つ聖女。偽聖女によって追放されたので、趣味のアクセサリー作りにハマっていたら、いつの間にか世界を救って愛されまくっていた

向原 行人

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第2章 精霊と学校へ通う元聖女

挿話8 新米メイドユフィ

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「リディア様の護衛を務めさせていただいている、クロードと申します。以後、よろしくお願いします」

 ど、どういう事なの!?
 こんなイケメンが、バカ女の護衛ですって!?
 長身で、痩せているのに筋肉もしっかりある細マッチョ。綺麗な金髪はサラサラしているて、優しそうな顔をしているけれど、瞳から意志の強さが伺える。
 なにこれ!? 王族であるお兄様たちに引けを取らない気品もあるし、超絶イケメンじゃない!
 ふふ……これはチャンス。
 バカ女をダシにして、この男性とお近づきになるのよ。

「しかし、ソフィさんの仰る通り、あの何でも商売にしてしまう文化は独特でしたね」

 む……クロードは私の話に応えているけれど、視線が常にバカ女へ向けられている。
 一方でバカ女は、クロードの視線に気付いていないのか、それとも私に余裕を見せつけたいのか、ずっと馬車の窓から外を見ていた。
 これは、取れるものなら、取ってみれば? という事だろうか。
 ふんっ! だったら、この護衛の男をバカ女から奪って、その余裕の態度を絶対に後悔させてやるんだから。

「ソフィさん、リディア様のお世話をよろしくお願いいたします」

 クロードが最後までバカ女の事を見つめながら、帰って行った。
 まったく……すぐ傍に綺麗で可憐な少女が居るというのに。
 一先ず、バカ女の家に入ると、

「私の部屋は、ここです。ここで色々と作業をするので、この部屋は掃除不要というか、入らないでください」

 一階にある、出入り口のすぐ傍の一部屋は立ち入り禁止だと言われた。
 つまり、あの部屋にバカ女の秘密があるという事ね。
 ふふ……夜にバカ女が寝た後、漁りまくってやろう。
 聖女の力だとかって偽っていたバカ女が、アメーニア王国から精霊石を盗んで隠し持っていたりしたら最高なんだけど。
 それを証拠にバカ女を脅して、聖女だって偽る方法を聞き出し、私がこの国で新たな聖女になるの。
 この国は山の中にあるから、立地的にはイマイチだけど、メイドの振りをするよりは良さそうだしね。

「しかし……あのバカ女は一体何をしているのかしら」

 私が二階の部屋で一休みした後、リビングへ移動し、キッチンにあったフルーツを片手に、そこら辺にあった冒険譚を勝手に読んでいるんだけど、バカ女は一度も部屋から出てきていない。
 既に日が落ちて外が暗くなっているし……そうだ。食事をお持ちしました……的な感じで部屋に入れば良いんだ。
 流石に初日から入るなと言われた部屋に入るのはマズいが、これなら問題ないはずよ。
 私だって夕食を食べたいし、キッチンには食材が大量にあったから、何でも作れるわね。
 じゃあ、何かを作って……

「え? 私が作るの!? ……どうやって?」

 良く考えたら、料理なんて一度もした事がないわ。
 だけど、今まで様々な料理をこの目で見て、この舌で味わってきた。

「と、とりあえず、パンに肉屋や野菜を挟めば……痛っ!」

 初めて調理用ナイフを手にしたため、少し指を切ってしまって血が少し流れ出る。

「ど、どうして私がこんな事を……くっ! あのバカ女めっ!」

 苛立ちでそこら中の皿を投げかけたけど、何とか気持ちを抑える。
 この生活も、あのバカ女の弱みを握れば終わるわ。
 少しの我慢よ。
 何度か指を怪我しながら、とりあえず料理っぽい物を用意したので、バカ女の部屋へ突撃し、

「失礼します。お食事を……? って、鍵が掛かってる!?」
「あ、後で食べるので、リビングに置いておいてください」

 へ、部屋に入れないっ!?
 こ、この努力は何だったのよっ!
 ムカついたので、バカ女に作った料理を自分で食べて……

「……ま、不味い。す、少し修行が必要ね」

 鶏肉は生で食べる物では無いと学んだ。
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