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第1740話 訳が分からん
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勇者たちは、グリエルから受け取った資料を精査している。
というか、もし俺たちが悪徳貴族みたいな感じだったら、どうするつもりだ? 殺すのかね? そして、街を誰が統治するんだ? お前らか?
素朴な疑問が浮かんだ。
もともといた世界なら人材に伝手があるかもしれないが、この世界では全く伝手なんかないはずだよな?
こいつらの行動原理が全く分からん。
始めはダンジョンの気配を感じて動いていたようだが、バザールたちに遭遇してから話を聞いて悪い貴族、領主だろ! みたいな感じで決めつけられて、だから排除するみたいな流れになってた気がするんだよな。こいつら、マジで何がしたいんだ?
俺が混乱していると、勇者の1人が何か気になったようでグリエルに何か質問を始めた。
「この世界の税金は、人頭税と所得税と法人税だけなのか?」
「所得税と法人税という言葉は知りませんが、働いて得られた給料の一定率を税金として納めている職業がありますね。後、行商人などにはありませんが、この街に商会を置いている場合は、規模に応じて税金が課せられます」
「納めている職業? では、納めていない職業もいるのか?」
「納めている職業というのは、冒険者ですね。冒険者は分かりますよね? ギルドが報酬の支払いをするのですが、報酬から天引きされた金額を冒険者たちが受け取ります。冒険者たちは流動的なので、人頭税を払わずこういった形で税金を納めています」
「全員が払うわけじゃないが、所得税のような物だと思っていいか。で、他の税金は?」
「この街には、人頭税・冒険者たちの税金・商会からの税金以外にありませんね」
「収入の何割程が納められるんだ?」
「冒険者たちで言えば、2割程だと聞いています」
「他の人たちは?」
「話を聞いてましたか? 人頭税は収入に対する税金ではないので、割合なんか分かるわけないじゃないですか。商会からの税金に関しては、そこにかかれている以上の物はもらっていません」
「人頭税はいくらなんだ?」
「それくらい資料を読めば分かるのですが、この街の人頭税は、金貨10枚ですね」
「この街の平均収入は?」
「あなたたちの世界では、個人の収入が全部分かるのですか? 私たちの世界ではすべてを把握するのは無理です。なので、冒険者以外は収入に対する税金では無いのですよ」
「そんなものか」
そういうと、また資料を読み始める。
俺も知らなかったことがあったけど、3つしかない税金をいくら見ても変わらんだろうに。
「あの~1つ質問いいですか? えっと、冒険者による税金が異常に多い気がするのですが、どうしてですか?」
「それは、この街自体がダンジョンで、その中にさらにいくつかの資源ダンジョンがあるので、冒険者がいろんな所から集まってくるのです。だから必然的に冒険者からの税金が多くなるというわけです」
今のは勇者じゃなくて、従者になるのだろうか?
「いくら見ても、変わらないと思いますが、まだ見るのですか?」
「二重帳簿とか、書かれていない税金とかがあるのだろう? その資料を早く出せ」
「いい加減にしてもらえますか? 帳簿を2つつける意味も、今以上に税金を取る必要もこの街には無いんです。それでも職員たちの給料も払えますし、余った税金は孤児院などの運営費に回しています。不正をする必要がないのに、するわけがないでしょう」
「国なり上位者へお金を納めていないのか?」
「ここは中立地域といって、どこかの国が管理しているわけではありません。上位者はいますが、自分の商会を持っていますので上納金はいらないと言われています。俺に払うお金があるなら、片親や孤児たちの支援に使えと言われています」
「じゃぁ、その商会は不正をしているんだろうな。次の目的地が決まったな」
黙って聞いていた3人目の勇者がそんな事を言う。
「あなたたちは、何で上の立場の人間が不正をしている、という前提で話をしているのですか? 商会については、収支や取引の詳細などを調べて納める金額を決めています。調査に入っているので、不正なんてないですよ」
「偉い奴らは、不正するのが当たり前なんだよ。それに商会の人間が街の上位者になるなら、その商会からは税金を取ってないんだろ? 十分不正じゃん」
「自分の街に自分の商会を置いて、税金を払わないことがなぜ不正なのか理解に苦しみますが、その商会の税金はこの街で一番額が多く納めれています。
それ以外にも、街の中で仕事をしている人たちが怪我をした場合は、格安で治療が受けられるように治療院も独自に作って運営しているんです。人となりを知らずに決めつけるのは、止めていただきたい」
「どうせそんなこと言って、裏では何をしているのか分からない悪徳商人なんだろ? いいから、そいつの所に案内しろよ」
こいつらは何でこうやって決めつけているのだろうか? 自分たちが正義とでも言いたいのかね?
