男子校に入学しても絶対そっち側には行かないって思っていたのに、助けてくれた先輩が気になってます

天冨 七緒

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反らしていた現実

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今日も先輩の所へ~。
浮かれながら空き部屋へ向かった。
日々変わり始めている。
空き部屋では俺が遅れても俺以外の人がいる事は無くなった。
先輩は告白されてもそう言うことをしている様子もない。
たった今告白されているところを見ても前のように不安に駆られることはない。
完全に安心しているわけではない、だけど先輩を信じてるし今の関係を壊す気はない。
大丈夫大丈夫と言い聞かせその場に立ち続ける。
チラッと覗き込むと相手の男が抱きついているように見えた。
抱きついているだけで抱き合っているわけではないと自分に暗示をかけた。
どんなに先輩を信じると決めても不安は拭えない。
信じていてもこの状況は受け入れられず立ち去ろうとした際、腕か扉に当たり音を立ててしまった。
中に居た二人の視線が一斉にこちらを向いた。
離れなければと頭では分かっては居ても、金縛りに有ったように体が動かず二人と扉越しに見つめあっていた。
先輩が先に動いた。

「……あっ」

相手を引き離し俺の方へ向かってくる。
良くわからないが逃げ出した。
急いでその場を離れなきゃと走った。


「芯」

「?」

今、先輩俺の事芯って言った?
俺の名前知ってたの?
後ろから勢い良く抱き締められた。

「行くな」
 
「………」

「行くな」

抱き締められた腕が強くその腕を握りしめた。

「…どうして」

後方から声が響く。

「どうして、叡は誰も好きにならないんでしょ。どうして追いかけるの?」

泣きそうな震える声だった。
相手の気持ちが伝わってくる。
振り向く事が出来ない。

「コイツは特別だから」

特別。俺の事を特別って言ってくれた。
嬉しくて先輩の腕を掴む手に力が入る。
視界が潤む。

「…と、特別。好きってこと?」

「………」

「なんで、僕のが先に叡を好きになったのに。僕の気持ち知ってるでしょ」

「先とか後じゃねぇよ。コイツだから、お前じゃダメだ」

「なんで叡だよ。叡が本気にはならないって、誰も好きにはならないって言ったから。だから…」

彼のすすり泣く声だけが廊下に反響していた。
俺は先輩の手に引かれその場を離れた。

「もう、泣くな」

先輩が俺の涙を手で拭ってくれた。
ゆっくり顔が近づきキスをした。
泣いた所為か少し苦しかったけど先輩とのキスを止められなかった。
その後もずっと抱き締めてくれていた。

「ねぇ…先輩」

「んん」

「俺の名前知ってたの?」

「ああ」

「なら、これからはずっと俺の事名前で呼んでくれる?」

「ああ」

「フフ」

「芯」

不意打ちに名前で呼ばれ心臓がドクンと脈打った。

「はい」

「俺の事名前で呼べ」

「えっ、いいの?」

本当は名前をずっと呼びたかった。
でも、傷つきたくないと言う思いから先輩との距離を一線引かなければと名前は決して呼ばず「先輩」で通していた。

「ああ」

「あきら先輩」

名前を呼ぶと軽くキスしてくれた。

「叡先輩」

またキスをした。
幸せすぎる。

「これからは、そう呼べよ」

俺たちは何度もキスを繰り返した。
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