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1章
第18話 人型? 獣型?
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アパート、沢樫荘の管理人室。
今この部屋にいるのは、わたし、谷沼 紗季音と『オキツネサマ』と呼ばれる、和服を着た美青年、そして『りんかのリンちゃん』と名乗る、人の言葉を離す不思議な青い炎だ。
わたしが黒い靄のような霊(?)みたいなものにつかまってしまったのを助けてくれたのは『オキツネサマ』と呼ばれる、人間の姿をした青年。そう、彼はわたしの窮地を救ってくれた恩人だ。
そのことには感謝してるけど……。
なんと、このオキツネサマは、つい先程!
わたしとひとつ屋根の下、いっしょに暮らしていくなどと宣言した。
(いきなり、何言いだしてるのよー!)
このアパート、沢樫荘に現在、男性の入居者はいないと、不動産屋さんは言っていたはず。
それって、オキツネサマはわたしの部屋に居候する気?
そもそもオキツネサマがわたしといっしょに暮らすと言いだしたのは、わたしと彼は知りあいなのに、わたしが彼のことを忘れてしまったのを『思いださせるため』だという。
オキツネサマとわたしは今日が初対面。
だからわたしは、ついさっき彼に向かって、はっきりこう告げたんだ。
『ちょっと待ってください! あぶないところを助けてもらったのには、本当に感謝しています。でも、何度も言うようですが、わたしとあなたは知りあいではなく――だから、わたしがあなたを忘れているのではないんです。それって、いっしょに生活しても、あなたとの過去を思い出したりはできないってことですよね。わたしはこのアパートで1人暮らしするんです。同居とかしませんっ』
一気に まくしたてるようにしゃべった私は、言い終わってから、ハァハァと荒い息で呼吸をくりかえすハメになってしまったほど。
(危機を救ってもらった相手に、キツイ言い方をしてしまったことになるのだろうけど、わたしはもう何度も伝えているんだ。わたしはあなたの知りあいではありません。人ちがいですって)
言い分を主張し終えたわたしは、自分のとなりにいるオキツネサマ、そして、彼の横でぷかぷか浮かんでいる、青い炎のリンちゃんに視線を移した。
オキツネサマはさきほどまでと変わらず、おだやかな雰囲気。
(もしかして、わたしの力説、……聞いてなかった?)
一方のリンちゃんは、あせったようにクルクルクルッと、オキツネサマのまわりを飛びまわる。
リンちゃんがカン高い声で言った。
『どうやら本格的にオキツネサマやおれっちのこと忘れてるようだけど……そうだ! オキツネサマのキツネ姿をみせれば、すぐに思いだせるかも……』
「リン、その作戦はすでに試みた。サキのかたくなな態度は変わらなかった」
『ええっ! そんなぁ、人型をみても獣型をみても思い出さないなんて。あっ、でもでも……オキツネサマ、ひょっとして、あれはまだなんじゃ』
リンちゃんはオキツネサマの耳元に近づき、(人間のわたしがリンちゃんに近づかれても熱くないんだから、オキツネサマも耳元にリンちゃんがきてもきっと熱くないんだろう)ゴニョゴニョと耳打ちする。
「しかし……それは――」
『その反応、やっぱりまだ、みせてないってことっすか? オキツネサマ』
「……うむ」
2人とも何相談しあってるの?
チラリと、『人型』『獣型』って言葉なら聞こえてきたけど。
今この部屋にいるのは、わたし、谷沼 紗季音と『オキツネサマ』と呼ばれる、和服を着た美青年、そして『りんかのリンちゃん』と名乗る、人の言葉を離す不思議な青い炎だ。
わたしが黒い靄のような霊(?)みたいなものにつかまってしまったのを助けてくれたのは『オキツネサマ』と呼ばれる、人間の姿をした青年。そう、彼はわたしの窮地を救ってくれた恩人だ。
そのことには感謝してるけど……。
なんと、このオキツネサマは、つい先程!
わたしとひとつ屋根の下、いっしょに暮らしていくなどと宣言した。
(いきなり、何言いだしてるのよー!)
このアパート、沢樫荘に現在、男性の入居者はいないと、不動産屋さんは言っていたはず。
それって、オキツネサマはわたしの部屋に居候する気?
そもそもオキツネサマがわたしといっしょに暮らすと言いだしたのは、わたしと彼は知りあいなのに、わたしが彼のことを忘れてしまったのを『思いださせるため』だという。
オキツネサマとわたしは今日が初対面。
だからわたしは、ついさっき彼に向かって、はっきりこう告げたんだ。
『ちょっと待ってください! あぶないところを助けてもらったのには、本当に感謝しています。でも、何度も言うようですが、わたしとあなたは知りあいではなく――だから、わたしがあなたを忘れているのではないんです。それって、いっしょに生活しても、あなたとの過去を思い出したりはできないってことですよね。わたしはこのアパートで1人暮らしするんです。同居とかしませんっ』
一気に まくしたてるようにしゃべった私は、言い終わってから、ハァハァと荒い息で呼吸をくりかえすハメになってしまったほど。
(危機を救ってもらった相手に、キツイ言い方をしてしまったことになるのだろうけど、わたしはもう何度も伝えているんだ。わたしはあなたの知りあいではありません。人ちがいですって)
言い分を主張し終えたわたしは、自分のとなりにいるオキツネサマ、そして、彼の横でぷかぷか浮かんでいる、青い炎のリンちゃんに視線を移した。
オキツネサマはさきほどまでと変わらず、おだやかな雰囲気。
(もしかして、わたしの力説、……聞いてなかった?)
一方のリンちゃんは、あせったようにクルクルクルッと、オキツネサマのまわりを飛びまわる。
リンちゃんがカン高い声で言った。
『どうやら本格的にオキツネサマやおれっちのこと忘れてるようだけど……そうだ! オキツネサマのキツネ姿をみせれば、すぐに思いだせるかも……』
「リン、その作戦はすでに試みた。サキのかたくなな態度は変わらなかった」
『ええっ! そんなぁ、人型をみても獣型をみても思い出さないなんて。あっ、でもでも……オキツネサマ、ひょっとして、あれはまだなんじゃ』
リンちゃんはオキツネサマの耳元に近づき、(人間のわたしがリンちゃんに近づかれても熱くないんだから、オキツネサマも耳元にリンちゃんがきてもきっと熱くないんだろう)ゴニョゴニョと耳打ちする。
「しかし……それは――」
『その反応、やっぱりまだ、みせてないってことっすか? オキツネサマ』
「……うむ」
2人とも何相談しあってるの?
チラリと、『人型』『獣型』って言葉なら聞こえてきたけど。
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