「あなたたちに命令される筋合いはありません」
「はぁ? 俺たちは勇者なんだぞ。世界の危険にさらすダンジョンマスターを討伐するために、他の世界から召喚された選ばれし者なんだよ。いいから黙って指示に従え!」
お前たちは、悪徳領主を裁くために来たのだろ? なのに世界を守るため……みたいなことを言っているが、頭は大丈夫なのだろうか?
「この街の上位者より、あなたたちの振る舞いの方が悪徳貴族のようですね。あなたたちがもともといた世界では、勇者が偉い存在だったかもしれませんが、この世界で勇者はそういった存在では無いのです。資源を生み出すダンジョンをむやみに破壊するため、煙たがられている存在なのですよ」
それ以降は、勇者たちがキレて訳の分からないことを怒鳴り始めた。俺の頭は理解することを止めて、雑音として処理していた。
しまいには、武器を抜いて切りかかった。この時、俺は我に返る。
右腕の肘から先を切られたグリエルが目に入り、俺の怒りが爆発した。
「シリウス、いくぞ! グリエルに商会に連れて行くように指示を出せ。商会の例の部屋を使うから、準備させろ」
俺は冷静にキレた矛盾した状態で行動を始めた。
というか、もし俺たちが悪徳貴族みたいな感じだったら、どうするつもりだ? 殺すのかね? そして、街を誰が統治するんだ? お前らか?
素朴な疑問が浮かんだ。
もともといた世界なら人材に伝手があるかもしれないが、この世界では全く伝手なんかないはずだよな?
こいつらの行動原理が全く分からん。
始めはダンジョンの気配を感じて動いていたようだが、バザールたちに遭遇してから話を聞いて悪い貴族、領主だろ! みたいな感じで決めつけられて、だから排除するみたいな流れになってた気がするんだよな。こいつら、マジで何がしたいんだ?
俺が混乱していると、勇者の1人が何か気になったようでグリエルに何か質問を始めた。
「この世界の税金は、人頭税と所得税と法人税だけなのか?」
「所得税と法人税という言葉は知りませんが、働いて得られた給料の一定率を税金として納めている職業がありますね。後、行商人などにはありませんが、この街に商会を置いている場合は、規模に応じて税金が課せられます」
「納めている職業? では、納めていない職業もいるのか?」
「納めている職業というのは、冒険者ですね。冒険者は分かりますよね? ギルドが報酬の支払いをするのですが、報酬から天引きされた金額を冒険者たちが受け取ります。冒険者たちは流動的なので、人頭税を払わずこういった形で税金を納めています」
「全員が払うわけじゃないが、所得税のような物だと思っていいか。で、他の税金は?」
「この街には、人頭税・冒険者たちの税金・商会からの税金以外にありませんね」
「収入の何割程が納められるんだ?」
「冒険者たちで言えば、2割程だと聞いています」
「他の人たちは?」
「話を聞いてましたか? 人頭税は収入に対する税金ではないので、割合なんか分かるわけないじゃないですか。商会からの税金に関しては、そこにかかれている以上の物はもらっていません」
「人頭税はいくらなんだ?」
「それくらい資料を読めば分かるのですが、この街の人頭税は、金貨10枚ですね」
「この街の平均収入は?」
「あなたたちの世界では、個人の収入が全部分かるのですか? 私たちの世界ではすべてを把握するのは無理です。なので、冒険者以外は収入に対する税金では無いのですよ」
「そんなものか」
そういうと、また資料を読み始める。
俺も知らなかったことがあったけど、3つしかない税金をいくら見ても変わらんだろうに。
「あの~1つ質問いいですか? えっと、冒険者による税金が異常に多い気がするのですが、どうしてですか?」
「それは、この街自体がダンジョンで、その中にさらにいくつかの資源ダンジョンがあるので、冒険者がいろんな所から集まってくるのです。だから必然的に冒険者からの税金が多くなるというわけです」
今のは勇者じゃなくて、従者になるのだろうか?
