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凛は兄ちゃんが守るから

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「そうだっお風呂、皆で入る?」

邪な感情など一切無い純粋な思い。

「えっ?あーうん、狭くないかな?」

普段なら一緒に入るんだけど、先輩と一緒に入ったら…。

「えっ、お父さんと三人で入ってるから平気だよ」

「あーうん、ならぁ」

凛には断れない三人でもいっかなぁと思い始めた時、先輩の手がエロく肩に触れた。そして、肩を指でトントントンと叩かれた。
なんだろう?と首をかしげれば、またトントントンと肩を叩かれた。
が、気付いた。
首だ、首。
噛み痕。
昨日つけた痕が一日で消えるわけがない。

「やっぱり辞めよう、叡先輩は恥ずかしいよねっ」

強めに聞いているようで、お願いした。

「あぁ」

「ほらっ叡先輩は皆と入るのって慣れてないから」

「そっかぁ、なら兄ちゃん一緒に入る?」 

「へえっ」

声が裏返った。問題があるのは俺なの、ごめんね凛。
今は一緒に入れないの。

「あっんー。ほら俺と凛が一緒に入ったらその間、叡先輩一人になっちゃうから」

「そっかぁ、わかった」

良かった、凛が素直な良い子で。

「なら永瀬先輩が先に入る?服はお父さんので良いよね?兄ちゃんのじゃ…」

「そうだね、俺のじゃ…」

サイズが違いすぎる。

「父さんの服借りないとねっ叡先輩、服は用意しておくのでお風呂先に入っててください」

「あぁ」

「凛、叡先輩を案内してくれる?」

「はぁい、永瀬先輩こっちでーす」

お風呂場に案内するのは凛に任せ、父さんの着替えを漁った。
トレーナーとズボンだけで良いのかな…。
パンツ…穿かないって事はないだろう。
パンツ、パンツ、パンツ。
あいつなんか知らない。
着替えを持ちお風呂場に向かった。
着替えとタオルのセットをして、お風呂場を後にするはずが気が付けば脱衣所で先輩とキスしてた。
俺の気配を感じた先輩が出てきて壁に押し付けられキスしてた。
裸の先輩と。
いつもなら俺だけが裸になることはあっても先輩だけが裸になるなんてことは無いので、恥ずかしかった。
裸なのは先輩なのに俺が照れてしまった。

「あっん」

唇が離れれば淋しさを感じる。
また、先輩は浴室に戻っていった。
隙あらばキスしてくる先輩を咎めることが出来る筈もなく簡単に受け入れあまつさえその先を強請ってしまう。
俺はなんて意思が弱いんだ。
先輩を拒むことが出来る日なんて果たしてくるのだろうか。
まぁ元々拒むことはないんだけど。
早くまた先輩の家行きたいなぁ。
そわなことを考えながら部屋に戻った。

「凛、勉強どう?」

「ん?ん゛ー頑張ってる」

「そっかぁ、高校はうちにするんだよね?」

「うん、兄ちゃんと一緒に通うの」

なんの曇りもない笑顔がこのまま続いてくれると良いのだが、あの学校に来たら凛はどうなってしまうんだろうか。
心配で心配で堪らない。
凛に何かあったらと考えると今からでも真実を伝え、他の高校を進めるべきなのだろうかと悩んでしまう。
俺だって出来る事なら凛と通いたい。
が、あの高校は…凛の心を壊す出来事なんて起こらないと断言出来るなら凛に躊躇いなく進めるのに。
男子校はやっぱり男子校なんだよ。
漫画とかで男子校ラブは有るようだけど、現実でもやっぱりあるんだよ。
有ったんだよ。
男子校ラブやっちゃてるもの。
あぁー、凛ごめんね。
兄ちゃんがこの学校入ったばかりに。
でも後悔はしてない、だって先輩に出会えたんだもの。
そこは本当に良かったと思ってる。
だげと、凛までと思うと…。

「凛…うん、兄ちゃんが守るから」

「?うん」

満面の笑みで答えてくれる凛は天使だ。
天使を、傷つけることは許されない。
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