「いくら見ても、変わらないと思いますが、まだ見るのですか?」
「二重帳簿とか、書かれていない税金とかがあるのだろう? その資料を早く出せ」
「いい加減にしてもらえますか? 帳簿を2つつける意味も、今以上に税金を取る必要もこの街には無いんです。それでも職員たちの給料も払えますし、余った税金は孤児院などの運営費に回しています。不正をする必要がないのに、するわけがないでしょう」
「国なり上位者へお金を納めていないのか?」
「ここは中立地域といって、どこかの国が管理しているわけではありません。上位者はいますが、自分の商会を持っていますので上納金はいらないと言われています。俺に払うお金があるなら、片親や孤児たちの支援に使えと言われています」
「じゃぁ、その商会は不正をしているんだろうな。次の目的地が決まったな」
黙って聞いていた3人目の勇者がそんな事を言う。
「あなたたちは、何で上の立場の人間が不正をしている、という前提で話をしているのですか? 商会については、収支や取引の詳細などを調べて納める金額を決めています。調査に入っているので、不正なんてないですよ」
「偉い奴らは、不正するのが当たり前なんだよ。それに商会の人間が街の上位者になるなら、その商会からは税金を取ってないんだろ? 十分不正じゃん」
「自分の街に自分の商会を置いて、税金を払わないことがなぜ不正なのか理解に苦しみますが、その商会の税金はこの街で一番額が多く納めれています。
それ以外にも、街の中で仕事をしている人たちが怪我をした場合は、格安で治療が受けられるように治療院も独自に作って運営しているんです。人となりを知らずに決めつけるのは、止めていただきたい」
「どうせそんなこと言って、裏では何をしているのか分からない悪徳商人なんだろ? いいから、そいつの所に案内しろよ」
こいつらは何でこうやって決めつけているのだろうか? 自分たちが正義とでも言いたいのかね?
「あなたたちに命令される筋合いはありません」
「はぁ? 俺たちは勇者なんだぞ。世界の危険にさらすダンジョンマスターを討伐するために、他の世界から召喚された選ばれし者なんだよ。いいから黙って指示に従え!」
お前たちは、悪徳領主を裁くために来たのだろ? なのに世界を守るため……みたいなことを言っているが、頭は大丈夫なのだろうか?
「この街の上位者より、あなたたちの振る舞いの方が悪徳貴族のようですね。あなたたちがもともといた世界では、勇者が偉い存在だったかもしれませんが、この世界で勇者はそういった存在では無いのです。資源を生み出すダンジョンをむやみに破壊するため、煙たがられている存在なのですよ」
それ以降は、勇者たちがキレて訳の分からないことを怒鳴り始めた。俺の頭は理解することを止めて、雑音として処理していた。
しまいには、武器を抜いて切りかかった。この時、俺は我に返る。
右腕の肘から先を切られたグリエルが目に入り、俺の怒りが爆発した。
「シリウス、いくぞ! グリエルに商会に連れて行くように指示を出せ。商会の例の部屋を使うから、準備させろ」
俺は冷静にキレた矛盾した状態で行動を始めた。
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